42 ハリウッドに行こう!
部下A「魔王様~、勇者さんからお手紙が来てます」
魔王「なんだよ、水くさいな。いつも来てるんだから口で言えばいいのに」ぴらっ
勇者(with 猛毒を塗布した手紙)《今すぐ世界征服をやめろ。さもなくばこのプードル犬の毛を全部剃る》
魔王・部下A「テロだーーー!!!」
魔王「おのれ、勇者……っ! 我が軍は決してテロになど屈さぬ……!!」
部下A「でも、プードルが……!」
魔王「人は死ねばまた生まれてくるのだ。毛は剃ればまた生えてくる。悪いが、尊いギセイになってもらおう……!」
部下A「ヒドイ! 魔王様! プードルさんを見捨てるなんてサイテー!!」
魔王「……うぬぅ、だがな、部下Aよ……」
部下A「……僕は、僕は魔王様のこと、信じてました……。いつもはぐだぐだしてるけど、やるときはやる人だって……! プードルを見捨てる魔王様なんか見たくなかった……!」
魔王「……ったくもう。しょうがないなー、やめるよ、世界征服。ハイ、これでいいか?」
部下A「……!! 魔王様から世界征服を取ったらただの駄目人間じゃないですか……! どうするんです? これから」
魔王「ファーストフード店でバイトでもするよ」
部下A「わぁ、ワーキングプアですね、流行りの! 魔王様、カッコイイ!」
勇者「ちわーっす、勇者です」
部下A「勇者さん! プードルは!?」
魔王「毛は無事なのかっ!?」
ま・る・が・り
毛を無残に剃られたプードルがそこにいた……!!
魔王「ひどい! こりゃひどいなっ!? なんて残酷なのだ、勇者よ!」
部下A「勇者さんサイテー! もう顔も見たくありません!!」
勇者「……だって。毛がモコモコふわふわであんまり暑そうだったから……つい。毛刈りバサミ持って待機してたらガマンできなくなって刈っちゃった」
魔王「耐えろよそこは! 鉄と鋼の心でもってグッとガマンするところじゃねーの!?」
勇者「俺の耐久力なめんな。ガマンできねーよ!」
魔王「は~、これだから最近の勇者は。まったく、ひどいな」
部下A「ひどい、ひどいです勇者さん……(涙)。ほら、毛生え薬ですよ~、早くモコモコになると良いですね~」塗り塗り
◆
魔王「……ところでテロってさ、予告なくいきなり実行してから犯行声明出すもんじゃねーの?」
勇者「……マジかよ。実行力あるな、テロ犯は。ほんとすげーよ、尊敬するわ」
魔王「尊敬すんなよ。犯罪者だぞ」
勇者「マジで? 俺、彼らは世界を救うために爆発するんだと思ってた」
魔王「なんでだよ。なんで爆発で世界を救う? 鉱物資源の採掘で十分だろ、爆発は」
勇者「しらねーよ! 追い詰められると人間は爆発するんだよ!」
魔王「リアリィ? ホワイ? アー・ユー・オウケイ?」
勇者「オーケーじゃねーから爆発するんだ……、わかるか、魔王」
魔王「もう俺、超がんばって世界を征服するよ。誰もが笑って暮らせる世界を作るんだ……!」
勇者「やだよ、そんな魔王。お前はがんばって悪逆非道やってろよ」
魔王「そんなん期待されてもな~」
勇者「ひとは魔王に生まれるのではない。魔王に、なるのだ」
魔王「なるのか。五円玉で?」
勇者「そうそう。催眠術な。効くぞ~、あれは。俺もあれで勇者になりました。今なら無料のテキストもついて、一回3000ゴールドでご体験頂けます」
魔王「お~、誰かやってみない? 部下Z、お前ためしにやってみたら?」
部下Z「……いえ、そんな。畏れ多い。」
部下A「わー、やります、やります。ほんとに五円玉が揺れるのを見てるだけで魔王になれるんですか?」
勇者「なれるわけないだろ。ばーか、ばーか」
魔王「あーあー、部下Aったら勇者の口座に3000ゴールドも振り込んじゃって」
勇者「かわいそー」
部下A「……。」
魔王「部下Aが巨大化した」
勇者「王城に突進した」
魔王「姫様がさらわれた」
勇者「原発を止めた」
魔王「新聞紙をリサイクルした」
勇者「砂漠化を防いだ」
魔王「東南アジアでマングローブを植樹した」
勇者「おおきな森ができた」
魔王「インド映画に出演」
勇者「ハリウッドに進出」
魔王「ハーバードに進学」
勇者「ノーベル平和賞を受賞」
魔王「こんど、宇宙に旅行するらしい」
勇者・魔王「「そして、部下Aは伝説になった」」
完
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