87 気楽にいこう!
勇者「魔王は、あれなの、やっぱ?
俺が気になるから魔王になっちゃった感じ?」
魔王「は? なにいってんの。自意識過剰じゃね? 俺にだって悲しみとか絶望とか、色々あんのよ」
勇者「あー、あるある。コンビニ行ったら、乳酸菌飲料ひとつも売ってなかったとかな」
魔王「おのれ、人間ども……! よくも、私の乳酸菌飲料を……ッ!!」
勇者「その日、天が落ちた。山は火を噴き、大地は鳴動し、そのひとは魔王となったのだーー」
魔王「ーーなんてな」ニコッ
勇者「なんてなー?」ニコッ
魔王「お前こそどうなのよ。やっぱ、俺が気になるから勇者になっちゃった感じ?」わくわく
勇者「ないわー」
魔王「ないのか」がっくり
勇者「うん。ないね。それだけは、ない。ない ない ない ない」
魔王「……何も、そんなに 無い無い言わなくてもいいだろ。」しょぼーん
勇者「……あっ、ごめん。魔王でもさすがに傷付くよな」
魔王「……まあね。俺もね。勇者にとっては、唯一無二の存在でありたいと思うわけ」
勇者「むにゃむにゃむにゃ かー」
魔王「言えてねえよ。お前のボキャブラリー(語彙)どうなってんの? パラジクロルベンゼンとか入ってる? アデノシン三燐酸は? 北大西洋条約機構とか言える? あれ、テストに出るよー。覚えても年収上がんないけどね」
勇者「……別に。テストなんかどうでもいいし。俺、魔王が倒せりゃ、人生それでいいかなって」
魔王「やめろよそういうの。俺も重いわー。もうちょっと肩の力抜いてさ、ラクに考えたほうがいいよ」
勇者「……え。どんな感じ?」
魔王「たとえば、そうだなー。そろそろパソコン買い替えようかなー、あっ、そうだ、魔王も倒さなきゃ みたいな」
魔王「電球切れたなー。ホームセンター行こ、あ、そうだ魔王 みたいな」
魔王「そういや最近なんか忘れてると思ったら魔王だよ。魔王放置してた、みたいな。俺は人間どもにとって、そうゆう、ま、ある意味、気楽なね。あんまり重要じゃないけど、ちょっと気になる、そういうフランクな存在でいたいわけ」
勇者「……お前。」
魔王「なっ? 気楽にいこうぜ。俺もさ、世界征服楽しんでっから。できるだけ長く楽しみたいと思ってるし」
勇者「……そっか。魔王……」
魔王「ん? 何だよ」
勇者「シネェエエエエエ!!!」
魔王「やだ、通り魔……! コイツやべえ! ひとン家で刃物振り回してるッ!! 衛兵、衛兵ーーっ!!」
魔王「やめて! その子の命だけは! 何でもするから! 冷蔵庫の牛乳もダメ!! 賞味期限切れてるの! まだ風呂掃除してない! 洗濯も途中だし! 俺はこんなところでやられるわけにはいかんのだ!!」
勇者「」ぶんぶん
【感想にて、戦いの結果はどうなったのか?とご質問をいただきましたので、解答】
そして、戦いの結末。
部下A「勇者さーん。魔王さま~、お茶が入りましたよー。ドーナツもありますよ!」
勇者「マジか! ドーナツが! ーーフン。魔王、命拾いしたな…。せいぜいドーナツに感謝するがいい」
魔王「…フッ。お互い、茶菓子には頭が上がらんようだな。ーーだが、悪くあるまい」
勇者「ーーったく。お前は格好つけすぎ。素直にドーナツ食いたいって言えよ」
魔王「!? バ、バカを言えッ!! 魔王が、そのような はしたないこと、おいそれと口にできるものかっ!」
勇者「もぐもぐ。うまうま。おっ、抹茶味もーらいっ♪」←聞いていない
魔王「…ドーナツ。食いたい」
勇者「ざーんねん。もう全部食べちゃった。てへ」
魔王「ぬぅおぉああああ!!!」
部下A「魔王様がリミッターを外して第三形態に…ッ!?」
側近「ドーナツごときで…。自制心のない方ですね。やはりあなたは王にふさわしくない」
勇者「う、嘘だよ魔王! ほら、ひとつ残ってるよ! はい、あ~んっ!」
魔王「!!!」
第三形態となった魔王の口にドーナツが放り込まれるッ!
そしてドーナツはーー
魔王「もぐもぐ、ごっくん」
魔王の胃袋へと収まったのだったーー
(めでたし、めでたし)
Thanks for Reading !
今回の台詞の一部は
http://koebu.com/smph/topic/1475420f63a
にて、音声でお聴き頂くことができます~(^^)
あと、こちらも。
http://koebu.com/smph/topic/15876401bd5
えへー(*´ω`*) お楽しみ下さいませ!
(こえ部の皆様、ありがとうございました!!)




