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「ども、魔王です」「こんにちは、勇者です」  作者: 魔王@酒場
魔王様は玉座にて待つ。宅配便とかを。
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27 勇者と魔王とバレンタイン

ある日、魔王は言いました。


魔王「勇者よ、クイズバトルで勝負だ!」

勇者「・・・は? 何言っちゃってんのオマエ。今時、勇者と魔王が戦うとか古臭いんだよ。いつの時代の人? 紀元前?」


魔王「・・・。」

勇者「第一、オマエはそれでいいわけ?」


魔王「と、いうと??」

勇者「いいか、クイズバトルというのは、両者の知力の差が問われるバトルだ。それはいい」

魔王「ふむ・・・」


勇者「しかし、だ。魔王、お前は、クイズに負けたくらいで世界征服を諦めるような、そんな生易しい気持ちで魔王軍を率いているのか? 違うだろう。もっと譲れない、誰にも邪魔をさせない、そんな気持ちじゃあないのか?」

魔王「勇者よ・・・」

勇者「どうなんだ魔王! 答えろ」


魔王「まあ、そうね。俺もね、昔はそういう熱い気持ちだった頃もあったのよ、いやホント」

勇者「ま、魔王??」


魔王「だけど最近はさー、何この、何をするのもダルい感じっつーの? もう百人一首とか、七並べとか、もうそれこそババ抜きとかさぁ。そういうので世界の覇権を決めてもいい時代じゃないかと思うわけ」

勇者「・・・まじで?」


魔王「そりゃそうだよ。先日も国王に劣化ウラン弾とか戦車で撃ち込まれてさ。和室の障子に穴とか開いちゃったわけ。ホント勘弁してほしいわ。熱いのもけっこうだけどさー、これからの高齢社会をそのテンションで乗り切れるかっつーとまた別問題だと思わね?」


勇者「う・・・うむ、それはそうかも知れんが、だがな、魔王よ・・・」

魔王「あ、悪い。これからちょっと見たいテレビがあんのよ。録画してくるからちょっと待ってて」


勇者「う・・・うん。いいよ。なるべく早くね」

魔王「おっけー」


   *


部下A「・・・あれ? 魔王城の廊下で勇者さんが壁に額をくっつけてたそがれています。どうしたんですか?」


勇者「ああ・・・、親父の時代はよかった。高度経済成長期。株も不動産も給料も右肩上がり。燃える魂は工場を動かし、俺たちの国は高度な発展を遂げた。だが今や、どうだ。失業率は改善されず、街には無職の若者たちが溢れている。これが、希望ある21世紀の姿だろうか? 俺はーー俺はもっと、ハイテク・カーがチューブの中を走ったりしてるようなそんな宇宙的な21世紀を思い描いていたのに・・・」


部下A「勇者さん? 現実を見ましょうよ。国の人口比率を考えてみてください。暮らしはすっかり豊かになり、今やどこにも新規産業の立ち上がる余地はない。停滞感が国全体を覆っています。たとえ今、魔王様が人間界を征服してもーー、正直、旨みがないんですよ、旨みが。膨大な軍事費を投入して国を制圧する。その結果、加工産業だけが強みの国を手に入れてもねぇ。


 やっぱりこれからは資源がないと。原油、レアメタル、農産物ーーそういったものがある国を征服するほうが、魔王軍としても合理的なんです」


勇者「部下A・・・。」


部下A「すみません、勇者さん。勇者さんの国とはもう戦う理由がなくなってしまったんです・・・」


勇者「部下A! 待て! 話を聞いてくれ!!」

部下A「すでに側近様が綿密な調査を行った上の結論です。--5年後に再調査をする予定ですから、ご意見はその時にお聞きします。それじゃ・・・」


勇者「そ、そんな!! 部下A--!! 俺は、俺の存在意義はッ!!?」


   *


勇者「--っていう夢を見てさぁ。どう思う? 魔王」

魔王「正夢だな」

勇者「正夢なのかよ」


魔王「ああ。我が魔王軍もさ、色々とやってるわけ。土地運用したり、債権買ってみたりとか。ああ、倉庫にコメを山積みにした日もあったな・・・」


勇者「何してんだお前」

魔王「やっぱな、これからの時代、軍事力で世界征服とか正直ツライわけ。世論の目もあるしさ。原油を買い占めるくらいのことはしないとな」


勇者「俺は・・・、俺は何をしたら・・・」

魔王「環境活動家にでもなれば? 捕鯨に反対したり、原発に反対したりとかさ。ほら、何か勇者っぽいじゃん」


勇者「勇者・・・。俺は・・・勇者・・・、フ。ちょっと職業安定所行ってくる」


   *

2月14日ーー魔王城。


勇者「魔王ー! 中に爪楊枝が入っているから気をつけるんだ!!」

魔王「ぐさっ!」


勇者「えー、あの、魔王さん? 大丈夫ですか?」

魔王「大丈夫ですかじゃねえよ。明らかに悪意を持って飛び出てきたぞ、この毒を仕込んだ爪楊枝。」


勇者「……うん。実は今日の俺はこの仕掛けを利用して魔王を倒そうと思って、一週間前から用意していたんだ」

魔王「……そうか」


勇者「……うん、ゴメン。だからそんなに傷ついた顔しないでくれよ」

魔王「……フ。柄にもなく浮かれていたのだ。勇者がカカオの木の栽培、及びサトウキビの収穫から手作りしたチョコだと聞いてな……」


勇者「いや、誤解するなよ!? 飛び出す毒塗り爪楊枝を仕込んで魔王の世界征服を止めようと目論んだのは事実だけど、手作りしたのも本当だ!! サトウキビなんて、オキナワの畑で盗み立てを俺が握力で握りつぶして搾っんだぞ!? カカオの精製だってそうだ! 遠心分離は黒のストッキングにビニールと一緒に詰めて俺が手ずから振り回した! そりゃあ壮大で夢のある作業だったんだ。魔王にも見せてやりたかったよ……」


魔王「爪楊枝が今な、爪と指の間にクリーンヒットしてな? 気が遠くなりかかってる」

勇者「……ゴメン。俺としては、バレンタインデーのついでに魔王を倒せたら宴会できるなって……」


魔王「……おのれ、この私がこんな所で……、バレンタインチョコごときに倒されるとは……」


部下Aは どくけしをつかった!

魔王の毒状態が回復した!


勇者「……ちっ、惜しい。あとすこしで世界が俺のものになったのに」

部下A「勇者さん、そういう野望は心の中だけで呟いて下さいよ」


勇者「まあな、俺もな、薄給で頑張ってるわけで。よい子の皆、バレンタインおめでとう!」

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