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「ども、魔王です」「こんにちは、勇者です」  作者: 魔王@酒場
魔王様は玉座にて待つ。宅配便とかを。
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魔王様、リモートワークする

■ 魔王様、リモートワークする


その日も地下世界ーー魔界は、暗雲たる雲に包まれており、魔王の居城には、重苦しいムードが垂れ込めていた。


魔王「勇者よーー。貴様、よもや外出してはいまいな?」


魔王の低い問いかけに、勇者は明るく応じる。

勇者「あ~? してない、してない。」


ズズズ…ッ


トロピカル・ジュースをすする音が、画面の向こうから聞こえてくる。

空色のソーダには、スーパーマーケットでひとつ100ゴールドのアイスが浮かび、

赤と白の斜めの縞模様ストライプの紙ストローが抜群に”え”ていた。


勇者はビーチチェアに寝そべり、サングラスをかけ、アロハシャツである。


勇者「ほら。なんつーの? キブンだけでもね。真夏の気分でリモートワークしてるわけ」

魔王「ほう…?」


魔王のこめかみに、青筋が浮かぶ。


勇者「でもね~。冒険の拠点にしてたネットカフェが閉められちゃってね~。

今これ、俺、実家なの」


魔王「帰省したのか?!!」

ガタッ

魔王は玉座から立ち上がると、パソコンに詰め寄った。


魔王「貴ッ様ぁ~!! おじいちゃんおばあちゃんが感染症にかかったら

もだえ苦しんで死んでしまうということがわからんのか?!

病死には蘇生の魔法も効かんのだぞ?!」


勇者「へ~…。そーなの」ズズ…ッ


魔王「勇者よ…。貴様には事態の深刻さがわかっておらんようだな」

勇者「うん。説明して」


魔王「よかろう…!!」


***


魔王「よいか、勇者よ。

まず、外出時にはフルフェイスヘルメットをかぶるのだ。

布マスクなどでは、心もとない」


勇者「ふむ…。防具屋のカウンターの後ろに飾ってある一番高いヤツだな…。闇属性耐性もついてたほうがいい?」


魔王「無論だ…! ヤツらをあなどると、三日以内にあの世行きだぞ…!」

勇者「鎧は何がいいかな? すばやさ重視? それとも、フル・アーマーでがっちり固めたほうがいい?」


魔王「ツルツルの表面に付着したヤツらは、72時間、感染力を維持するというデーターがある。

布・革装備のほうがよいであろう」

勇者「メモメモ…」


魔王「そして足元だ。室内と屋外では、ブーツを履き替えるのがよいであろう。」

勇者「足元はビーチサンダルで…と」メモメモ


勇者「となると、こんな感じか。

あとは? 奴らを撲滅するには何をしたらいい?」


魔王「家に居ろ」

勇者「…は?」


魔王「いいか?! おうちから一歩たりとて外にでるな! 一歩もだ!」


勇者「ごみ捨ては…?」

魔王「ごみ出しのみ、外出が許される。盛大にドレスアップするといい」


勇者「ごみ捨てにはドレスアップ…と」


勇者「ゴハンは? 買いに行ってもいいの?」

魔王「無論だ。スーパーマーケット・コンビニなどへの食糧の買い出しは

屈強な者を一名選出し、完全装備で臨め」


勇者「フルフェイス・マスクで」

魔王「布マスクは、煮沸消毒するのだぞ…!」


勇者「よっしゃ任せろー!」

(2020年4月頃ってこんな空気でしたよね!)



■ 某島国における、2020年7月1日という日


部下A「7月1日は半夏生はんげしょうですよ! お野菜を食べちゃいけない日です!」もっしゃもっしゃ

勇者「終わってしまった…orz」

魔王「終わった…」


勇者「レジ袋ゼロ円が…」

魔王「キャッシュレス還元が…」

側近「一年の半分が…!!」


勇者「プラストローを紙に替えるのもレジ袋を有料にするのも欺瞞だよ…。


本当に海洋のマイクロプラスチックを減らしたいなら、ペットボトルを全廃すればいい…。

みんなで重い瓶を持ち歩く暮らしに戻ればいい…。

酒屋さんに持ち込んでリサイクルとかすればいい…。

エコバッグは環境に優しいかもしれないが、衛生的か?


毎日、環境に優しい手作りせっけんで洗濯板で手洗いするの? 誰が? 誰がするの?

誰がその労力を担うの? リビングに脱いだまま丸められてる靴下とか毎日洗濯する人がもっとがんばるの?」


魔王「このコロナ不況の中、実質の増税! MMT理論はどうなったんだ?

金兌換性が世界恐慌を起こしたのだ…。俺様は輪転機を回すぞ…!!

真水100兆ゴールドだ…!! 俺様が世界征服したあかつきにはベーシックインカムを導入し、

無料のコメとアマ〇ンプライムを全臣民しんみんに保証する…!!」


側近「元旦に立てた、もやしを魔界全体で120%増産する計画がまだ達成できていません…。

もやしをインフレさせ、よりもやしの消費量を高める計画が…!」

部下A「側近様、落ち着いてください。インフレさせたいのかデフレさせたいのか、まずはハッキリさせましょう…!」


側近「それが、両方なのですよ。特別なもやしをブランド化させ価値を高める一方、

安値で売るもやしは大量生産し、庶民の日々の暮らしに浸透させます。

つまり、もやしはインフレし価値が低減する一方で、増大していきます。


人間どもは、もやしなしでは生きられなくなり、

もやしを掌握するものが人心を支配し、権力を得る…!

もやし生産者が、権力ピラミッドの頂点に君臨する日が必ず来ます。


もやしの生産権を持つものはよりもやしを手に入れ、そして手に入れたもやしがさらなるもやしを生む…!

もやし格差が複利効果により増大し、覇権を握る。


もやし税を導入し、もやしの消費に歯止めをかける一方で、

もやしを無限に生産し…、もやしもやし」


王国の姫「尊い…推し、尊い…。わたくしが玉座についたあかつきには、推しに毎年、予算の100%を貢ぎますわ…!! 尊い…」


部下A「…なるほど。精神的な充足にもやしを消費するから、生活必需品の値段はなかなか上がらないんですね! ぼくも、押し入れで もやしを育ててみようっと♪」


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