61 勇者と死体とトランクと
『深夜二時に、車のトランクに死体をつんで訪ねても何とかしてくれるのが親友だ』
勇者「まおうぅ~。どうしよぅ~」
魔王「どうした。情けない声を出して」
勇者「……うん。あのな? 仲間の戦士の攻撃モーションが遅いのについカッとなった俺は、彼を、あらかじめ用意していたテトラドトキシン(フグ毒)で毒殺したんだ」
魔王「あらかじめ用意していた時点で、ついカッとなってないよな?」
勇者「彼を宿屋に運び込んだ俺は、密室を作りあげた」
魔王「……ほう?」
勇者「……その死体が、コレだ」ヨイショ
魔王「持ってくんなよ!? 死体とかコエーし!」
魔王「第一、なんでせっかく密室にしたのに出してくんの!?」
勇者「……知らない人が見たら、ビックリするかと思って」
魔王「知らない人にビックリしてもらって始めて、密室殺人が完成するんだろ!? 途中でやめちゃダメじゃん!? 意味ねーじゃん!!」
勇者「……マジかよ。やっべーな。やっぱ、戻してくるわ」ヨイショ!
魔王「あああああ、やめろって。もう遅い。戦士は、毎朝、早起きして剣の素振りをしていたからな。誰かが、もう、戦士がいないことに気がついているはずだ」
勇者「魔王! 今日は、いつも世話になっているお前の為にステキなプレゼントを持ってきた!」爽笑
魔王「いらねーし! 犯罪の片棒とか、担ぎたくねーし!」
勇者「あああああ、助けてよまおう~。俺、まだケーサツに捕まりたくねぇよ。まだシャバでやり残したことが山ほどあるんだ……行列のできるラーメンも食べてない。銀座の有名スイーツ店のエクレアも食べてない。富士山にも登ってないし、ビル・ゲイツに握手もしてもらってない!」
魔王「ふん。おとなしく罪を認めて償うのだな」
勇者「なんでだよ。どうしてこうなったんだ。俺は、俺は……っ! ただ、戦士の攻撃モーションが気に入らなかっただけなのに……!」
魔王「人格とかはどうでもいいのかよ」
勇者「彼は、老若男女問わずモテモテだった」
魔王「非の打ち所がない、というヤツだな」
勇者「イケメンで、性格も良くて、将来も有望。そんな彼の攻撃モーションに、俺は嫉妬した……」
魔王「ついさっき、イラっときたって言ってなかったか?」
勇者「ああ! 俺は何てことをしてしまったんだ!」
魔王「……ようやく、罪の重さに気がついたか」
勇者「アイツに貸したニンテンドーゲームキューブ返してもらってなかった!」
魔王「……勝手に持ってきゃいいだろ」
勇者「死人の持ち物を勝手に持ってくと呪われそうじゃね?」
魔王「毒殺した辺りでアウトだよ」
勇者「心せまっ! 4畳半くらいしかないんじゃね?」
魔王「……お。パトカーが来たようだ。さらばだ、勇者よ」
勇者「魔王!? まさか、俺の代わりに捕まってくれるのか!?」
魔王「……。」
勇者「やったー! ありがとう! 超嬉しいぜ! 魔王大好き!」
魔王「……。大好き、か……」
勇者「うん。愛してる愛してる!」
魔王「愛している……か」
勇者「プリンもあげるし。ほら」
魔王「プリン……か。何もかも、懐かしい……」
Thanks for your Read !
今回、短くてすんません……。区切り良かったので。




