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「ども、魔王です」「こんにちは、勇者です」  作者: 魔王@酒場
魔王様は玉座にて待つ。宅配便とかを。
68/162

68 俺らしく

 蒼天の元で、そのひとは、叫んだ。


「俺は勇者なんかじゃない! 勇者なんかじゃないんだぁッ!!」


 果てしない草原の草たちを震わせ、風は駆け抜けていった。


   ◇


勇者「……勇者です。最近ね、自作自演じゃないかっていわれたの……。もう勇者やめたい」


魔王「気にすんな、そんなもん。そういうのはさ、お前の人気ひがんでるんだよ」


勇者「そうかなー? まあね。批判も来るっていうのは、たくさんの人に見られてるってことではあるんだけど……」


魔王「そうだよ。勇者はさ、勇者らしくしてれば、それで良いと思うよ」


勇者「俺らしく……か。俺らしさって、何?」


魔王「勇者らしさ、か。そうだなー。口に握り拳が入るとか?」


勇者「グー! 見ろよ魔王ー! すごいだろ!? すごいだろっ!?」


魔王「あー、うん。見てるよ。見てるけどね」


魔王「他には……、そうだな。毎日、一日一善を心掛けているとか?」


勇者「……あのさ、魔王。俺が善意だと思ってやらかしたことが、誰かにとっては、親切どころか、メーワクだったりするわけ。……あるだろ? そういうの」


魔王「まあ、うん。あるけどね。あとは、そーだなー。世界を救うとか」


勇者「……やっぱそれ、俺らしいの? 何か、キャラ違うかなって思ってたんだけど」


魔王「えー? いや、そんなことないって。世界を救ってさ、居間でテレビでも見てるのがお前らしいよ」


勇者「そっかー、テレビかー」


魔王「色々、楽しい番組もやってるしさ」


勇者「そうだね。居間でテレビ見てから、世界救ってくるよ。具体的には、何したらいいかな?」


魔王「んー。俺の知り合いが、宇宙コロニーを落とすとか落とさないとか言ってんだけど」


勇者「おお。それいいな。俺も試してみるよ」


魔王「でもなー。宇宙コロニーだぜ? ちょっと大変すぎない? いくら勇者でもさー」


勇者「大丈夫だって! 何とかするよ。俺はね、こんなところで立ち止まってる人間じゃないんだ。横断歩道の真ん中とかね」


   ◇


その日。大気圏は、真っ赤に燃えていた。


ニュース・キャスター『ーーに落下した物体は、宇宙コロニーだと思われ、現在、確認作業が急がれています。以上、現場からお伝え致しました』


魔王「あー。やっちゃったか」


勇者「ただいま! 俺、テレビに出てた!? 超ガンバったんだよ!」


魔王「何したの?」


勇者「コロニーの制御装置を切ってね、ちょっと、地球の方に押してみたんだけど」


魔王「おー」


勇者「俺っぽかった?」


そう尋ねる勇者の顔は、正義をやりとげた充実感に、キラキラと輝いていた。


魔王「あー……、うん。まあね」


魔王は、ただ頷き、勇者はやっぱり阿呆だったのだと、その感慨を噛み締めていた。


あれだけ巨大な物体が、燃え尽きずに地表に衝突したのだ。

ただでは済むまい。

衝突に伴う津波。

大量に舞いあげられた塵は、陽光を遮り、気候変動を引き起こすだろう。

果たして、人類はこの試練を生き残ることができるのかーー


辛い時代の、始まりであった。

Thank you for Reading !!


【お知らせ~】


 いつも『冷やし勇者始めました。』をお読みいただき、ありがとうございます。<m(_ _)m>

 さて、すでにご存知の方もいらっしゃると思いますが、この度、ちょいと新しい試みを始めまして…。


 この作品の『目次ページの下部』に、『ちょっとスペシャルなリンク』が追加されています。お時間のある時にでもご覧、否、お聴き下さいませッ! ぜひ。是非是非ッ さあさあ!! もやしに狂うマッドな側近、巨乳を前に、「キョーミないし。」と言い放つ魔王! その魔王を説教する勇者!! ーー実にスペシャルです。


 今のところ、一週間に一度くらい、ちょびっとずつ台詞(冷やし勇者のだったり、あるいはそうでなかったり)が増えていますので、もしお気に召されましたらば、時々のぞいてみて下さいませ~


【ーー以上ッ お知らせでした~♪】

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