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「ども、魔王です」「こんにちは、勇者です」  作者: 魔王@酒場
新米魔王様は食卓にて待つ。
148/162

側近、たおれる。/実家の草取りをする勇者

■ 側近、倒れる


側近「ぐえっほ、ぐえっほっ!! ゲホォオオオッ!!!

ーーはぁはぁ、おはよう、ございます、魔王様、

今日もよい朝で…ぐぇっほ!!」


魔王「どうしたのだ、側近。尋常ではない咳き込み方をして…」


側近「ぐぇっほ、ごうぇッホ!!

実は先週、人間界への営業で、接待を伴う飲食店に同行したのでごぇッッホ!!」


側近「何日か前から、なんだか息苦しくーーこのような咳も止まらずーー」


魔王「衛生兵! 衛生へーい!!」

魔物たち「はッ! ここに!」


魔王「側近よ、わかっているな?」

側近「…はい。」

側近「『我が国に、感染者は存在しない。』--こほっ」


魔王「うむ。なぜならーー」



勇者「(ひょこっ)消されたから…なの? うわぁ、闇すぎィ、ちょっと引くわー」

側近「--はッ」

勇者「みーちゃった! みーちゃった! 人間界のみなさ~ん!

魔界で感染者第一号が出てますよー!」タタタッ


側近「…くっ、グェッホぐぇっほ!

ーー勇者を、止めなくてはーー!」


魔王「よいのだ、側近。勇者は我が追おう」ソッ

側近「--ハッ! これは! 魔界に一台しかない、魔導呼吸器…!

魔王さま…?!」


魔王「人間どもの愚行にも、ほとほと愛想が尽きていた。よい頃合だ。


側近よ。いいな、必ず、生きて還るのだ。そのあかつきにはーー」



側近「(にこり)玉座をわたくしにくださるのですね?」

魔王「えー? ああ、うん。そのうち気が向いたら考えとくカモー」しらっ


000


勇者「みーちゃった! きいちゃった~!

みんなに言いふらしてやろーっと♪


まずはSNSかな。側近のアカウントを作ってと」


部下A「そこまでです! 勇者さん!

そんなことで魔界を思い通りにできると思ったら、

大間違いですよ!」


勇者「…。なんだよー。驚かせるなよ、部下Aじゃーん」ニヤニヤ

勇者「俺に勝てるとか、思っちゃってるカンジ? ん?」


部下A は、なかまをよんだ!

まおう が、あらわれた! ジャァーン!


勇者「ゲッ! 魔王…!」

魔王「勇者よ…」


勇者「なっ、なんだよ…!」

魔王「このとおりだ。我らのために、人間界の治療薬を分けてくれーー」


勇者「!」

勇者「…えー?

えー? どうしよっかなー?」チラッ


魔王「(ドゲザァアア)」

部下A「ま、魔王様! ぼくらのために、そこまでしなくても…!」


魔王「よいのだ」

部下A「でも…!!」


勇者「…ちっ。わぁったよ。

ヘッドにそこまでされたんじゃあ、な。


ちょっくら、施療院に忍び込んでたんまりもらってくらぁ」ザッザッ


ゆうしゃ は、転移魔法をとなえた!


部下A「忍び込…。勇者さんって、何者なんでしょうねー…」

魔王「フッ。わからぬ」


>>>


ここから下は

「のじゃ」魔王。通称『東(明け)の魔王』

ときどき登場するかもしれません。



■ 実家の草取りをする勇者


みーん、みーん、しゃわしゃわしゃわしゃわ…

ツクツクホーシ! つくつくほーし! カナカナカナ…。


勇者「ふー。あっちー。日差しはないけど、湿度がな…。

今年はみんみん蝉とアブラ蝉とツクツクホーシとヒグラシが一緒に鳴いている…。世も末だな…」


女騎士「ふふっ。勇者は小さい頃から変わらないな…」

勇者「なっ、なんだよ…」


女騎士「ほら、その癖…。変わっていないな」くすくす

勇者「そ、そんなことないし! 剣の扱いにかけてはみんな褒めてくれるんだぞ!」


勇者母「ゆうしゃちゃーん! 騎士ちゃんも~。

冷たいお飲み物が用意できたわよ~♪ 区切りのよいところでいらっしゃいな~。

わらび餅もあるわよ~」


勇者「わらび餅!」カッ!!

女騎士「ほぉう…? 母君は、私の剣さばきを甘く見てらっしゃるようだ…」


勇者「?! ま、まさか…! おいやめろ! 雑草はな、根っこを残すとそこからまた生えてくるんだぞ! 脱毛と一緒だ!

根っこをとらなければ…!」


女騎士「はぁあああああッ!!!」しゃきーん!


勇者「…あーあ。上だけ刈っちまった…。また生えてくるぞー。俺、しーらないっと」


女騎士「ふぅ…。すっきりした! これでこの庭からは、蚊もいずれいなくなるだろう。いや、なに。礼には及ばぬ。

…そう。母君の お手製わらび餅をどんぶりで山盛り食べられさえすれば…、私は他に何も望まない」


勇者「山盛りって時点でめっちゃ望んでるよな?」


勇者母「もちろん、たくさんあるわよ♪ 好きなだけ食べて頂戴」


勇者「わー…」


そのしゅんかん!

めにもとまらぬはやさで、おんなきしのけん が繰り出された!


よく見ると、切っ先にわらび餅が突き刺されている! 神業だ!


女騎士「…ふむ。モグモグ」


勇者「『もぐもぐ』っじゃねーよ! あぶねーだろ!

なんでお前そう気軽に抜刀すんの?! 銃刀法とか知らねーわけ?」


女騎士「よい味…そして歯ざわりだ。夏の清流を思わせる…。

このためならば、命も惜しくはない」きりっ


勇者「わらび餅より他に命かける大事なとこあるだろ!」

女騎士「そして、抹茶のこの芳醇な味わい…。今年の茶は、この涼しさによく合う」ずず…っ


勇者母「あらぁ~♪ 嬉しいわぁ、女騎士ちゃんったら。またいつでも来てね。ご馳走するわ」

女騎士「かたじけない。痛み入る」(*_ _)ぺこり


勇者母「ふふふ♪」

女騎士「モグモグ」


勇者「なんで俺、置いてきぼりなの! なんでかーちゃんと幼馴染の間に入れない感じなのこれ?!」


みーん、みんみんみーん。しゃわしゃわしゃわ…。

つくつくほーし。


ある、夏のきおく。



勇者「えー。と、いうわけで。俺は実家の家の周りの草取りをしてまいりました」

魔王(東)「ほう。感心、感心。実家の手入れは肝要よな。

いざとなれば空き家問題ともなりかねぬ」


勇者「…えっ。知らない間に白骨化とかしちゃってるカンジ…?」

部下B(獣人)「ありえるな」


勇者「おのれ! ふるさと納税で見守ってもらわないと! 確定申告で税控除が受けられる! 今申し込むぞ母ちゃん…!!」

魔王「災害地域の支援にも、ふるさと納税は有効じゃな」


勇者「…。」

魔王「勇者?」


勇者「カネがない…。新しい装備とか、高価な回復薬とかしこたま買い込んだら最終決戦前にカネがない…!」ガクゥ

魔王「はっ。な、なぜこっちを見るんじゃ勇者…! ワシを倒したところでカネは手に入らぬぞ!

 すべて証券口座に預けておるゆえ、な!!」


勇者「ではクレジットカードの情報をハッキングして…」

魔王「せちがらいの…」


>>>

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