側近、たおれる。/実家の草取りをする勇者
■ 側近、倒れる
側近「ぐえっほ、ぐえっほっ!! ゲホォオオオッ!!!
ーーはぁはぁ、おはよう、ございます、魔王様、
今日もよい朝で…ぐぇっほ!!」
魔王「どうしたのだ、側近。尋常ではない咳き込み方をして…」
側近「ぐぇっほ、ごうぇッホ!!
実は先週、人間界への営業で、接待を伴う飲食店に同行したのでごぇッッホ!!」
側近「何日か前から、なんだか息苦しくーーこのような咳も止まらずーー」
魔王「衛生兵! 衛生へーい!!」
魔物たち「はッ! ここに!」
魔王「側近よ、わかっているな?」
側近「…はい。」
側近「『我が国に、感染者は存在しない。』--こほっ」
魔王「うむ。なぜならーー」
勇者「(ひょこっ)消されたから…なの? うわぁ、闇すぎィ、ちょっと引くわー」
側近「--はッ」
勇者「みーちゃった! みーちゃった! 人間界のみなさ~ん!
魔界で感染者第一号が出てますよー!」タタタッ
側近「…くっ、グェッホぐぇっほ!
ーー勇者を、止めなくてはーー!」
魔王「よいのだ、側近。勇者は我が追おう」ソッ
側近「--ハッ! これは! 魔界に一台しかない、魔導呼吸器…!
魔王さま…?!」
魔王「人間どもの愚行にも、ほとほと愛想が尽きていた。よい頃合だ。
側近よ。いいな、必ず、生きて還るのだ。そのあかつきにはーー」
側近「(にこり)玉座をわたくしにくださるのですね?」
魔王「えー? ああ、うん。そのうち気が向いたら考えとくカモー」しらっ
000
勇者「みーちゃった! きいちゃった~!
みんなに言いふらしてやろーっと♪
まずはSNSかな。側近のアカウントを作ってと」
部下A「そこまでです! 勇者さん!
そんなことで魔界を思い通りにできると思ったら、
大間違いですよ!」
勇者「…。なんだよー。驚かせるなよ、部下Aじゃーん」ニヤニヤ
勇者「俺に勝てるとか、思っちゃってるカンジ? ん?」
部下A は、なかまをよんだ!
まおう が、あらわれた! ジャァーン!
勇者「ゲッ! 魔王…!」
魔王「勇者よ…」
勇者「なっ、なんだよ…!」
魔王「このとおりだ。我らのために、人間界の治療薬を分けてくれーー」
勇者「!」
勇者「…えー?
えー? どうしよっかなー?」チラッ
魔王「(ドゲザァアア)」
部下A「ま、魔王様! ぼくらのために、そこまでしなくても…!」
魔王「よいのだ」
部下A「でも…!!」
勇者「…ちっ。わぁったよ。
頭にそこまでされたんじゃあ、な。
ちょっくら、施療院に忍び込んでたんまりもらってくらぁ」ザッザッ
ゆうしゃ は、転移魔法をとなえた!
部下A「忍び込…。勇者さんって、何者なんでしょうねー…」
魔王「フッ。わからぬ」
>>>
ここから下は
「のじゃ」魔王。通称『東(明け)の魔王』
ときどき登場するかもしれません。
■ 実家の草取りをする勇者
みーん、みーん、しゃわしゃわしゃわしゃわ…
ツクツクホーシ! つくつくほーし! カナカナカナ…。
勇者「ふー。あっちー。日差しはないけど、湿度がな…。
今年はみんみん蝉とアブラ蝉とツクツクホーシとヒグラシが一緒に鳴いている…。世も末だな…」
女騎士「ふふっ。勇者は小さい頃から変わらないな…」
勇者「なっ、なんだよ…」
女騎士「ほら、その癖…。変わっていないな」くすくす
勇者「そ、そんなことないし! 剣の扱いにかけてはみんな褒めてくれるんだぞ!」
勇者母「ゆうしゃちゃーん! 騎士ちゃんも~。
冷たいお飲み物が用意できたわよ~♪ 区切りのよいところでいらっしゃいな~。
わらび餅もあるわよ~」
勇者「わらび餅!」カッ!!
女騎士「ほぉう…? 母君は、私の剣さばきを甘く見てらっしゃるようだ…」
勇者「?! ま、まさか…! おいやめろ! 雑草はな、根っこを残すとそこからまた生えてくるんだぞ! 脱毛と一緒だ!
根っこをとらなければ…!」
女騎士「はぁあああああッ!!!」しゃきーん!
勇者「…あーあ。上だけ刈っちまった…。また生えてくるぞー。俺、しーらないっと」
女騎士「ふぅ…。すっきりした! これでこの庭からは、蚊もいずれいなくなるだろう。いや、なに。礼には及ばぬ。
…そう。母君の お手製わらび餅をどんぶりで山盛り食べられさえすれば…、私は他に何も望まない」
勇者「山盛りって時点でめっちゃ望んでるよな?」
勇者母「もちろん、たくさんあるわよ♪ 好きなだけ食べて頂戴」
勇者「わー…」
そのしゅんかん!
めにもとまらぬはやさで、おんなきしのけん が繰り出された!
よく見ると、切っ先にわらび餅が突き刺されている! 神業だ!
女騎士「…ふむ。モグモグ」
勇者「『もぐもぐ』っじゃねーよ! あぶねーだろ!
なんでお前そう気軽に抜刀すんの?! 銃刀法とか知らねーわけ?」
女騎士「よい味…そして歯ざわりだ。夏の清流を思わせる…。
このためならば、命も惜しくはない」きりっ
勇者「わらび餅より他に命かける大事なとこあるだろ!」
女騎士「そして、抹茶のこの芳醇な味わい…。今年の茶は、この涼しさによく合う」ずず…っ
勇者母「あらぁ~♪ 嬉しいわぁ、女騎士ちゃんったら。またいつでも来てね。ご馳走するわ」
女騎士「かたじけない。痛み入る」(*_ _)ぺこり
勇者母「ふふふ♪」
女騎士「モグモグ」
勇者「なんで俺、置いてきぼりなの! なんでかーちゃんと幼馴染の間に入れない感じなのこれ?!」
みーん、みんみんみーん。しゃわしゃわしゃわ…。
つくつくほーし。
ある、夏のきおく。
■
勇者「えー。と、いうわけで。俺は実家の家の周りの草取りをしてまいりました」
魔王(東)「ほう。感心、感心。実家の手入れは肝要よな。
いざとなれば空き家問題ともなりかねぬ」
勇者「…えっ。知らない間に白骨化とかしちゃってるカンジ…?」
部下B(獣人)「ありえるな」
勇者「おのれ! ふるさと納税で見守ってもらわないと! 確定申告で税控除が受けられる! 今申し込むぞ母ちゃん…!!」
魔王「災害地域の支援にも、ふるさと納税は有効じゃな」
勇者「…。」
魔王「勇者?」
勇者「カネがない…。新しい装備とか、高価な回復薬とかしこたま買い込んだら最終決戦前にカネがない…!」ガクゥ
魔王「はっ。な、なぜこっちを見るんじゃ勇者…! ワシを倒したところでカネは手に入らぬぞ!
すべて証券口座に預けておるゆえ、な!!」
勇者「ではクレジットカードの情報をハッキングして…」
魔王「せちがらいの…」
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