もしも勇者が倒れたら…?
勇者「魔王! 考えたくはないがーー、考えたくはないが、な?」
魔王「おう。どうした?」
勇者「……俺がある日突然倒れたら、…どうする?」
魔王「ん? そりゃあ、まずは119番だな」
勇者「意外と良識的な対応!?」Σ(゜Д゜)
魔王「で、救急隊員さんに任せたら、俺様は安心して人間界侵攻を再開する」
勇者「あ~、やっぱそうか~。そうなっちゃうかぁ~」
魔王「うん。だね。お前が倒れたらもはや俺に人間界征服をためらう理由はないよ」
勇者「これは…後継者を育てていかないとな」ボソッ
魔王「いやいやいや! そういうの悪いよ! 後継者の育成なんて…、ホラ、金も時間もかかるではないか。
なっ、だからホント、そういうのは気にしなくていいから! なっ?」
勇者「でもさー」
魔王「なっ、なんなのだ?」
勇者「魔王、ボケちゃわない?」
魔王「はっ?」
勇者「俺とゆう最大のライバルがさ、ギックリ腰かなんかで倒れてピーポーピーポー運ばれて。なんかこう…、ガックリ来ない?」
魔王「あ~…、それはな。あるかもね。勇者ってなんだかんだ言ってすげー邪魔だから。コイツさえいなければエッフェル塔も東京タワーもスカイツリーも通天閣もピサの斜塔もみんな俺のもんなのに!って思うとね」
勇者「マジか~。俺、そんなにジャマだったのか~。軽くショックだわそれ聞いて」
魔王「まあね。いつ倒れるかわかんないなんて言われるとさ、こう、ホンネでね。話しとかないとと思って」
勇者「そっか…。ありがとな」
魔王「い、いやいやいや! よすのだ、礼など…」
勇者「俺もさ…魔王さえこの世にいなければ俺の人生どんなだったかなって…最近考えるんだ」
魔王「…ほう?」
勇者「故郷の村が焼かれることもなかった。父親が殺されることもなかった。きっとあののどかな村で、平凡に生きて、平凡に死んでいったんだろうなって…。ちょっと考えちゃって」
魔王「重いわ」
勇者「え? 今の話のどの辺が?」
魔王「一般人からしたら重いわー、それ」
勇者「え?! ウソウソウソ?! 俺、今普通に自分の話しただけよ?! それを『重い』とかお前なんなの! ケンカ売ってんの?!」
魔王「ご、ごめん…」
勇者「謝れば済む問題じゃねーよ! お前、俺の半生否定したよ今?!」
魔王「し、してねぇよ…」
勇者「いーや、したね! お前の人生重すぎるって言ったじゃん!!」
魔王「ご、ごめん…」
勇者 チャキッ
魔王「え? あれ? それって女神様とか精霊とか酔っ払いのおじさんとかに祝福された例の剣? いいね~、ツヤツヤピカピカじゃん。まだ何も斬ったことがないみたいだな~」
勇者「うん」
魔王「へー、いいなー、俺もこういうの欲しいな~、ちょっと見せてよ」
勇者「いやだ」
魔王「え? なんで。」
勇者「魔王、今日こそお前をたお(以下略」
***
魔王「あ~、今日こそ死ぬかと思った」こそこそ
側近「まだ生きてらっしゃいましたか」にこり
魔王「なんだその虫を見下すようなまなざし」
側近「わたくしは元々こういう目ですよ」にこにこ
魔王「なんだか最近、側近に玉座を狙われているような気がしてならない」
側近「もやし1トンで手を打ちましょう」
魔王「魔王の玉座ってお前にはもやし1トンとイコールなのかよ」
側近「おおむねそんなところですね」
魔王「俺様の椅子は…何と軽いのだ。それに比べて勇者の人生の重さといったら…」しょぼーん
側近「何を思い悩んでおられるのです。魔王様は、ただそこにふんぞり返って笑っていらっしゃればよいのです」
魔王「そうやって何もかも他人任せにして…、俺様は、自分の頭で考えてこなかったのだな。自分の目で、ものを見ていなかったのだな」
魔王「自分の耳で聞き、自分の手で触れる…。きっと、そうだ。俺様は、本当の意味では生きてこなかったのだ」
側近「この軟弱者!!」べちーん!!
魔王「ぶったな?! 大魔王様にもぶたれたことないのに!!」
側近「いえ、先日ぶたれていらしたような…」
魔王「家庭内暴力で大魔王様を訴えよう」
側近「なんでそうなるのですか」呆
>>>
Thanks For Reading !
寒いので更新しました。(んん?!)




