表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「ども、魔王です」「こんにちは、勇者です」  作者: 魔王@酒場
新米魔王様は食卓にて待つ。
160/162

★魔王様、リプライをする。

■魔王様、リプライをする。


小柄な魔王はもじもじと言いづらそうに、透明な声を絞り出した。


魔王「…したいのじゃ」

勇者「ん? んん」


魔王「…だから。したいのじゃ」

勇者「あ。あれな? 世界の行く末を決める最後の戦いな? いやぁ、俺もいつかはしたいと思ってる。そうすべきだ。

このままでは人類のためにも魔界のためにもよくない。そうは思ってる。


でもなー。だけど、なー? まだ、早くない? 俺ら出会ってまだ百年くらいじゃん?

世界の行く末を決めるバトルとか、早すぎない?


幼稚園児が老人ホームに入居して隠居しちゃうみたいな感じにならない?

まだこれからおじいちゃんの介護とか、おばあちゃんの介護とか、人生には先にやるべきことがあるんじゃない?」


魔王「介護をか…」

勇者「行く末のないおじいちゃんとおばあちゃんに惜しみない愛情をそそぐ。

ウンチをすればオムツを交換する。お腹が空けば流動食を与える。痰がからめば吸引する。

ウンコを食べれば、口を拭いてあげる」


魔王「ウンコを…」

勇者「ああ。ウンコをおはぎのようにほおばる俺のおばあちゃんを見て、俺は幼心に思った。

あぁ…人間とは、ウンコを食べるために生まれてくるのだ。


大学教授も、政治家も、文豪も、棋聖も。いつかは老い、口にいっぱいの排泄物をほおばり、ニコニコと笑う。

これが人生の意味であったのだ、とーー」


魔王「ちょ、待て。ナミダが…」

勇者「わかっている。受け入れがたい現実だろう。だが、事実だ。認めなければならない。どんなに目をそらそうとも、老いという現実は目の前に迫っていて、君がウンコをほおばる日は、刻一刻と近づいているのだ」


魔王「い、いやじゃぁあああ…」

勇者「で、何だっけ?」


魔王「ああ、うむ。わらわの悩みなど、食されるウンコの前では些末なことに思えて恥ずかしいのじゃが…」

勇者「うんうん。わかる」


魔王「わらわは、至極まっとうに生きてきたつもりじゃ」

勇者「まぁ、公共交通機関にまっとうにお金払って乗る時点でそうだろうね」


魔王「う、うむぅ。それでのう。近年はその、流行っとるじゃろ、あの…」

勇者「誰でも好きなこと書き込める公共掲示板みたいなやつ?」


魔王「! そう、それじゃ。それでのう、はじめは使い方がわからんでのう…。

公共放送のあかうんと? をフォローしてみてのう」

勇者「うんうん。公式マークのついてるアカウントは安心感あるね」


魔王「そしてのう。その。にゅーすの記事の下に、意見を書きこんどるじゃろ…。その」

勇者「あー! あれか! 見当外れな! 何言ってんだオマエっていう!」


魔王「うむ。初めてもくしたおりにはみずからの目を疑った。

公共の場所で、このような迷惑発言がゆるされ得るものなのか、と…」

勇者「なるほど。それをしてみたい…と」


魔王「うむ。誰にも迷惑をかけないのであれば、わらわもあのような行いを試しにしてみたいのじゃ…」

勇者「ワルにあこがれちゃう年頃なんだね! いいねいいね、ぜひやってみよう!」


魔王「うむ!」むふー!


勇者(公式☑)「子どもが生まれました!」

魔王「りぷらい、とはこのフキダシまーくを押すのじゃな。どれどれ…

『素晴らしい出来栄えですね。ぜひ、邪神さまの供物にしたいので譲っていただけますでしょうか。』」


勇者(公式☑)「お菓子を焼きました!」

魔王「CO2排出対策はしていますか? 車でスーパーに行くとガソリンを消費し、二酸化炭素が排出されます。

あなたの人生にはもっと大切なことがあるはずです」


勇者(公式☑)「仔猫を拾いました! かわいい~!」

魔王「仔猫は取得物なので、今すぐ警察に届けるべきです。取得物横領に当たります」


勇者「わォ!」

魔王「ど、どうであったかのう…? 初めての りぷらいで緊張したぞ…」


勇者「いいねいいね! 朝からこんなん見たらクッソテンション下がる。

魔王「上出来であったか?! ウレしいのう…! この調子で、朝のニュースに自分の見解を述べてゆけばよいのじゃな、SNSとは。

いっぱしの専門家の気持ちになれてなかなかに満足感があるのう♪」


勇者「…あの。ほどほどにね…?」

魔王「? 任せるがよい! 魔界の主として、存分に意見を述べてくれよう!」


勇者「あぁああああ…、魔王を倒さなきゃ世界救えないかんじ…? 俺、ラストバトルのルート入っちゃった…?」


END

Thanks for your Read !

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ