79 僕らのハロウィーン
■『僕らのハロウィン』
勇者「ハロウィンといえば…」
魔王「まさかり だな」
勇者「だな」うんうん
勇者「藁をかぶって、怖いお面つけてー」
魔王「わるい子はいねがー、泣く子はいねがー」
勇者「まさかりからは、ぽたぽたと血がしたたり落ちる」
魔王「僕らの最終決戦。わるい子を、泣く子を救うために、ぼくらはカボチャのランタンを用意してナマハゲと戦うーー」
勇者「わるい子だって、泣く子だって生きている。皆違って、みんな良い。」
魔王「ナマハゲの主張はしかし、こうである。わるい子や泣く子は、親の負担が大きいのだ、とーー」
勇者「話し合いは深夜に及び、参加者には甘酒が振る舞われた」
魔王「しんしんと降り積もる雪。真っ暗な空からは、白いかけらが舞い落ちてくる」
勇者「ナマハゲと僕らは激論を戦わせた」
魔王「僕らとナマハゲは、互いに立場こそちがえど、よりよい世界を望んでいたのだーー」
勇者「明け方になり、ナマハゲたちは帰ってゆく。べろんべろんになって」
魔王「僕らもまた解散し、互いに出した妥協点ーー『ぶっちゃけどうでもよくね?』に満足し、泥のような眠りについたのだった」
勇者「毎年、ハロウィンには、やつらがやってくる」
魔王「泣く子はいねがー、わるい子はいねがー!!」
勇者「僕らはあの甘酒の味や、温かい灯火、かまくらの中の暖かさを思うーー」
魔王「今年も、ハロウィンがやってくる」
勇者「やってくる」
勇者・魔王「「そしてツッコミ待ち休憩中」」
■『ホットケーキに関するいくつかの事実』
勇者「…なぁ、魔王。ホットケーキ作ろうと思ったことある?」
魔王「…ああ。あるよ。何度も作ろうとした…。だが、ダメだった。…俺は、魔王だからな」
勇者「…なんだよ。あきらめるなんて、らしくないだろ。俺さ…、この間、死にそうになったけど…、つくづく後悔したよ。ああ、俺はなんでホットケーキを作っておかなかったんだ。もっと早くホットケーキを作っておけば、俺の人生は、違っていたかもしれない。ホットケーキを作っておかなかったばかりに、俺は、こんなところで死ぬんだ…って」
魔王「勇者よ…」
勇者「…だからさ。諦めることねぇって! お前なら、きっとできるよ、…ホットケーキ」
魔王「…できない」
勇者「できるって! 俺も手伝うし! かき混ぜるのくらい手伝うし!」
魔王「…、魔王に、ホットケーキが作れるなど…、ありえるはずが」
勇者「いいんだって! これからの時代は、魔王もホットケーキ作っていいと思う! …なぁ。一緒に、変えていこうぜ、世界を…」
魔王「勇者…」
勇者「さしずめ、ホットケーキミックス買ってきたから」
魔王「おお…、人間界には、このようなものが」
勇者「…一緒に、ホットケーキを、作ろう」
◇
でろーん。ホカホカ
勇者「不味ッ!! なにこれ」
魔王「貴様の言うとおりに、生地にプツプツと穴が開くまで焼いたホットケーキだ!」
勇者「…うっわ。ゴムみてぇ。硫黄とか入ってそ~ 不味。まず。まっず!!!」
魔王「…もういい」プイ
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■ホットケーキに関しては、音声でお聴きいただけますよん。(こえ部の皆様、ありがとうございました!!)↓
http://koebu.com/smph/topic/1490824c36a
「ホットケーキを焼くと人生が変わります?」
※ 海外からは『こえ部』さんにアクセスできないようです。すみません。m(_ _)m
■なまはげが手にしているのは「まさかり」ではなく「出刃包丁」です。ご指摘ありがとうございました! でも、語感的になんかまさかり気分だったのですにょーおおお!m(_ _)m




