54 プリンはどこにいった?
『無題。』
勇者「魔王。俺はお前を絶対に許さん」
魔王「……。」
勇者「今まで、どれだけの人の命を奪ってきた? どれだけの悲しみと恐怖を、この世に生み出してきた? お前は……、お前だけは許さん。俺が倒す」
部下A「……勇者さん、どうしちゃったんです? いつもは僕らと仲良くしてるのに。」
側近「……いえ、あれが本来の勇者です。見なさいーー」
部下A「女神に祝福されし聖剣グランカリバー……。唯一、魔王の心臓を貫けるといわれる……」
側近「今日の勇者は……、本気ですよッ。来ます!」
強烈な斬撃が そっきんをおそう!
フェイント。攻撃。振り抜かれた剣が、まるで生き物のように翻る。魔王と側近(と部下A)ーー三人(ほとんど二人)を相手にして、一歩も引かないーー、いや、むしろ互角だ。
側近「くっ……、何をしているのです魔王!! あなたの価値はッ! 戦闘能力にしかないのですよ!」
側近が、黒い大鎌を振るう。まるで、地獄からやってきた悪魔だ。コウモリのような羽根で飛翔し、縦横無尽に斬り掛かるーーが。
勇者「甘えんだよッ!!」
勇者の剣が、側近の胸を貫く。
側近「く……、くっ! 野望まであと一息だったというのに……! なぜ、わたくしは。わたくしは、何を。何故ーー」
あの愚かな魔王を放っておけなかったのか。人間どもに同情し、人間どもの文化を賞賛する。人間どもと馴れ合い、人間どもを手助けしたことすらある。そんな軟弱な魔王を。何故。
側近「ぐ、ぐぁああぁあああッ」
魔王「側近!? ーー死んだら恥ずかしい格好にしてYouTubeにあげちゃうぞ!!」
側近「かまいませんーーもやし。それだけがわたくしの存在意義だったのですからーー」
魔王「側近! そっきーーん!!」
勇者「……これで邪魔者はいなくなった。あとは貴様だけだ、魔王。」
魔王「ぐ……くっ!!」
勇者「異世界から桜音リミたんフィギュアを召喚し、貴様にもう魔術をあやつる力は残されていないーーそうだろう、魔王?」
魔王「ゆ、ゆるさん、ゆるさんぞ勇者ぁあああ!!!」
魔王「本番ドイツから輸入した鉄道模型の完成まであと一歩、あと一歩だったのだ! それをこのように無惨に踏みにじりおってえええ!」
勇者「ーーフン。それがどうした。俺が魔王城の冷蔵庫に隠しておいたプリンを食べたのはキサマだ。ーー死んでも死にきれんほど、そのことを後悔させてやるッ!!」
魔王「魔王城の冷蔵庫に入れてあるプリンは、名前書いてなかったら俺様が食べていいことになってんの!! まんじゅうもケーキも、そう。ひとに食べられたくないんだったら名前書いとけよー。常識だろ」
勇者の こうげき!
かいしんの いちげき! まおう に、236のダメージ!!
魔王「うぎょえええええ!!!」
勇者「……フウ、悪は滅んだ。さ、有名ケーキ店にスイーツ買いに行くか」
『無題。』改め、『プリンはどこにいった?』完
☆
『想像して萌えるんです。』
魔王「抹茶プリンうまー」
勇者「ラーメンうまー」
側近「もやしは美しい。」
部下A「……はぁはぁ。このムキムキマッチョのDVD最高……!!」
勇者「部下A。ミケランジェロ作『ダビデ像』見てコーフンすんのやめれ。それ、世界の有名美術品の特集だろ」
部下A「美というのは本来、エロスと切り離せない関係にあるんですよ。キレイな女の人を見てキレイだと思うのに、エッチな考えは切り離せないはずです」
勇者「エッチなかんがえ、……ねぇ」チラ
魔王「エッチなかんがえ、なぁ」チラ
側近「ウフフ……もやしさん、もやしさん。世界で一番キレイなのはだーぁれ。それはネ☆ も・や・しッ」つんっ ←指先で、栽培中のもやしとE.T.ごっこしている。
勇者「恐ろしいぜ……。これが魔王軍ナンバー・2(ツー)の実力か……」ゴクリ
魔王「俺様も恐ろしいよ……、コレが魔王軍ナンバー・2かと思うと。」ゴクリ
部下A「僕、側近様を見てると、僕の趣味はまだフツウだなぁって思います」ゴクリ
勇者・魔王「「それはどおかなぁっ!!?」」
勇者「というわけで先日、俺たちは死闘を繰り広げたわけだが……」
魔王「はっ! あんなのは死闘の内には入らん。夏のコミケ会場はね、人の熱波がすごくてね」
勇者「……何の話だよ。」
魔王「人間も、まだまだ捨てたもんじゃないって、そう思う。エロ同人にかける彼ら彼女らの情熱見てるとさぁ」
勇者「……まあ、裏でも表でも色んな汁がだくだく流れてるんだろうな」
部下A「わー、勇者さんのえっちー」
勇者「高校『世界史』の資料集に出てる『瀕死のガリア人』見てコーフンする部下Aに言われたくないよっ!?」
部下A「えぇっ!? あれ、最高にエロスじゃないですか!? あの切なげな眼差し、打ちひしがれたポーズ。全身で『オレはマゾだ』って言ってますよね??」
勇者「言ってねえ!! オマエは芸術を何だと思っているんだ!!」
部下A「ぶーぶー!! インターネットだって、元々は、エロ画像を送りたいがために開発したらしいですよ。『今晩のおかずがない!! よっしゃ!! 光ファイバーで通信だ!』……みたいな」
勇者「……みたいな、じゃねーよ。お前は人間をどーゆう目で見てんだよ」
部下A「……あ、僕が好きなのはムキムキマッチョの彫像・塑像であって、生身の人間じゃありませんから」
勇者「俺さ、先日、快楽都市ヒポポタマスのゲイ・バーに顔パスで入ってくオマエに激似のガーゴイルを見かけたんたけど。」
部下A「彫像を想像して萌えるんです。」
魔王「……、いっそすがすがしい」
勇者「うん」
Thanks for Reading !
【修正】ダビデ像の作者を、『レオナルド・ダ・ヴィンチ』から『ミケランジェロ』に直しました。ご指摘、ありがとうございました~!




