84 魔王様は通信中!
①魔王様は通信中!
魔王「通信中です……m(_ _)m」
勇者「まーたお前はいつもそれだ! 通信中って言やいいと思って! 通信中通信中ってな、お前、いつ見ても通信中じゃねえか! いつになったら通信終わんだよ!? 通信中じゃないのはいつなの!? 答えろ!!」
魔王「通信中です……m(_ _)m」
勇者「何とそんなに通信してんの! いつ終わんの!!」
魔王「通信中です……m(_ _)m」
勇者「…、ったく。だーめだありゃ。また通信中だよ。魔王のやつ、つながりゃしない」
部下A「魔王ともなると、海外との連絡とか、偉い人との電話とか、色々あるんじゃないんでしょうか?」
側近「大宇宙です」
勇者・部下A「「はっ?」」
側近「魔界の未来を憂えた魔王様は、大宇宙と交信なさっているのです」
勇者「ま、マジかよ……」ゴクリ
部下A「あっ!! 僕、聞いたことありますよ! 魔王様が大宇宙に祈りを捧げているところ! あんぎゃーほんぎゃーって髪を振り乱して叫びながら!」
勇者「な、なんだよ…。それで今、通信中だったのかよ…。俺、焦って叫んだりして悪いことしちまった」
側近「仕方ありませんよ。大宇宙ともなれば、その距離、深遠にして遠大。常時、通信中状態になっても不思議はありません」
部下A「魔王様……」
側近「我々に出来るのは、見守ることだけ……。そっとしておいて差し上げましょう」
勇者「ああ! そうだな! 魔王、通信ガンバレよ! 怒鳴ったりして悪かった!」
魔王「ピー……、ガガガガ。充電、シテクダサイ 充電 シテクダサイ ピー……」
翌朝、魔王のいた場所には、電池の切れた携帯電話がただ、転がっていた。
大宇宙との交信はうまくいったのか、それとも、失敗に終わったのか……、我々には知り得ない。
ただ、ひとつ確かなことがある。きっと魔王は今も、どこかでーー
魔王「通信中です……m(_ _)m」
通信中、なのだ。もし見かけたら、暖かく見守ってやってほしい。
②俺の家にホラーな贈り物が届いたんだけど
勇者「魔王。今朝、俺の実家に、箱に入ったバラバラ死体がとどいたんだけど」
魔王「ああ、それ、たぶん俺だよ」
勇者「…、さすが魔王だな。卑劣極まりない精神攻撃だ。いつでも俺の四肢をもげるという、強固な意思表示なわけだな」
魔王「…いや、年末だし、それはいつも世話になってるお前の御母堂に…」
勇者「なんだと! 家族を狙ったのかッ!! ーーくそ、魔王めーー」
部下A「勇者さん、どうしたんですか?」
側近「先日、魔王様に、勇者の実家にお歳暮を贈るようにといいつかって、カタログギフトを見ながら手配しておいたのですが…、おかしいですね。そんなものを送り付けた覚えはありませんよ」
部下A「側近様…」ホロリ
側近「…なっ、なんですか!! わたくしだって、人間どもがどういうものを贈れば喜ぶのか知らぬわけではありません。ーーもやしばかり愛でていると思わないでほしいものですね」
部下A「…、もやしばやかり愛でてますよね?」
側近「…、愛でていますね」
勇者「しかもコレ、脚だけだしー。本体どこ行っちゃったの、魔王?」
魔王「ええい、側近め!ーーこんなはずでは! 一体、何を贈ったというのだ…
!!」
備考:
冬ギフトお申し込み用紙
ご依頼主:魔王
お届け先様:アイツの家
ご注文内容:本タラバガニハーフカット化粧箱入り
本体価格:12000ゴールド
商品説明:ボリューム満点! 食べ応え十分なタラバガニの脚が4本入り。化粧箱(ちょっと洒落た木の箱)に入れてお届けするので冬のギフトに最適です。
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