41 勇者と魔王と3DS
魔王「xボタンってあるじゃん?」
勇者「あるねー」
魔王「xボタンでメニューが開けるとかアレは何なの? xボタンは俺様が魔王城の中をダッシュするためのボタンだろ!?」
勇者「それは×(バツ)ボタンじゃねえか。ゲーム業界の人だろお前? ×(バツ)ボタンとxボタンの違いくらい分かってろよ」
魔王「ヤだよ! 分かんねーよ! ーー決めた! 俺様は今後xボタンでダッシュする! キャンセルする! ひとつ前の画面に戻る! メニューが開くなど言語道断だ! 魔王城の魔物兵士ステータスはすべてA4サイズにプリントアウトして持ち歩く!」
側近「……だれがそのじょうほうをこうしんするんです」
魔王「決まっているだろう! 私には有能な側近がいる! プリンタとノートパソコン持って魔王城、のみならず外のフィールド画面も駆け回れェエエエ!!」
部下A「魔王様、そんなワンマンだからラストバトルの直前になって側近様に裏切られるんですよ……。最大禁忌魔法でトドメ刺されて《……ぐふっ、貴様ぁ……っ! 私の右腕ではなかったか……!》とか言うハメになるんです」
魔王「まるで未来を見てきたみたいだね、部下A」
部下A「何言ってるんです、魔王様。ちょっと改造ツール使って最強レベルでクリアすればいいだけじゃないですか。タイムマシンなんか要りませんよ」
☆
魔王「というわけでDSで遊んでいます」
勇者「マジかよ。よこせよ。3DSだな!? 飛び出て見えるヤツだな! こりゃすげえ! 俺が飛び出て見える!」
魔王「xボタンでダッシュだー!!」
勇者「しつけえよお前。DSに何か恨みでもあるのかよ」
魔王「前回、世界征服を邪魔された恨み、忘れたとは言わさん……!!」ゴゴゴゴゴ
勇者「……マジかよ。DSすげえな。ちょっとジェラシー」
魔王「(ピコピコピコピコ)」
勇者「……あの~? まおうー? 魔王さんー?」
魔王「(ピコピコピコピコ)……よっしゃクリア」
魔王「(ピコピコピコピコ)」
勇者「……うわぁ。ゲーム始めると夢中になって無言になるタイプだ」
部下A「今です、勇者さん! 最大奥義を魔王様に!!」
勇者「奥義! トルネードブラスト! うぉりやぁああ!!!」
どがしゃーん!
魔王「……あ」
勇者「……あ。」
魔王「……どーすんのお前。何してくれちゃうのお前。俺のDSが吹き飛ばされて粉砕されただろ。返せ! 俺の青春を返せーー!!!」
勇者「うわぁ、絶叫だよ。ゴメン、DSの物理防御力がそんなに低いとは知らなかったんだ」
部下A「魔法攻撃には強いんですけどねー。いかんせん、電子機器ですから。持ち歩くものだけど、精密機器であるコンピュータが使用されているんですよ?」
勇者「そうだな。俺のPSPもお風呂に入れてやったあの日からクチをきいてくれない。俺たちの関係ではまだ2人でお風呂に入るには早すぎたらしい」
部下A「オフロで携帯ゲームですか。長風呂しちゃいそう……」
勇者「俺はね、風呂はね、まず髪を洗うな」
部下A「訊いてませんよ、勇者さん」
勇者「次に左腕洗って~、それから勇者の剣を研いでー、鎧をメガネクリーナーで手入れして~」
魔王「メガネクリーナーっ!?」
勇者「当然だろ? 俺さぁ、鎧に誰かの指紋とか付いてるの嫌なわけ」
魔王「……それは構わんが、……しかしメガネクリーナーか……」
勇者「何だよ。俺の鎧の手入れ法に文句つけんなっつの」
☆
魔王「魔王城もなぁ、そろそろリフォームしようかな」
部下A「わぁ、ほんとうですか?? 魔王様。僕、今度の魔王城は入り口にスタバがあったらどうかなって思うんですけど……」
魔王「スタバな。業者に打診してみよう。でもなー、魔王城だからな。客入らないかもよ?」
部下A「僕が毎日、キャラメル・ラテを買いに行きます~♪」
側近「わたくしは、新鮮な野菜の手に入る店があったらいいですね」
魔王「(ひそひそ)干しモヤシとか置いといたらよくね?」
部下A「(ひそひそ)……ですよね。側近様はしなびたモヤシでも食べていればいいんです」
側近「しなびるというより溶けますよ、モヤシは。そのくらい繊細な食物なのです。……そう、わたくしのようにッ!!」
魔王「モヤシはさておいて、総ガラス張りとかどうかな」
部下A「うわぁー、すごいすごい! 床もガラス張りにするんですね!」
側近「世界に名だたる軍事拠点が総ガラス張りってどうなんです……」
魔王「我が魔王城に隠すものなどない!」
側近「ヤですよ! プライバシーってものがあるんです!」
側近「(魔王様を倒すためにわたくしが密かに戦力を蓄積しているなど、明るみに出てはなりませんからね……!)」
部下A「側近様は秘密が多そうですよねぇ」
魔王「うんうん。密かに核兵器とかタンスの裏に隠してそう」
部下A「わぁ、怖いです! 台所のシンク下で細菌兵器も製造してるかもしれませんよ、魔王様っ!!」
側近「タンスの裏にはネズミ取りくらいしかありませんよっ!? 流し台の下には食器用洗剤を置いていますっ!! ーーまったく。わたくしを何だと思っているのです」
魔王「……ネズミ出るんだ? 側近の部屋」
部下A「ホウ酸だんご、作りましょうか……?」
側近「……いえ、ご心配には及びませんよ。ネズミごとき、わたくしの魔術の前では塵も同じ」
魔王「ならいいけどさ」
部下A「ならいいですけどね」
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携帯ゲームをしない方のために補足しておきますと、PSPではボタンが○×□△の順で配置されていますが、DSではABYXの順に配置されています。
エックスボタンは上側にありますが、バツボタンは下側にあります。
・・・ええ、説明書を読んでいますとね、『Xボタンでメニューを開いてください』とか記載されているわけです。それは俺様がダッシュするためのボタンじゃーー!!




