45 小銭で払おう!
ファミレス店員「ありがとうございましたー!!」
魔王「……なあ、あれって憧れじゃね?」
勇者「ん? なに?」
魔王「あれだよ、あれ。ファミレスの出口で……」
勇者「おお! 食い逃げか! 俺も昔はよく憧れた……」
魔王「ちっげーよ! あれだよ!」
勇者「……だからお会計だろ? いかにあそこを通らずに外に出るかっていう……。俺はあれだな、やっぱトイレの窓がオススメ」
魔王「なんで食い逃げの話になってんだよ!? 俺様の憧れはあれだ。」
勇者「……んん?」
店員「2980円になりま~す」
女「……あ、20円足りない」
男「ハイ、オレ20円あるよ」ちゃりん
店員「ちょうどお預かりしま~す!」
勇者「……店員? そうか、オマエ、一回ファミレスでバイトしてみたかったのか!」
魔王「ちっげーよ! お会計のときに二人で小銭を出し合って、ピッタリで会計を済ます、アレが憧れなのだ!」
勇者「ええ~、なんでだよ、俺が払ってやるよ。一万円札で。」
魔王「貴様にはあのロマンが分からんのか!? 二人の財布の間にはもはや境界は存在しない……。ふたつでひとつなのだ!」
勇者「いいじゃん。面倒くせえ。俺が払う、つってんだろ」
部下A「わかりますよ魔王様。エスカレーター乗る時に恋人同士で手を繋いでる、みたいなのがやりたいんですよね」
魔王「おおっ! わかるか部下A!」
部下A「いいですよね~、恋し合うふたりは、ちょっと周りの空気読まないくらいがちょうど良いんですよ。」
勇者「何お前ら分かり合ってんの? きもちわるい」
魔王「よし! 部下A! 小銭を出すのだ。いくらある?」
部下A「……あ、僕、クレジットカードしか持って歩かない主義なんです」
勇者・魔王「漢らしい!?」
◇
勇者「……魔王に小銭をカツアゲされた。この恨みは死んでも忘れん」
魔王「うむ。ピッタリ支払えると気持ちが良いな」
勇者「……いいな、必ず返せよ魔王。俺の20ゴールド。10日で一割の利子がつくからな。忘れんなよ!」
魔王「他のことはおおざっぱなのに何故小銭にだけはそんなに執着するのだ……」
勇者「ちゃんと忘れないように腕にマジックでメモっとこ。魔王君に20ゴールド貸した、と」
◆ ◇ ◆
勇者「勇者です!」
魔王「魔王だ!」
勇者・魔王「ふたり合わせて~」
魔王「……えっと、どうするよ」
勇者「あれでいいんじゃね? YMB48で」
魔王「ふたりで48は、なぁ。ちょっとサバ読みすぎじゃないか?」
勇者「ンなことねーよ。お前が47人に分裂すれば問題解決だ」
魔王「分裂か! よっしゃ、任せろーー!!」うにょうにょうにょうにょ
勇者「ぎゃー!? 増えたー!? ちっこい魔王が47匹いる!?」
魔王47「各々の戦闘力は、本来の1/47だ」
勇者「マジかっ?」ぷちっ!
魔王46「何すんのお前何すんの!? 一人魔王が倒されたじゃん!?」
勇者「……。」ぷちっ! ぷちっ! ぷちっ!!
魔王43「怖ぁっ!? 勇者コワッ!! 無表情に俺の分身踏み潰してるよ!?」
勇者「……くっくっく! これでお前の戦闘力は43/47に減ったわけだ……」
魔王43「逃げろー!!」
まおう は 逃げ出した!
しかし まわりこまれて しまった!
魔王43「ぎにゃあぁあああ!!!」
勇者「……こうして世界は平和になった」
魔王「最近の勇者はちょっとひどい。夢も希望もない」
勇者「……ふぅ、やれやれ。とんだ甘ちゃんだぜ、魔王は、よ」
魔王「……そっかな?」
勇者「そうだよ! 夢なんて見てていいのはなぁ、保育園までだ。過酷な生存競争はなぁ、幼稚園からもう始まってんのよ」
魔王「マジか。タイヘンだな人間。」
勇者「そうだよ。これからの時代はなぁ、幼稚園でリクルートの説明会があんのよ」
魔王「ふむ?」
勇者「年長さんになるころにはみんな就職先が内定してるね」
魔王「……きびしいな、人生というヤツは」
勇者「小学一年生はみんな婚活に必死」
魔王「中学生はもう老人だな。老人ホームでゲートボールとかしてんの」
勇者「余生長すぎない?」
魔王「……まぁ、いいだろ」
勇者「そうだな。まあいいや」
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