15 部下Bと魔王と、代理勇者
魔王「ども、魔王です」
部下A「いぇーい、部下Aでっす!」
魔王「ど、どうした部下A、いつもと違うな?」
部下A「いぇーい、今日は勇者さんの代理ですからね! がんばりますよーっ!」
魔王「・・・確かにヤツはいつも、原因不明のハイテンションだが。」
部下A「でしょでしょ! いぇー・・・い」
魔王「あまり無理をするな。お前が倒れたら、誰がぬか漬けの世話をするのだ」
部下A「ぬか床(どこ)・・・。確かに大事ですけど、魔王軍にとっての僕って一体・・・?」
魔王「あのな、組織というものは、人員の代えの利くようにできているものなのだ。天才と凡人が500人集まって皆で平均的な人間になるのが組織というものだ」
部下A「さっすが魔王様! ためになりますっ!」
魔王「その持ち上げ癖やめれ。寒気がする」
部下A「今日は勇者さんの代理ですからねっ! ええと、あとすることは、聖剣で魔王様を撲殺するとかでしょうか・・・」 モジモジ
魔王「やめれ。主君を撲殺とかどこの明智光秀だ」
部下A「明智様! いいですねぇ、魔族の鑑ですよ。人間にしてはやります。主君を焼き討ち! 倒せそうだから倒しちゃった~、キャハッ☆」
魔王「歴史ファンに怒られるぞ・・・。というか、だから無理をして妙な陽気さで喋るな」
部下A「魔王様は僕がお嫌いなんですねっ! 頑張って勇者さんみたくアホになろうと努力してたのに・・・!」
魔王「・・・そのままでいいのだ。普通に喋れ」
部下A「仕方ありませんね。僕では勇者様の代わりにはなれなかったようです・・・部下B!」
部下B「いやっほー! 部下Bだゼ☆」
魔王「お前もか?!」
部下B「きょうこそおまえをたおすー! まおうかくごーー!!」 棒読み
魔王「うわっ、巨大金槌で殴りかかるな?! 危険極まりない」
部下B「うりゃぁあああ!!!」
どごーん! 魔王城の床に穴が開く。
部下A(以下、石像)「あーあー、壊しちゃって。誰が修理を手配すると思っているんですか」
部下B(以下、獣人)「側近様だろ。それよりどう? 俺、勇者っぽかった??」
石像(部下A)「・・・あー、はいはい。激似でしたよー。明日から勇者になれますね」
獣人(部下B)「わーい。俺ゆうしゃー! よっしゃー、着替えて王様のとこ行かないと」
石像「ノリノリじゃないですか?! 僕だって一回くらい主役をやってみたかった!?」
獣人「まあ、誰でもそうだよな。よし、俺が勇者やるから、お前魔王な」
石像「なんでですかー! 僕も勇者がやりたい! 魔王様なんて見飽きてるんですよっ!! 珍しくも何ともない! ありふれているんです!」
獣人「俺今、すごい暴言を聞いた気がする・・・」
*
勇者「・・・げほっ。風邪から立ち直った勇者です」
魔王「・・・部下にけなされてる魔王です」
部下A「石像 男の娘こと部下Aです」
部下B「獣人こと部下Bです」
側近「・・・ごほっ。風邪から回復した側近です」
魔王「・・・いたのか、側近」
側近「さっきまで書類に埋もれて見えなかったんですね・・・ふふふ」
部下A「側近様も風邪だったんですか」
部下B「じゃあ俺、王様のところ行ってくるわ」
魔王「・・・旅立つ気満々だな」
勇者「うむ」
*
王様「よく来たな部下Bよ。つらい旅になることはすでに決定済みだが、これも皆のためなのだ。最小の犠牲による最大利益の追求! 最小労力での幸福度の増大! ぶっちゃけ勇者一人に苦労させて、ワシらは果報を寝て待つ! これぞ我が最大の秘儀ーー! 『お前頑張れ』!!」
部下B「・・・な に こ れ」
王様「さあ、最強装備4点セットです。今なら やくそうも付いてきます。このお値段でご提供」
部下B「おお、安い!」
王様「お電話はコチラ!」
部下B「今すぐ電話しないと!」
王様「じゃあ頑張って」
部下B「あっ・・・王様?! おうさまーー!!」
部下B「城から追い出された部下B--いや、今や勇者B! さあ、頑張って魔王様を倒すぞーー!!」
魔王「コレを城で待ってなきゃならんのか・・・俺は」
勇者「ばんがれー」
*
勇者B「あ・・・っ、あれ? このダンジョン進めない・・・」
勇者「無限ループになってるんだよ。始めの宝箱あったろ? 宝箱を無視して左に曲がるんだ」
勇者B「へー、さすが勇者。なるほどなるほど」
*
勇者B「ぎゃー! 俺のともだちが俺に噛み付いて離してくれない?! 勇者なんとかしてーー!」
勇者「仕方ない。ズバッ」
勇者B「ああっ、俺のともだちが物言わぬ屍に?! 勇者ひどい! お前は何てひどいヤツなんだ!」
勇者「何だこの不条理・・・。」
勇者「いいか、部下B。勇者たるもの、生半可な覚悟で臨むんじゃない」
勇者B「やだよめんどくさい」
勇者「ゆうしゃなんてやめちまえーー!!!」
勇者B「俺はラクしてヒーローになりたいんだ! 分かるだろ、この熱いパトス!」
勇者「ただのぐうたらじゃないか」
勇者B「うん。楽して強くなりたいんだ!」
勇者「胸を張るな?!」
*
勇者B「ぜぇはぁ。・・・よし。何とか魔王城の最深部までたどり着いたぞ・・・。ていうかちょっと待て。魔王城の最深部ってどこ? 公衆浴場? それとも映画館? 屋上のビアガーデン??」
勇者「魔王城・・・どこのアミューズメント施設だよ・・・。そんなもんまであったのか」
勇者B「今度、巨大観覧車を作る予定なんだぜ。勇者も遊びに来るといい」
勇者「すでに連日来てるけどな・・・」
*
魔王「あー、よく来たね、まあ座れ。茶でも飲む?」
勇者B「それが勇者に向かって言う台詞かーー!!」
魔王「ふははは、よくぞここまでたどり着いたな、褒めてやろう。(呪文詠唱中)」← 超早口
勇者B「魔王様魔王様! マジ怖ぇっす! 呪文詠唱しつつ喋らないでください?!」
勇者B に 9817のダメージ!
勇者B を 倒した! まおう は レベルアップした!
魔王「いやいやいや・・・、魔王はレベルアップなぞ せん」
勇者「あーもう、ここまで連れてくるのとかめっちゃ疲れた」
魔王「乙」
勇者「おつー」
登場人物紹介その2:
No.2=側近
普段は冷酷非情な、魔王軍のNo.2。
悪だくみが得意。
王様
白いひげと赤い服、頭上に輝くのはアルミニウム製の王冠。
娘を溺愛している。
姫様
王様の娘。ファンタジーRPGでは、よくさらわれたり、あるいは仲間になったりする。