14 王様と側近と、月見団子
魔王の部下A(ガーゴイル)「部下Aです」
魔王の部下B|(獣人)「部下Bだ」
勇者の仲間・僧侶「そーりょですぅ」
勇者の仲間・盗賊「盗賊です・・・えっ、何? 今回このメンバーで?!」
僧侶「無理無茶無謀は百も承知! 勇者がいなくても、盗賊が魔王を倒してくれますー!!!」
盗賊「な、なんだってーー??!」
部下A「・・・あ。呼んでいたゲストが到着したみたいですね」
轟音とともにヘリが魔王城のヘリポートに着地し、中からサングラスをかけて豪華な服を着た男が出てくる。
王様「どうも、王様です」 サングラスを外す
部下B・僧侶・盗賊「自分で王様って言ったーー?!」
魔王の側近(夢魔)「・・・不本意だが側近だ」 書類を抱えている
部下A「側近様はすっごく忙しいので、連れてくるのが大変でした」
部下A「そしてそして~? 本日のメイン・ディッシュ! 月見団子!!」 ドン!
部下B「おー・・・」
盗賊「月見・・・」
厚い雲に覆われた空が、彼らの頭上に広がっていた。
盗賊「・・・まっ、いいか!」
部下B「だよなー! 団子があれば月はいらないっつーか」
盗賊「そうそう。偉い人たちにはそれが分からんのですよ」
僧侶「・・・。部下さんと盗賊が意気投合しています・・・」
国王「これくらいでいい? 肉」
側近「もっとモヤシを入れましょう、モヤシを。モヤシはヘルシーなんです」どばーっ
盗賊「なんで月見に・・・鍋」
部下B「まあ、食えりゃ何でもいいけど」
僧侶「王様と側近さんが意気投合しています・・・」
*
魔王「・・・えー、前々回、男か女か分からんと言われた魔王です」
勇者「どっちでもないんだよな? クリオネやミドリムシと一緒だよな?」
魔王「ところで、何で今日、そんなに嬉しそうなんだ・・・?」
勇者「今日は月見だよ十五夜! テンション上がるだろ、普通」
魔王「何で月見でテンション上げねばならんのだ。狼男じゃあるまいし」
勇者「わおーーん。変身するぞー」
魔王「・・・ほう?」
勇者「・・・へ、変身するぞー、わおーん」
魔王「わくわく。」 キタイニ ミチタ メ
勇者「・・・ごめんなさい嘘ついてましたーー!!」
*
魔王「ともかく、ラブコメ路線など断じて否!」
勇者「だんじていな!」
魔王「愛など不要!」
勇者「いや・・・待て、魔王」
魔王「どうした勇者」
勇者「愛って・・・大事だと思わないか?」
魔王「思わん」 ばっさり
勇者「・・・くそう、魔王め。俺がラブコメ路線に持っていこうとするのを阻止しやがった!」
魔王「フン、くだらん。側近」
側近「ふゃふゃいはひ」 口いっぱいにモヤシ 手に箸 もう片手に取り皿。
魔王「・・・貴様、私に隠れてーー鍋か!!」 カッ
側近「鍋です! あなたにこの鍋を止める術などありはしない! さあ、ひざまづき我が鍋の前に絶望しなさい! オーッホッホ!!」
部下A「側近様、落ち着いてください。鍋なんだからみんなで食べられますよ・・・」
側近「・・・いえ、この鍋のモヤシは塵ひとつに至るまでわたくしのもの・・・! 誰にも渡しはしません・・・ッ」
魔王「ほぉう? いい度胸だ。鍋になど興味はないが、貴様の本気には前々から興味があったのだ」
側近「望むところ・・・ッ」
王様「まあまあ、二人とも」
雷撃魔法と火炎魔術、その他のぶつかり合いに巻き込まれ、灰になる王様
王様「ぷしゅ~~」
*
勇者「国王といえど、非戦闘員だからな。火炎魔法とロケットランチャーの直撃には耐えられなかったようだ」
僧侶「なんでファンタジー世界にランチャーとかあるんですか」
盗賊「異世界からもたらされた超魔法技術だ。何でも兵器産業というらしい」
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側近「フフフ・・・そう、いつだってあなたたちは・・・モヤシを馬鹿にして・・・! 許しません!!」
魔王「モヤシなど、あってもなくても同じではないか。側近、お前の言うことは理解できんな」
側近「理解など不要! 排除あるのみ!!」
氷結魔法とグレネードが激突し、防御魔法と肉弾攻撃がぶつかり合う。
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勇者「おお、美味いな、月見団子」
僧侶「えへへ~。勇者のために、腕によりをかけたんですよ!」
僧侶「特にぃ、材料のマンドラゴラを引き抜くのには犬を6匹も犠牲にしちゃって・・・。あれはちょっと勿体無かったなー」
勇者「い、いぬ?」
僧侶「あれ、知らないんですか勇者。マンドラゴラは引き抜かれる時に死の叫び声を上げるんです。だから、犬に紐をつけて引っ張らせたんですよ」
勇者「・・・ごふっ」 マンドラゴラは人体に有害な毒草です。
僧侶「勇者?! 勇者ーーーー!!!」
盗賊「そうして、月見の夜は過ぎていった。魔王城の一画が、魔力の負荷に耐え切れずに崩壊する。俺たちはその崩落に巻き込まれーー意識を失った。」