4 勇者と魔王と蒲焼談義
魔王城最上階。ーー冷房故障中。
魔王@酒場「あっつー。まじ食欲とかなくなるわ」
勇者Lv.32「・・・ふっ、俺は鍛え方からして違うからな。俺の鉄の胃袋にかかれば、チャーシューメンもソーメンも同じこと!」
魔王「昨日から3食ソーメンしか食ってないとか本当?」
勇者「●イダーインゼリーも食べた」
魔王「真夏に食うとあれうまいよな、凍らせるやつとか」
勇者「・・・・」
魔王「・・・勇者?」
勇者「なあ、俺、考えたんだ」
魔王「何を。」
勇者「いつかはお前を倒さなきゃならないーー、こんなことしていていいのかって」
魔王「よくない」
勇者「そうーーか。そうだよな・・・」
魔王「さあ、今すぐ冷房の効いてた魔王城から出て行け」
勇者「いやだぁあああ!!!」
業者「あと二時間くらいで直りそうっスよ」
◇
そーりょ「勇者さん、最近帰りが遅いですね~。浮気でもしているのでしょうか~」
盗賊「(びくっ)」
そーりょ「盗賊さん? どうしたんです?」
盗賊「あ、ああ・・・。マジメなヤツだからな。どっかその辺で素振りでもしてるんじゃないか?」
そーりょ「そうですよね。そもそも勇者とあたしは付き合ったりしてませんでした」
盗賊「お前かよ」
そーりょ「はいっ、盗賊さんも勇者が好きなんですよね。ライバルですね、恋のライバルっ♪」
盗賊「なんで楽しそうなの?」
そーりょ「みんなで想えば怖くない、失恋するときは一緒ですぅうう」
盗賊「何故にっ?!」
◇
魔王「・・・と、いうわけなんだ」
勇者「タイヘンだなー、お前のトコも。ウチくらいの零細経営になるとさ、予算っつってもあれな、ゴールドをみんなで均等に三分割して終わりよ。楽だろ~?」
魔王「仕方ないだろう。次々と勇者気取りのやつらが我が配下を刻一刻と減らしていくのだ。随時、増産をかけねば間に合わんではないか」
勇者「あ~・・・やっぱ大変だったんだ。おかしいなーとは思ってたのよ? 倒しても倒しても出てくるからさー」
魔王「だろ? そのくらいしなきゃな。こっちとしてはさ、やっぱ勝ちたいわけよ。人間どもを滅ぼして、地上を魔界にするのが夢だからさ~」
勇者「夢とかwwwwww クソワロタ」
魔王「なんでよ。いいじゃん、大志。抱こうぜ」
勇者「大志かー。明日の昼はビーフシチューに挑戦、みたいな」
魔王「ビーフシチューか・・・。難しいよな、あれ」
勇者「そうそう。煮込みすぎると牛肉が固くなっちゃう」
魔王「魔王軍精鋭の歯をもってしても噛んでも噛んでも味がしなくて困っちゃった」
*
勇者「あ~、あっつー」
魔王「脱ぐな脱ぐな」
勇者「え~、いいよどうせ誰も見てないし~」
魔王「俺様はノーカンか。良い度胸だ、オモテへ出ろ」
勇者「そもそもお前って魔族連中が作った魔法人形じゃん。意思とか自我とかないじゃん?」
魔王「・・・おいおい、本人目の前。」
勇者「先代ってどうなの。俺のひい爺さんと戦ったんでしょ?」
魔王「ああ。戦いながら火山の火口に落ちたんだったな」
勇者・魔王「あっつそ~www」
部下A「魔王さま、散歩の時間ですよ~」
魔王「俺は犬か、って」
部下B「ネクガルド王国をちょっとばかり蹂躙しに出かける予定なんだろ? 勇者とか邪魔だからちょっと帰ってくれない?」
勇者「仕方ねぇなあ、仕事じゃなあ」
魔王「うむ。ではちょっと出かける」
部下A・B「いってらっしゃいませ~」
*
勇者「は~、あっつー・・・」
盗賊「夏だからな」
そーりょ「夏ですから」
勇者「分かってるよ。そうさ、俺たちには魔王を倒し、世界を救うという目標があるんだ。ちょっとばかり外気温が36℃でもへこたれてちゃいけない」
そーりょ「いえいえ~。普通に休みましょうって、勇者」
盗賊「俺もう死にそう・・・。さっきから眩暈がして」
そーりょ「大変です勇者さん! 砂漠の真ん中でラクダもいないのに盗賊さんが熱中症です!」
勇者「みんな、あれを見るんだ・・・西の方角」
そーりょ「見慣れた大きな黒い城ーー魔王城です」
勇者「(あそこには直ったばかりの冷房がーー)」
勇者「盗賊、まだ倒れちゃだめだ。俺たちはあそこにたどり着くまで、負けてはいけないーー負けられない」
盗賊「きゅう~ (意識がないようだ)」
あとがき
読んで下さった方、ありがとうございます。
「読んでくれた方」というものがはたしてこの地上に実在するのかどうか疑問に思い始めた筆者「魔王@酒場」です。
次回更新は未定です。この作品がある日突然「完結済」に変更される可能性があります。