20 魔王城でクリスマスを
王様「おお、勇者よ。死んでしまうとは仕方のないやつじゃな」
姫「そうですよ、勇者。勢いよく魔物に挑んでおいて、死んでしまうとはちょっと・・・ねぇ」
姫2「まったくだぜ、勇者。勇気と無謀をはき違えちゃ、いけないんだ」
姫3「わらわをこうもがっかりさせるとは・・・」
姫4「失望しましたわ」
姫5「・・・・。」
(中略)
姫11「というわけで行きなさい、勇者よ」
兵士「ああっ、勇者さまが城の窓から!?」ぱりーん
兵士2「いくら何でもこの高さから落ちたら死んでしまう!?」ひゅうううう
勇者 は 転移魔法 を つかった!
魔王「あ」
勇者「ぜえ、はあ、どうだ! 王様のところから魔王城最上階まで最短記録! 20分5秒!!」
魔王「城の外壁でロッククライミングしてる馬鹿がいるという報告を受けて見てみたら、大剣担いだ勇者が登ってた」
勇者「ふ・・・っ、途中で待ち受ける魔物もダンジョンもこれですべて無意味!」
魔王「それはともかく。せっかく勇者倒したからみんなでマリ●カートでもやろうってコタツ出してテレビ置いたのに」
勇者「何してんですか魔王さん・・・」
部下A「あー、勇者さんじゃないですか。早かったですねー。アイス食べます? それともお煎餅がいいですか?」
勇者「じゃあアイス。しっかし、いいなー。俺もス●ブラやりたい」
部下A「いいですよー。どうせ側近様はこの間のイベント戦闘でやられて全治三週間ですし」
勇者「あれはさ、完成した勇者の剣を俺が取りに行ったら」
魔王「私がなぜか刀鍛冶のボスマンさん(86)の殺害現場に血まみれで立っていて」
勇者「俺が現行犯で取り押さえようとしたら揉み合いになり」
魔王「ついカッとなって手元にあった大鎌を振り上げたところ」
勇者「俺の盾がそれを受け止め」
魔王「しかたないので火炎魔法を使用」
勇者「地獄の業火に焼かれた俺はそれでも犯人を取り押さえようと立ち向かっていき」
魔王「捕まったら不法滞在がバレるので必死で抵抗」
勇者「手錠をかけようとしたところ、犯人が発砲」
魔王「全弾撃ちつくしてしまい、官憲の手に落ちそうになったところに」
勇者「側近が登場」
部下A「『魔王様はお逃げください! ここはわたくしが!』」
魔王「で、勇者は無残にも側近を全治三週間の大怪我に追いやった」
勇者「俺はやってない!」
部下A「そもそもですねぇ、僕たちが魔界の範囲を拡大しようとしてるのに人間たちが抵抗するからいけないんです!」
魔王「まあまあ、部下A。せっかく入れたお茶が冷めてしまうからそれは後な?」
部下A「だって魔王様、人間のやつらときたら・・・!」
勇者「そういえばもうすぐクリスマスじゃん」
魔王「何だ急に」
勇者「俺さ、町を歩いてたらクリスマスの市が立っててさー」
魔王「おお、例年、人間どもが街路を飾り立てているあれか」
勇者「そうそう。でさ、俺って旅してるからツリー持ってないじゃん?」
魔王「貴様なら持って歩けそうだが・・・」
勇者「まあな。でもかさばるしな」
部下A「勇者さんは木を飾りたいんですか? 変な趣味ですねー」
勇者「そういうもんなの! モミの木を切ってきて部屋に飾るんだよ。蝋燭とか立てて、下にはプレゼントを置いて・・・」
部下A「ぷれ・・・?」
魔王「人間どもの習慣だな。家族や友人に贈り物をするという」
勇者「なんだかストレンジャーな気分」
勇者「まあいいや。というわけで、魔王城のホールに飾ろう」
魔王「ちょっと待て」
勇者「いいアイディアだろ? 樹齢2000年モノとか採ってきても飾れそうだよね!」
魔王「その催しは確か、ある人間の生誕を祝うものだと聞いているが・・・」
勇者「おお、そうだよ! よく知ってるね!」
魔王「人間どもの救い主とやらの生誕など魔王城で祝えるか馬鹿者」
勇者「えー、ケチくさいこと言うなよ。インターナショナルだよ、インターナショナル」
魔王「何でも国際化言えば済むと思うな」
勇者「でっかいツリー見たいー! 俺がこうして旅をしているのも元はといえばお前のせいだ。つまりお前の為だ! お前の為にこうして長い旅をしている俺をたまには労(ねぎら)え!」
魔王「・・・う」
部下A「わぁ、すごいすごい! 僕も見たいです、クリスマスの飾り付け! あっ、料理も頑張っちゃいますね!」
部下B「オレもオレもー!」
部下C「アタシもアタシもーー!!」
魔王「貴様らどっからわいて出た」
*
魔王「というわけで、電飾巻いた魔王城・・・」
勇者「よーし、準備は完了だ。でっかいモミの木を運び込んだぜ」
魔王「まあ、いいか。勇者以外にこの城に出入りする人間なんていないしな」
勇者「じんぐるべる、じんぐるべる、るるーらららー」
部下A「わんこ将軍配下の肉球部隊が、ケーキやご馳走の準備をしてくれていますよ」
勇者「わーいわーい、クリスマスだクリスマス。そうだ魔王、俺のプレゼント見て驚くなよ」
魔王「(・・・あれ?)」
勇者「どうした魔王?」
魔王「あれ? 私も何か用意せねばならんのか?」
勇者「当ったり前じゃん。プレゼント交換ってそういうものだろ」
魔王「う~ん・・・。」
部下A「魔王様が用意するクリスマスプレゼント・・・。興味ありますね」
部下B「うんうん」
勇者「というわけでパーティだ」
魔物たち「「「かんぱーい!!!」」」
勇者「うさぎ跳び競争にレスリング、腕相撲に地雷デスマッチ。クリスマスのイベントは大体網羅したかな」
部下A「僕、人間たちがこんな遊びしてるの見たことないですよ・・・」
部下B「勇者の地元では普通なのかも・・・」
魔王「いや、明らかに偏りが」
勇者「俺の用意したプレゼント開けてみて」
部下A「わぁ。くつしたですよ、靴下」
勇者「それを枕元に置いて寝るとなー、良い子のところにはサンタさんがプレゼントを置いていってくれるんだ」
魔王「ほほう、良い子のところには」←魔王
側近「サンタさんがプレゼントを」←魔物
側近「すばらしいシステムですね、勇者よ」
勇者「だろー?」
魔王「(勇者はどうやら本気で信じているらしい)」
側近「(不憫なんだか幸せなんだか)」
翌朝、勇者の枕元には装備すると呪われる魔剣が置かれていた。
勇者「わぁい、サンタさんからのプレゼントー!! さっそく装備だ!」
勇者 は 呪われてしまった!
勇者「は、はずせない!? この剣、手から外せない!?」
魔王(物陰)「瞬間接着剤ってよく効くな」