66 もやしと、プラモと、ボーカロイドと。
魔王城、入口ーー
漆黒の動く鎧(部下S)「魔王討伐の方ですね。ご一緒にポテトはいかがですか?」ニコッ
冒険者1「(ポッ)じ、じゃあそれで……」
鎧「今なら、こちらの生命保険にも加入できますが?」
冒険者2「あ。お願いします」
鎧「さらに今なら、木刀と、側近様のサイン入りグッズが、お安くなっております」
冒険者3「側近て?」
鎧「Fカップの美女です(嘘)」
冒険者4「おい、押すなよ。俺が先だ。割り込んでんじゃねえよ」
冒険者5「……あっ、すみません。」
◇
魔王城の大広間『みっちり。』冒険者の群れ
魔王「なに、なんなのコレ!? どーすんの側近。俺、一度にこんなに相手できねーよ!!」
側近「今月は、魔王様からのレア・ドロップが250%アップしてあると、各地の冒険者組合に触れ込みました。予想以上の効果があったようですね」
側近「ま、第3形態くらいでイケるんじゃありませんか? 頑張って下さい」
魔王「俺が過労死しちゃう! やめてあげて!」
側近「……もやしの大規模な宇宙工場を建造したので、今月は赤字なのですよ」
魔王「ヒデェ! そんなのお前の趣味じゃん!! なんで俺が尻拭いすんの!?」
側近「あなた様だって、プラモたくさん買っちゃって。アキハバラ? でしたっけ? 一部の人間どもか密集する聖地とやらは。資金は、リターンのあるものをこそ買うべきなのです。」
側近「土地しかり、設備投資しかり。それを、なんですかあなたは。プラスチックのゴミなどに無駄金を使って……」眉をひそめる
魔王「お前にだけは言われたくないよ! このもやしのオタクめ!!」
側近「薄暗い部屋に引きこもって一日中ボーカロイドの動画をループで聞いているだけの存在が魔王だなんて、嘆かわしい。あなたはただの、ニートです!!」
魔王「いいじゃん! ニートの何が悪いんだよ! 俺は魔王なの。わかる? 魔界でイチバン偉いんだよ!! いるだけで有り難いんだよ!」
側近「はー。あなたは、分かっていない。統治者の役割とは、民に労働を与え、金銭が潤滑に回るようにし、大企業を、金持ちを優遇し、癒着し、私腹を肥やすことです。」
側近「それをあなたは、ただ、小銭を使うだけ。あなたは、支配しているのではない。欲望に踊らされているだけです」
魔王「うるさい! 貴様に何が解る!? 俺の孤独が、わかるとでもいうのかッ!?」
側近「知りませんよそんなもの。いたつまで家に引きこもって自分を可愛がっているおつもりなのです。あなたは、我ら魔族を導くために造られた生け贄ーー。」
側近「中学二年生を卒業なさい。」
側近「そしてもやしを、間違えた。真に魔界の王となるのです」
魔王「そういう期待が! 俺をこの四畳半に閉じ込めてるわけ。わかってんの?」
側近「……話し合いは、無駄のようですね。いいでしょう。わたくしは、ポテトと生命保険と木刀とまんじゅうとTシャツとクリアファイルとCDを、売れるだけ売ることにしますよ。後は知りません」
魔王「フン……!」
◇
部下S「だーりん! 魔王様は?」
側近「ハニー。大丈夫さ。冒険者に取り囲まれて、もう戦うしかない状況ですよ」
部下S「側近様……! いま、『ハニー』って……!!」キュン!
側近「聞き違いですよ。さ、行きましょう」
魔王城は、冒険者たちの猛攻に、七日七晩燃え続けた。
彼が製作したプラモは、多くが破壊され、あるいは国外へ持ち出された。
それは壮絶な戦いであったと云う。
これが後の世に言う もやし事件である。
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