6 手乗り魔王、あります。
ひゅうっーーと、耳元を鋭い風切り音が打つ。
「魔王、覚悟ッ!!」
魔王城の最深部にたどり着いたその青年は、ためらいもなく、陽の色に光り輝く剣を振るう。
薄暗い広間。
彼の剣が弧を描くたび、風圧が床石を、石壁を削る。
それを難なくかわしながらーー魔王ーーお人よしの人間好きの、変わり者のーーは、思案する。
コイツに命をくれてやるのは面白いだろうか?
ジョークの類ではない。
真面目に、そう考えていた。
彼にとって命は軽い。
他人が、他者が、木や花が生きているということは理解できるし、それは尊いことだとも思う。
しかし、自身には『イノチ』がない。
それは、布でできた人形のようなものなのだ。
先代の魔王という人形のかけらから再構築された、ただのーー魔力で動く人形。ただ、それだけでしかない。
「俺の故郷をーー幼馴染を、国王を、老騎士団長をーー、そして、散っていった仲間たちのためにーー」
勇者とやらは、渾身に叫ぶ。
「お前を倒すっ!!」
ひゅっ
風が、陽の色の刃が、魔王のローブの胸元を切り裂いた。
ーーありえない。
たかが人間がーー
「この私を倒す、だとーー?」
知らず、笑みが浮かぶ。
「--ははは!」
「何が可笑しい?」
勇者が目をすがめる。
「これが笑わずにいられようか? お前に、お前たちに力を与えるソレは何なのだ。
敵いもしない相手に挑む。叶いもしない願いを祈る。適いもしない居場所を望む。
ソレはーー何なのだ」
金の刃が、魔の胸を貫く。
勇者は静かに、ささやくように、魔王の耳元に告げた。
「希望、っていうんだ」
> continue?
むくり。
??「・・・・は~、疲れた。なれないことはするものじゃないな、ども、とりあえず魔王です」
勇者「とりあえず勇者です。ほら、魔王魔王、例のアレ」
魔王「よくぞここまでたどり着いたな、褒めてやろう。
勇者よ、私と手を組むつもりはないか? 世界の半分をお前にやろう」
勇者「イエースッッ!」拳をおおきくふりあげて
勇者・魔王「ゲーム・オーヴァァアー!!」ハイタッチをパン、と。
◇
魔王「ずどらーとヴぃちぇ、魔王です」
勇者「ご・だーぐ、勇者です。いきなりあれですね、今回の冒頭は何なのよアンタ」
魔王「いや、魔王だからたまには倒されてみないと、やられ方分かんなくなるじゃん。あれよお前、魔王つったら、死に際まで頑張らないといけないわけ。人間どもに呪いかけてさ、『ワシを倒しても、幾千幾万の刻ののち、また第2第3の魔王が現れるだろう・・・。ワシには見えるのだ』」
勇者「うっひゃー、カッコいい! 今のそれ、すごく魔王っぽかった!」
魔王「・・・・・・・・。」
勇者「ん? どうしたの、生理?」
魔王「何そのセクハラ」
勇者「いやすまん、ついなんとなく」
魔王「・・・まあいい。私は魔王ーーそう、魔族の王なのだ。何があろうともそれは変わらぬ」
勇者「何があった?」
魔王「・・・資格試験ってあるじゃない」
勇者「あるねー」
魔王「魔王一級の資格の試験問題を書店で見つけたから、ま、楽勝だろうと思って解いてみたわけ」
勇者「ふむ」
魔王「そうしたらさ、何あの問題! 『人間どもが逃げ惑っています。あなたの取るべき行動は? ①蔑む ②罵る ③踏み潰す』・・・」
勇者「・・・・・・。正解は?」
魔王「(目をそらす) ・・・言えねーよそんなん恐ろしくて」
勇者「・・・お前、あれだろ。ホラー映画とか怖くてみれないタイプ?」
魔王「! うっせええ!! いいだろちょっとくらい怖がりでも! 第一ホラー映画なんてなぁ、真昼にアイス食べながら見たら台無しなんだよ!」
勇者「そ、そうか・・・? 涼の取り方としては別に間違っていないような」
魔王「むきゃーっ! 俺はホラーなど認めん! 俺の日常が実はスプラッタだなんて言えない! それを思い出して眠れなくなるからだなんて言えないーー!!!」
勇者「魔王・・・」
魔王「なに、勇者」
勇者「勇者だって大変なんだぞ・・・? 命乞いする魔物を斬り捨てなきゃならん時だってある」
魔王「そ、そうだったのか・・・」
勇者「うむ。魔物だって生きているからな・・・・」
魔王「・・・・。」
勇者「・・・・・・・・。」
魔王「あ、オレンジジュース飲む? 冷えてるよ」
勇者「飲む」
魔王「アクア・ウィターエ飲む? MP MAXまで回復するよ」
勇者「飲む」
魔王「ポーション1年分とか要る? 株主優待で届いて使い途がない」
勇者「株主優待て」
魔王「色々あるよな。お歳暮が知らない人からもらえる感覚? 割引とか、商品の詰め合わせとかさ」
勇者「株て」
魔王「大事だろ、株。全面的に高い時期に買うと大変なことになるけど」
勇者「下降カーブを描いて値下がる一方」
魔王「もう底だろうと思いきや二重底!」
勇者「日経平均上昇!」
魔王「利益確定、売却だ!」
勇者「・・・魔王って何してる人?」
魔王「・・・いや、お金っていいよね」
◇
魔王「最近は暑さも引いてきたな」
勇者「セミの声が、過ぎ行く夏を耳に思い起こさせる」
魔王「うだるような熱風が、--実は夏はもう去り際なのだと知らせてくれる」
あとがき
この時点で、トータルの文字数が 大真面目に書いたファンタジー、「女王陛下のダンス・パーティー」の 1/2の分量になっていて吹きました。何事だっ!? 寝食忘れて書いてたモノとコレが同一かと思うと、創作の悲哀を想わずにはいられません。