99 鍋敷きとの めくるめくロマンス
勇者「なー、魔王ちゃーん。ダンジョンの宝箱にヌード写真集入れるのやめろよー。あれ見るとウチの若いのがギンギンになっちゃって仕事しねーんだわ」
魔王「フッ。産めよ、増えよ、地に満ちよ、というヤツだな」
勇者「だーかーらぁ」
魔王「…フン、勇者よ。我が何の考えもなしに宝箱にあのようなものを入れると思ったのか?」
勇者「…ん? てぇと?」
魔王「勇者の仲間などギンギンになって仕事をしなくなれば良い!」キリッ!
勇者「だからさー。困るのよ、あーいうの。俺のパーティーにはね、未成年の子もいるわけ。それがさー、あんなアラレもないカッコのお姉ちゃん見てどうなると思ってんのよ」
魔王「…どうなるのだ?」
勇者「とにかくねー、困るから。来週までに回収してよ。ったくよー、これだから魔物ってのは困るよ」立ち去る
魔王「見ると…? どうなるんだろう…??」
翌週
勇者「なーなー、魔王さんよー、ああいうのは困るよ。なんで宝箱に週刊少年漫画誌入れるわけ? ウチの幼いのが読んじゃってダンジョン探索進まないんだけど」
魔王「…フッ」
勇者「だーかーらぁ」
魔王「よいではないか、勇者よ。世の中平和がイチバンだ」
勇者「平和…か」
魔王「うむ。堕落し、歪みきった人間どもが、弱者から搾り取れるだけ搾り取り、富める者はますます富み、餓える者はますます痩せ細る。利益をむさぼり、他者を蹂躙し、すべてがつつがなく過ぎ行く。これを平和という」
勇者「ゴクリ」
魔王「なんてなー?」ニコッ
勇者「…、な、なんて、な?」ひきつり笑い
魔王「とにかく平和がイチバンだよ。人間どもなど、堕ちゆくところまで堕ち切ればいいと思うよ?」
勇者「この人、真顔で何言っちゃってんのォーーーッ!!?」
勇者「とにかく、宝箱の中身は普通にお金とか宝石とか、便利アイテムの類にしてよ。ねっ?」
翌週。ダンジョンの中心で勇者は絶望を叫んだ。
勇者「魔王ォオオオオオ!! 俺はお前をゼッタイに許さないッ」
盗賊「おっ。また孫の手だよ。背中を掻ける便利グッズな」
僧侶「わぁ~♪ 反対側にゴルフボールがついてますよ! かーわいーいっ! これさえあれば、自分でお手軽に肩も叩けますね! 勇者さんのお母さんとか喜ぶんじゃないですか?」
勇者「…マゴノテ。市指定可燃ゴミの袋。ティッシュ箱。トイレットペーパー。歯ブラシ。爪楊枝。ラフな感じでふわっと髪をまとめるムース。口臭ケアのうがい薬。割りばし。紙コップーーこれが」
オレたちが今週、ダンジョンの宝箱から入手したアイテムの全てだったーー
勇者「…、も、もう、宝箱を見ても1cmもときめかない。ーー魔王。ギリギリギリ。俺のトキメキを返せ…!」
僧侶「あっ! 勇者さん! 新アイテム! 鍋敷きですよー♪」
〔(今回のお話が)終。〕
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