70 和歌と魔王と
■今回の冒頭は、こちらでお聴きいただけます。↓↓
http://koebu.com/smph/topic/1483975583f
もし見つからない場合、http://koebu.com/ にて、『【和歌】勇者&魔王』で、検索してみてください。…、出てくるかな? 日にちが経つと、検索しても出てこなくなるみたいなので…。■
魔王「雨そそぐ 花たちばなに 風すぎて 山ホトトギス 雲になくなり…か」
勇者「五月雨ってのは旧暦五月の頃の雨、つまり梅雨だな」
魔王「和歌では、五月雨と時鳥ってのは、まあ、梅とウグイスみたいな関係みたいだな」
勇者「魔王と俺みたいだな!」
魔王「この世に最後に残されたプリンを巡って、血で血を洗うバトルを繰り広げるわけだな」
勇者「梅とウグイスが! さみだれとホトトギスが! 生八つ橋(京都のお土産)と白い恋人たち(北海道土産)が! 格ゲーになった!」
魔王「ウグイスが中パンチとか弱キックとか繰り出すわけか」
勇者「通常攻撃キャンセルからの、超必殺技で、生八つ橋を仕留める」
魔王「生八つ橋のやつも苦労してたんだなぁ」
勇者「そりゃそうだよ。楽な仕事なんかないって。大伴家持(おおとも の やかもち)だってね、死ぬ気で和歌読んでたハズだよ?」
魔王「マジで? 家持のやつ、歌人になるつってたけど、あれブラフ(はったり)じゃなかったんだな。本気だったんだ…?」
勇者「それは、アレなの。息子がある日『俺、将来はボカロPになる』って言い出すのと、どっちがガッカリなかんじ?」
魔王「ニンジンとかタマネギとか生み出すわけじゃないしね。第三次産業のサービス業ですらないよね。無職ってのと大して変わらないよね」
勇者「芸術ナメてんのか魔王め」
魔王「あの女ちょーマブくね? みたいな下世話な話を、紙に書き残す詩人の気持ちなんてわからんよ」
勇者「魔王が万葉集に喧嘩売ってる」
魔王「まあ、魔王だしな。ギャラもらってっから」
勇者「家持のやつはキャリア官僚だけどね」
魔王「キャリアか…」
※ 雨そそぐ~『新古今集』藤原俊成
http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/saijiki/ametohoto.html
◇
勇者「ところでさ、今日、魔王の玉座にくるとき気づいたんだけど、魔王城オートロックにしたの?」
魔王「あ? そうなの? 俺、基本的に玉座で待機だから知らなかったな。誰か、いつの間にか付けたんだな」
勇者「自分ちの玄関どうなってるか知らないとかwwwwww」
魔王「なんだよー。いいだろが別に。それにあれだよ? お前が来るたびにさー、報告書が上がってくんのよ。守衛の警備員さんが不審な死に方してるって。なんか、ほんとタイミングがどんぴしゃだからさー。俺もつい、お前のこと疑いたくなっちゃって」
勇者「あー、そっかー。そりゃ怖いな。不審者ってやつだね。物騒な世の中だなー」
魔王「まあね。だから多分、側近とかが手配したんだろね」
勇者「あれ? 側近……」
側近「魔王様っ!! 我が城に導入した、最新型魔導オートロックが破壊されました! 何者かが侵入している恐れがあります!!」
魔王「今……」
勇者「『我が』城って言ったな」
魔王「なんか側近が言うと、『our(我々の)』じゃなくて『my(私の)』城に聞こえんだよな」
勇者「あー、なんかそれ俺も思った」
側近「……はっ! 勇者っ!!」
勇者「あ。俺、犯人じゃないよ。窓から入ったし」
側近「……フン。口では何とでも言えますよ。あなたが背負っているその剣は何です? 警備員さん256人の死因である斬り傷と一致するのではないですか? オートロックも、鋭利な刃物で斬りつけた痕がありましたよ……。犯人はあなたですね、勇者」
勇者「」
魔王「……えっ。おい、まさか勇者」
勇者「……ゴメン。今月のノルマ足りなくてさ。正直、誰でも良かった」
側近「……これだから人間は」
魔王「信じられん……。まさか勇者が」
部下A「人間どもの王国を蹂躙してる魔王様が言っても説得力ないですけどね」
魔王「それはそれ。これはこれ」
勇者「仕事とオフタイムは、やっぱ違うよね。仕事ならいけ好かないやつにも媚び売れるけど、休みの時までそれしたくないっつーか」
魔王「そうそう。そんな感じ。食い扶持は大事だけど、そればっかりも味気ないなって」
Thanks for Reading !




