28 勇者と魔王と確定申告。
勇者「2月だね」
魔王「2月だな」
勇者「確定申告の時季じゃん?」
魔王「私には確定申告など必要ない!!」
勇者「マジで? いいなあ、お堅い企業に勤めてるわけね。んで定年退職して初めて確定申告書Aをもらうわけかぁ。いいな、そういう人生も」
魔王「なに、そのAとか。Bもあんの?」
勇者「あるよー、そりゃもう。申告分離とか事業所得のある人は申告書Bだね。俺は見たことないけど。……、きっと、あれじゃね、確定申告書Bは、衛星軌道上からの核ミサイル攻撃とかできるんだよ」
魔王「……できてたまるか。核拡散防止条約とか知らんのか貴様。」
勇者「いいじゃん、夢のある確定申告。ロマンチックな年末調整。年度末はハワイで確☆申 キラッ」
魔王「……。」
勇者「まあね、とにかくね、勇者つーのは自由業! 毎年2月18日から3月15日までの間に税務署から送られてくる書類に小難しい数字書いて、セルフメイドの封筒に詰めて送り返すわけだよ」
部下A(お茶を淹れつつ)「勇者って自由業だったんですね……」
勇者「どこかの阿呆みたいに65万円の必要経費を引くのを忘れて、目玉の飛び出るような額の税金払わないでね☆」
魔王「収入から約65万円分、生活などの費用として非課税となる」
勇者「38万円がさらに基礎控除として、税金を払わなくていいお金だ。日本の税制は基本的に貧乏人に優しい。どこかの阿呆みたいに、収入合計イコール課税額だと思わないようにな」
どこかの阿呆「うるさいです。金返せ。さんすうなんかできないんだッ! 阿呆に優しい税制改革をッ! 譲渡益税は10パーセントもとられるし! しかもこれ、ほんとは20万円以下なんで、取られなくていい税金なんだよぅ」
魔王「おお、どこかの阿呆」
勇者「やあ、どこかの阿呆じゃないか」
部下A「……あ。恥ずかしがり屋さんなので逃げ出しました」
勇者「まあね、2月は温泉で確定申告すんのがイチバンだよ」
魔王「おー、チラチラ降る白い雪を眺めつつ、風呂に浸かって日本酒を傾けながら電卓片手にゼロをたくさん埋めてくわけか……」
勇者「絵はがき代わりに温泉の最寄り郵便局から確定申告書を送付」
側近「……フッ」キラリ
部下A「……あ、側近様。何ですかその機械」
魔王「e-Taxのカードだな」
部下A「他に用途もないのに秋葉原で買ってきたってホントだったんですね」
側近「国民の義務ですから」
魔王「……何、ていうか俺たち魔族には税金制度ないんだけど。どこに金払ってんの、側近? ……はっ、まさか俺を裏切って……!?」
側近「フ、フフフ、アーッハッハッハ! 露見してしまった以上、隠しておいても仕方がありませんね! 隣国の同人誌即売会で50万を稼いだことを!!」
魔王「……マジで? そういう場合って隣国で税金支払うの?」
部下A「勇者さんの国の税務署に問い合わせてみましょう」トゥルルルル
国王「イエスッ! アイ、キャン! 王様ですッ!」
魔王「なんかでたよ」
勇者「なんかでたな」
側近「あー、王様? シンガポールに本社があったら、その会社はシンガポール政府に税金払えばいいんですよね?」
国王「イエスッ! アイ、キャン!」
魔王「できるってよ」
勇者「できるらしいな」
部下A「それでは今日の3時のおやつはこの辺でお開きにしましょうか」
国王「イエスッ! アイ、キャン!」
魔王「……だから何ができんだよ」
勇者「……うん。何だろうね」
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