43 勇者と魔王と七夕と
勇者「七夕だー!! さあ魔王! この短冊に願い事を書け! 俺が竹のてっぺんに吊してやる!」
魔王「……なっ、勝手なコトを抜かすなっ!? 俺様の願い事も知らんクセに……」
勇者「俺のはもう書いたぞ! "魔王の願い事が叶いますように"コレだ! さあ書け魔王! 今すぐお前の願い事を書くんだッ!!」
魔王「……アレじゃね? 四文字だとか思ってるんじゃね?」
勇者「そらそーだ。魔王の願い事なんて、例の四文字熟語でしかありえないよ!」
魔王「家内安全、無病息災、金運上昇、恋愛成就ーー」
勇者「マジか。魔王の好きなコって誰。やっぱり体がふにふにしてて吸盤とかあるのか」
魔王「なんでだ。」
勇者「首が六本あって炎の吐息を吐くんだな」
魔王「だから何でだよ」
勇者「おい、いつの間にそんなカワイイ子と知り合ったんだよ。俺にも紹介しろよ」つんつん
魔王「腕をつつくなっ!? お前の考えるカワイイ子は、ふにふにしてて吸盤があって首が六本で炎の吐息を吐くのかっ?」
勇者「当然だろ。カワイイ子の基準は世界共通だね。ネバネバで、腕が伸びるとなおいい」
魔王「(それはカワイイ・・・のか??)」
◆
勇者「というわけで笹に短冊を吊るしました」
魔王「《もやしを一年分下さい》・・・。誰かクリスマスと勘違いしているな」
勇者「七夕はなー、織り姫と彦星が年に一度会えるロマンチックなイベントなんだよ」
魔王「雨が降ったら?」
勇者「雨天決行だよ。決まってんだろ。何? せっかくコイビトに会えんのに集中豪雨で乗用車がプカプカ浮いてる程度で諦めんのかお前は」
魔王「クルマが使えないのはキツいな・・・」
勇者「俺のレクサス貸してやるよ」
魔王「レクサスだろうが黒塗りの高級外車だろうが浮くんじゃないか?」
勇者「水陸両用車ならイケるかな?」
魔王「おお、そうだな。それならゲリラ豪雨で増水した天の川もバッチリだ。」
勇者「よっしゃ。織り姫の婆さんと彦星の爺さんのために手配してくるわ」
魔王「婆さん爺さんってオイ」
◆
勇者「はー、たまにはこうしてのんびり星を見るのもいいな」
魔王「うむ。浴衣に下駄も悪くない」
勇者「ひとっ風呂浴びてさっぱりしてーー」
魔王「枝豆とトウモロコシを用意してーー」
勇者「さあ、世界の命運をかけた最終決戦だ。織り姫のバアさん、彦星のジイさん、俺を見守っていてくれ」
あとがき。
今回は1000字と短めでこざる・・・。




