表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「ども、魔王です」「こんにちは、勇者です」  作者: 魔王@酒場
魔王様は玉座にて待つ。宅配便とかを。
135/162

魔王様、片づける

魔王「よし、気に入った。店内のもの全部もらおうか」マントばさぁ!


勇者「ちょ?! 待てまてまて!! そんな買い方するから城の中がモノだらけになるんだよ!」


魔王「む? 勇者よ、何か言い遺すことがあるようだな…!」

勇者「あるよ! 大アリだよ! いいか魔王! 城の中の状況を見ろ…!」


魔王城 ごちゃあ


魔王「ふむ…。小鳥がさえずり、小川のせせらぎが心地よい。木の葉のざわめきが耳をくすぐる…」フフ

勇者「現実逃避すな! 現実を見ろ! 逃げちゃダメ―!」


魔王様の汚部屋「ヨッ!」


魔王「とてもよくモノが詰め込まれていると我ながら感心する。自分の才能が我ながら恐ろしい…」フフ…

勇者「ただモノがごっちゃごちゃに詰まってるだけじゃねーか! どうすんのコレ読み終えた週刊漫画雑誌天井まで積み上げちゃって!

 どうせ後でコミックスも中古本店から脅し取ってくるんだろ!」

魔王「むぅ…」


勇者「あのな。正直に言うよ」

魔王「うむ」


勇者「この部屋、呼吸する隙間もない」魔王「いいやそれは事実ではない! 酸素分子が通る隙間くらいある!!」


勇者「いいや、ないね! この部屋は半透膜だ! 漫画やゲームが入る隙間はある。でも、向こう側からは決して出てこないーー魔窟だ」


魔王「いいぞ! 我にふさわしい!」ニヤリ!


勇者「いいやふさわしくない! いいか、俺たち冒険者はな! お前が! こんな!」ビシ!


勇者「インテリア雑誌に出てくるみたいなキレイで片付いた城に住んでると思ってる!

 それを目指して世界中から旅してくるんだよ!


 五年や十年じゃない。中には、二十年三十年かけて旅をしてくる冒険者もいる。それがどうだ?! お前を討伐してこの部屋を見る!

 その瞬間、どんな気持ちを味わうと思う?!」


魔王「『さすが魔王だ。世界中の財宝を集めたのだな』って…」


勇者「漫画とアニメDVDとゲームソフトじゃねーか!!」だんっ


魔王「極東のちっぽけな神秘の島国が世界に誇る文化! 芸術であろうが!! それを貴様、否定するとは…!!」わなわな


勇者「ちったあ片付けろってんの!!」


***


美少女「はじめまして、ごんまりです」ちんまり

勇者「ほら! 今日はお前のために片付けの先生を連れてきたぞ!」

美少女→先生「こんにちは~」にこにこ


魔王「え? ドコ?」キョロキョロ

先生「ココ! ココですよ~!」ピョンピョン


魔王「あ、いた…。なんだ。世界的に有名な片付けインストラクターだっていうから、いかつい大男なのかと思っていたぞ。ふん」

先生「ご期待に沿えなくてすみません…」シュン


勇者「ごんどうまりあ先生だ」

先生「いいですか!? まず片付けに大事なのは、あなたがその部屋でどんな暮らしをしたいかを思い描くことです! 魔王さんは、このお城でどんな暮らしがしたいですか?」ニコニコ


魔王「え…。うむ、そうだな。日がな一日、玉座に座って葉巻をくゆらせてワインを傾けながら黒猫を膝に置いて勇者を待ち続けたり、

邪悪な祭壇で、世界を滅ぼすための生贄をささげるなど、人間どもを悩ませる有意義で生産的な活動をしたいと思う」


先生「なるほど~。では、その暮らしを実現できるようにがんばっていきましょう!」グッ

先生「まずは~。お城の中のものを外にみんな並べてみましょう~」


勇者「エ…。みんな?」

先生「ええ。みんなです」ニコニコ


魔物たち総出で、魔王様の私物を城の前の毒の沼を埋め立て(土は、魔の山を切り崩して運んだ)、並べる作業が始まった。

それは七日七晩にも及び、まるで作業に従事する者には果てがないかと、思われるのであった…。


そして、一週間後…。


勇者「で、できたぁ…! よくこれだけ集めたな魔王!」

魔王「うむ。先代の好きだった時代劇コレクションや任侠ものもあったからな。しかし宝物庫の奥によくぞしまい込んでいたものだ…」


勇者「中にはマニア垂涎のお宝もありそうだな…」ゴクリ


先生「だきしめてください」

魔王「うむ」ぎゅ~!


先生「い、いえっ、私ではないですっ その品物をひとつひとつ抱きしめて、自分の心に問いかけてください『愛しているか?』って」

勇者「アイ?!?!」


先生「はい。片付けは『愛』なんです。愛していない恋人を縛り続ける関係は、お互い不幸になるだけですよね。ですから、そういったものは『ありがとう』とお礼を言って手放すんです。

そして、自分の部屋に置くものは『愛しているもの』だけにしましょう」

魔王「……」


魔王「そうか…」


勇者「魔王?」


魔王「満たされない気がしていたのだ。いくら人間どもをいたぶっても、どんなに多くの人間を不幸にしても。そうか、それは、俺が…」

先生「ええ。きっと本当に愛せるものに囲まれていなかったからなんですね」


魔王「よし! ひとつひとつの品物を抱きしめるぞ! Tシャツとか、DVDとか、ファングッズとか!」

先生「はい。自分の心に、それが本当に大切なものかどうか、よぉ~く聞いて確かめてあげてくださいね」


一カ月後…。


勇者「どうよ魔王。片付いた」

魔王「おお、勇者よ、よくぞここまでたどり着いたな…! 褒めてやろう! だが少しばかり遅かったようだな…!」

勇者「な、なんだと…!?」


姫「はぁ~。魔王様の お・部・屋(はぁと)。居心地がよいですわ~。ずっとここでこうしていたい…。」

勇者「あ、姫…。何なさってるんです、こんな場所で」

姫「愛しているものだけを部屋に置きたいからと、この方にさそわれてほいほいついてきたのですわ」

勇者「はぁ…」ワカラン


魔王「片付けパワーで無敵となった俺様と戦って、貴様にもう勝ち目はない…!」

勇者「え、マジで。やっべ」


魔王「さぁ! 勇者よ、決着を付けよう…!」ゴゴゴゴゴ

勇者「俺も実家の自分の部屋片付けなきゃいけない気がしてきた…!」ソワソワ


魔王「えっ」

姫「えっ」


勇者「あぁあああ~! 考えてみたらベッドの下とか押入れの中とか…! あんな状態なの見られんの?! 死んでも死にきれねぇよ恥ずかしい…! ちょっくら片づけてくるわ! またな魔王!」シュタッ


魔王「」ぽつ~ん

姫「嗚呼…、勇者様…。行って…しまわれましたわ」


魔王「わからんでもない」フッ



◆参考にさせていただいた文献:近藤真理恵さん・著『人生がときめく 片づけの魔法』

Thanks for your Read !

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ