67 外キャップを回して外す
勇者「……いいか、魔王。まず、外キャップを回して外すんだ……」
魔王「えっ!! ちょっと、俺、魔王なんだけど! なに。外キャップを回したりしていいわけ!? 世界が滅びない!? 俺、かなり怖いよ……」
勇者「大丈夫だ魔王。俺がついてる。あせるなよ、ゆっくりと、確実にな」
魔王「よ、よし。任せろ。何せ、魔王だからな。外キャップを回すくらい、わけはないぞ」ドキドキ
勇者「……いいから早くしろ!」
魔王「あっ!! も~。お前が急かすから、せっかくした心の準備が台無しじゃん!? 何コレ、責任とってくれんの!? 責任とれんのコレ!? ねぇ!?」
勇者「わ、わかったよ、俺が悪かった……、魔王を急かす気はなかった。ただちょっと……じれったくてな」
魔王「もー。困った奴だなー。『これだから勇者は』とか言われちゃうよ? もうね~、ネットとか、口コミとかコワいんだから。動画撮影とか簡単にできるしね、どこで誰が見てるか分かんないんだから。ほんとにね~、怖いんだよ、世間って」
勇者「……そうか。まあ、勇者だしな。パブリック・イメージは大切にするべきだよな」
魔王「そうだよ! Twitterとかね~、怖いんだよ。ウワサとかね~、あっという間だから! 何コレ、どうしたの!? って思う間だよ。この間さ、魔王城の宝物庫で撮った画像を投稿したらね、俺のTwitter炎上しちゃってね」
勇者「……。」イライラ
魔王「『従業員が宝物庫に入って写真を撮るだなんてけしからん!』だよ。もうね~、コワいんだ、ホント」
勇者「……魔王。外キャップを回して外すんだ……」
魔王「あっ!! そうそう! そうだよね、忘れてた。最近、物忘れ激しいんだな~。何千年も生きてるとしょうがないよね、やっぱ、人間だしさ」
勇者「……人間じゃねえだろお前。」
魔王「あはは。勇者は細かいな~。いいよ、ほら、もうちょっとで邪神様も来そうだしさ。このソースのフタを開けるんだったよね」
勇者「そうだよ! 早くしろよ! トンカツ食いてぇんだよ!!」
魔王「いやしかし、勇者もさ、物好きだよね。魔王がフタを回して開けたソースをかけたトンカツが食べたいだなんて。そのためにわざわざ、魔王城までやってくるんだからな~。面白いな~、勇者は」
勇者「いいから早くしろつってんの!」
魔王「あっ! レンジにお鍋かけたままだった! ちょっと待ってて」
勇者「……ッ」
◇
勇者「『外キャップを回して外し、中栓のリングを静かに手前に引き開栓する。開栓後、外キャップをしっかりねじ込み上ブタを開けてご使用ください』……か。これだけのことがままならないなんて……」
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