51 連休には温泉にGo!
勇者「もう、うんざりだ!!」
魔王「ゆ……勇者?」
勇者「毎日毎日、魔物を倒して冒険するだけの日々! 宿屋と魔王城の往復しかしてない! もう俺はやめる! こんな仕事!」
魔王「ま、まぁ、ホラ、あれだよ。地道に頑張ってれば何か良いことあるんじゃね?」
勇者「(ギロリ!)ーー魔王はどうなんだよ。何か良いことあったの?」
魔王「あー、ねえよ、馬鹿。毎日毎日、人間ども追い回してさー、もう、繰り返される日常に疲れちまった」
勇者「まあな、何百年も魔王やってりゃな。だけどさー、お前んとこは終身雇用なんだろー? なら、いいじゃん。俺なんかさー、営業成績上げてかないと、首も危ないわけ。もー、サラリーマンって辛いわー」
魔王「まあなー、そこはさ、人間も魔族も変わらないよね。地道な努力と、綿密な計画。上司を暗殺しながら昇進してくトコなんかも同じだろ? やっぱさー、力が全てっつーの? レベル低いと生き残れないよね。あらゆる手段を使って自分を高めてかないと。」
勇者「おー、おお、わかる、わかる。魔族も苦労してんだなー。いくら世界征服なんて理想掲げたって、そうそう暮らしが良くなるワケじゃないんだよなー」
魔王「まあね。夏は暑いし冬は寒い。生き物ってのはさー、苦労するようにできてんのよ」
勇者「でもさー、たまにくらい、楽できても良くない?」
魔王「だからさー、そのために世界征服頑張ってんじゃん、俺もさ。ホラ、なんつーの。世界征服したら温泉とか行ってゆっくりしたいわー」
勇者「あー、それわかる。俺もね、世界を平和にしたらニート生活してやる! 年金暮らしで海外旅行だ! ってもう、それだけが楽しみでさ」
魔王「なんつーの。お互い苦労するなー。はやく世界が魔族のモノになればいいのに」
勇者「だよなぁ。ガンバレよ、魔王。俺も頑張るからさ。絶対に、人間界を魔族のモノになんてさせないよ」
魔王・勇者「「あー、連休、早く来ないかな~」」
☆
かぽーん
魔王「はー、やすらぐ~」
勇者「たまんねーよな、温泉。露天風呂だぜ、露天風呂!」
魔王「お前、今、ケータイ何使ってる?」
勇者「ん? ドコモのラクラク・ホンだよ。お年寄りにも使える親切仕様」
魔王「えー、スマホとかにしないの? 便利だよー」
勇者「王様に、ボス戦に勝った時の報告用にしか使ってないからな……。あんま、オシャレなの使ってもな……、なんか、萎えない?」
魔王「iPhoneでいいじゃん。好きな色、選べるし」
勇者「お前、iPhoneにしたの? あ。発売日に並んだクチだろ」
魔王「配下のゴブリン500匹に、ケータイ・ショップを包囲させてな。あの日は朝から準備で大変だった。転移用の魔法陣描くのとか、偽の引き落とし口座、用意すんのとか」
勇者「そこまでして最新機種ってほしいかね?」
魔王「んー、まあね、ほら、一種のロマン? みたいな。なんかこう、夢があるじゃん。」
勇者「夢かー。俺さ、もう、夢とか希望とか諦めてんのよ。現実なんて、残酷で切ないものじゃん」
魔王「勇者がそれ言っちゃマズいって(笑)」
勇者「えー? 俺らって、けっこう現実主義だよ?」
魔王「そういうもん? あー、でも、あるかも。魔族のほうが夢見がちかもな、ある意味」
勇者「人間に迫害されてきた歴史が長いからねー。現実主義ではあるんだけど。」
魔王「まあ、そこはね。個人差大きいかもね」
勇者「うんうん。」
☆
勇者「鯛だー! 目玉うまー!」
魔王「怖っ! 勇者こわっ! 活け作りの目玉から食うヤツ、初めて見た!!」
勇者「なんつーの。目で新鮮さがわかる? この水晶体のぷにぷに感がたまらん」
魔王「……いるよな、たまに。梅干しの種、食うヤツとか」
勇者「白くてぷにぷにで美味い」
魔王「お前の好みって……、ゲテモノ?」
勇者「昆虫の幼虫とか美味いよね?」
魔王「可愛らしく小首を傾げても騙されんぞ! ネコちゃんやワンちゃんも鍋にして食っちゃうんだな!! 信じられん、勇者め! それでも勇者か!!」
勇者「……さすがに犬猫は食わねえよ。……ハムスターは、微妙??」
魔王「小首をかしげる勇者プリチー! 発言と比例してない! 反比例だ!」
勇者「……よせよ、プリチーとか言うの。恥ずかしくね?」
魔王「冗談に決まってんだろ。バーカ、バーカ」
勇者「うっわ、魔王ってムカつくわー。」
魔王「まあな。魔王だしな」
勇者「そうだな。仕方ないな」
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