76 アンモナイトとサンデースペシャル
勇者「何も考えてない奴っているよね」
魔王「? 例えば?」
勇者「あー、なんかコイツと喋ってるとテレビと喋ってるみたいだなー、とか、ネットの知識そのまま喋ってんだなー、みたいなヤツ」
魔王「まー、それはある程度、仕方ないんじゃね? 俺ら人間だからさ。いつも見たり聞いたりしてるモノの影響受けちゃうのはさ」
勇者「中には度を外れたヤツいるだろ! テメエと喋るくらいなら2ちゃんねる読んでた方がマシだ! みたいなヤツ」
魔王「えー? いるかな」
勇者「いるんだよ! さもそれを、自分が発見したみたくエラそーに垂れ流す奴! なんなのアイツ!? ねえ、何なの!!?」
魔王「……何、それは。お前の身近な誰かを指してたりすんの?」
勇者「お前だよお前!! 俺はね、お前が昨日テレビで何見たかなんてどうでもいいんだよ! バカじゃねえの! むしろ黙れ! 貝のように! アンモナイトのように! 背中で語れ!!」
魔王「……アンモナイトってあれ、背中なのかな?」
勇者「……背中でよくね? なんか背骨っぽいしさ、あのグルグル巻き」
◇
勇者「とにかくね、俺はね、ネットやテレビの情報をそのまま飲み込んで垂れ流すような空洞の人間にはなりたくない、と思うわけで」
魔王「わけで」
勇者「わけで」
魔王「何だよお前。なに真似してんの。ケンカ売ってるわけそれ」
勇者「うん。なんか、誰かの真似すると、ケンカ売ってるみたいに見えるのは、なんでだろーね?」
魔王「知らんよ、そんなん。アレじゃね? 変な行動が異性を引きつけるっていう、類人猿特有の感性に基づいてるんじゃね?」
勇者「あー。モテるのは俺だ! 活版印刷機を発明したのも、ウィンドウズを開発したのも、聖書を書いたのも俺だ! みたいな?」
魔王「そうそう。たぶん、そんなだよ。どうでもいいし」
勇者「……、そうだね、どうでもいいね」
◇
部下A「魔王様ー、勇者さーん。サンデースペシャルができましたよー! 見てくださいこのパラソル! 僕の手作りなんですよー!」
魔王「……凝りすぎじゃね? どうせコイツが食うのに、勿体ない」
勇者「ムカ。もったいなくない! ちゃんと食うし!」
魔王「……パラソルを?」
部下A「ポッキーと着色したお砂糖で作りましたから、ちゃんと食べられますよ」
勇者「へっへーん! 見ろ魔王! 俺の勝ちだ! パラソルは食える! 食えるのだよ! ーーそんなコトも知らないとは、魔王失格だな! フハハハハ!!!」
魔王「……んだよ。サンデースペシャルなんてただのクリームだろ。それに手間かけた飾りなんて付けちゃってさー、部下A。お前そんな暇あるの? ちゃんと、人間どもを殺戮してんの? 俺としてもさ、働かないヤツを部下にしてたくないワケ。左遷するよ。イタリアのシャンパーニュ地方の葡萄畑とかに」
部下A「ぼ、僕、そんなつもりじゃ……」
勇者「おい、魔王……」
魔王「……ゴメン。生理前って、なんかイライラしちゃって。火山とか噴火させたくなんない?」
勇者「……いや、俺の体脂肪率5%切ってて、生理止まってるから。」
魔王「」ドゲザ
部下A「」ドゲザ
勇者「……え。なに。どうしたのお前ら。俺に何かしたの?」
魔王「人間界に侵攻してゴメンナサイ! まさか勇者の家族計画がそんなことになるなんて!」
部下A「毎日人間どもを呪っててゴメンナサイ。もう冒険者たちに石を投げたりしません」
勇者「……え。いやいや、気にすんなって。まあ、その辺は、な? お互い様っつーか、歴史とかさ、争いとか、まぁ、ね? ある程度しかたのないことってあるんじゃないかな」
部下A「勇者さぁああんん!!」号泣
魔王「勇者よ……、貴様……」
魔王「俺様の分のサンデースペシャルまで食うんじゃないっ!?」
勇者「もぐもぐ。失われた体脂肪を取り戻すのだ、勇者よ」
※魔王に生理はありません。
※体脂肪率5%未満でどうやって巨乳を維持しているのかに関しては、七不思議ということで、ひとつ宜しくお願いします。
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