46 七味唐辛子激論編
側近「魔王様。早く世界征服をしていただかないと城の中が片付かないのですが……。」
魔王「……あー、うん。このゲームが終わったらやるよ」
側近「そんなことを言いながらもう5000年も経っているじゃありませんか。ほら、この劣化ウラン弾はどこに撃ち込むんです?早く決めてください」
魔王「ベルリンの壁辺りで良んじゃね?西と東の国とかが戦争始めるだろ」
側近「東西冷戦なんてとっくに終わっていますよ。鉄のカーテンなんて言っても若い方は知らないでしょうね……」
魔王「うおっ!?マジかよ!俺がちょっとトランプでひとりソリティアやってる間に……人間どもはよく働くな。」
側近「あなたが怠けすぎなのですよ。さあ、この要らなくなった大陸間弾道ミサイルはどうするのですか?」
魔王「そこ置いといてよ。後で使うから」
側近「この人型戦闘兵器は捨てても良いでしょう?」
魔王「ダメダメ!それ気に入ってんだよ!玄関に置いといて」
側近「玄関にはすでに要らなくなった宇宙戦艦と移動式城塞が置いてあるからもうスペースがありませんね」
魔王「ああ、もう!じゃあ庭に」
側近「雨ざらしにしておくのですか?それもどうかと思いますが……」
魔王「……ったく、しょうがねえなあ。ちょっと隣の国征服してくるわ。そしたら置けるだろ」
側近「そうですね。」
◆
部下A「魔王様って、捨てられない病ですよね」
側近「まったくです。少しは整理整頓というものを覚えて頂きたいですね」
魔王「だってさー、いつか使うかも!って思うと捨てられないんだよ」
部下A「その「いつか」が永遠に来ないのが問題なんですよね」
◆◆◆
モブ「辞任しろーっ!」「ハラをきれー!」
キャスター「『七味唐辛子に山椒は必要あるまい』ーー先日の魔王様の発言を受けて、今、魔界永田町は揺れに揺れています。現場から、ボブゴブリン記者がお伝え致します」
モブ「魔王は辞任しろーっ!」「責任をとって脱ぐべきだーっ!」
ゴブリン「はい、現場のボブゴブリンです。先日の魔王様の発言には各族長ーーオーク、セイレーン、ハーピー、ゴブリン、ドラゴンなどが猛烈に反発しており、山椒の人気の高さが浮き彫りになった形です。中には、(七味に入っている)ミカンの皮って必要なくね? 俺はラーメンが好きだ あるいは唐辛子そのものが必要ではないという極論も飛び出し、議論は紛糾しています」
オーク「七味唐辛子には麻の実さえ入っていればいい。魔王にはそれがわからないんです! ーーああいう方にですね、魔王を務めている資格はない。あなたもそう思うでしょう?」
ゴブリン「ええーーそうですね」
オーク「我々はこれからも集団で女の子を取り囲む権利と、七味の麻の実の権利を求めて闘ってまいります。」
ゴブリン「ところで、強気なオークのみなさんですが、以前魔王様から下賜された赤いTバックをおそろいではいています。もらってから洗濯をしていないとの情報もありますが……」
オーク「洗濯などただの迷信です。あんなもので身体の清潔が保てるなんて、想像できませんね。入浴や歯磨きも同様です。我々を説得するにはまず、科学的な根拠を示して欲しいですよ」
ゴブリン「オークと戦うなら風下には立つなーー冒険者たちの間に伝わる格言ですが、今回、それを改めて再認識いたしました。現場から、ボブゴブリンがお伝え致しました」
キャスター「ありがとうございました。では、次のニュースです」
◆
キャスターB「以前、集団でリストラされた魔王軍128魔将が、あの解雇は不当であったとして、側近様を相手どり、多額の賠償請求を求めています」
側近「ですから、それについては以前にご説明した通りです。魔王軍の経営状態は厳しい。わたくしたちにはもやしを買う金もないのです。魔王軍128魔将などという、全員出番があるかどうかもわからないモノをですね、ボーナスまで出して養っている余裕はありません」
キャスター「そんな側近様ですが、プライベートでは、人間界からアルファルファもやしを購入して自宅で栽培するなど、贅沢な私生活をしているようです。もやしを栽培するためのクリーン・ルームを、魔界の郊外に500ヘクタールの規模で建設中との噂もあります」
側近「プライベートにはお答えできません。秘書を通して下さい」
キャスターB「CMのあとは、米国のデトロイト市破産の続報です」




