75 ムーディーな魔王城
【R-15】
今回のおはなしには、あだるてぃーな単語が含まれます。15歳未満の方は、前の話に戻るか、次のお話に進むかして下さいませ。m(_ _)m
『ムーディーな魔王城』
勇者「よっ! 魔王。来たよ」
魔王「(黒マント、バサァ!!) フン、よく来たな勇者よ……。今こそ、我らの雌雄を決する時だーー違うか?」
勇者「うん。それよりさ、俺さ、さっきから気になっちゃって……。このラブホテルみたいな内装、何なの?」
魔王「……、大魔王様からの通達でな。これからは、我ら魔族も、少子化対策をせねばならんというのだ」
勇者「……んで、なんで魔王城を、外観も内装もラブホテルみたくしちゃうの? 困るんだよね、そういうの。分かってる?」
勇者「魔王城って、魔族だけのものじゃないんだよ。攻め込む俺ら人間にとっても、敵の象徴なワケ。それをさー、なに。あのネオン。派手すぎない? DVDプレイヤーとかドライヤーとかあっても、正直、俺としては困るわけ」
魔王「それは……他に良い立地がなくて……」
勇者「言い訳とかいいんだよ。謝れよ、俺に!!」
魔王「……は? なんで。俺、魔王だよ? 勇者に頭下げるとか、ありえないんたけど」
勇者「出るトコ出たっていいんだぜ? 俺の期待を裏切った罪で慰謝料請求すっぞコラァ」
魔王「それはーーあれだ、お前。大魔王様に言えよ」
勇者「大魔王とかどうでもいいの! 俺はね、お前に謝ってほしいわけ。わかる? 勇者様すみませんでしたって、言ってほしいわけよ」
魔王「えー? それはちょっと……、なあ。絵面的に。このムーディーなダブルベッドと、ピカピカ光るハートマークと、2つ並んだマクラの前で、お前に謝罪すんの?」
勇者「そうだ」ベッドの上で腕組みして仁王立ち
魔王「……すみませんでした」ドゲザァ!
☆
勇者「あれだよ。お前ね、『おはようございます』『ありがとう』『ごめんなさい』はね、人としての基本だよ。逆に、これさえできてりゃ、アデリーペンギンの群れにパンツ一丁で放り出しても生還できるね、確実に」
魔王「マジで? 挨拶スゲーな」
勇者「外交官とかは、謝らないらしいけどね」
勇者「Yesって言ったら『前向きに検討します』の意味なんだって」
魔王「……やっぱ、魔族のトップたる俺も、お前に謝ったら、マズかったんじゃね?」
勇者「ーーノーカンじゃね? ラブホテルの個室での出来事だしさ」
魔王「ああ……、そっか。じゃあ、いいな」
勇者「……むずむず」
魔王「?」
勇者「……なぁ、このテレビって」
魔王「バカッ!? 触るなッ!! エロいものが流れるぞッ」
勇者「ひゅーう、やっべえ、スイッチ入れるところだった。危機一髪だよ」
魔王「……やっぱなあ。少子化対策ってのは、ラブホテルの建設とかエロDVDの量産とかじゃなくてさ、保育園を作るとか、出産に補助金を出すとか、そういうことではないかと、俺は思うんだが……」
勇者「ったく。これだから大人は。金金。何かあると、すーぐ金だ。何でも金で解決できると思ってるのかよ?」
魔王「? うん」
勇者「かーっ! わかってねえな! ベビーを量産するつったら、工場の建設だろ! ラインの整備が第一だろ?」
魔王「え……、え?」
勇者「俺、理科の時間に知ったワケ。あのね、卵子と精子をくっつけるとね」
魔王「なんかきわどくなってきた」
勇者「だからさー、試験管とフラスコ用意してさ、卵子と精子を、提供してもらうわけ」
魔王「精子はともかく、卵子は採取するの大変だぞ?」
勇者「なんだテメエ。卵子取り出したことあんのか?」
魔王「いや……、ないが」
勇者「じゃあ、グダグダ言うんしゃねえ。卵子を人工受精に提供することで現金を得ている女性も現実にいるんだぞ」
魔王「……ヨーロッパ辺りではな」
勇者「でね、コレを羊の子宮に注入するワケよ」
魔王「動物愛護団体に怒られそうだが」
勇者「そうやって人間を量産すればいんじゃね?」
魔王「教育とかどーすんの?」
勇者「そりゃお前。シルバー人材派遣の出番だよ。定年過ぎても働きたい人はけっこうまあまあ、いるワケよ」
魔王「なんか……、切ないな。自分が工場で量産されたと知ったら、その子はどうなってしまうのだ」
勇者「みんなで量産すれば怖くないよ。ヒトと違うから不安になるだけだよ。ーー俺、王様に企画書出してくるわ」
魔王「しかし、異種の動物の子宮で、胚って、育つの?」
勇者「中国四千年の伝統を駆使して頑張ってみるよ」
魔王「(何だかなぁ)」
勇者「ボーナス、ボーナス~♪」
魔王「(結局、金なのか??)」
Thank you for Reading !
R-15表示は、無くて大丈夫だと思ったんですが……、どうですかね??
【追記↓】
前書きのところに、ちょこっと注意がきを追加いたしました。ご指摘、ありがとうございました!(全体としてのタグはつけておりませんが)




