魔王の隣におでん
①健康によいものだけを
勇者「魔王。ヨーグルト食べてる?」
魔王「ああ、食べてるよ、毎日」
勇者「あれな~。免疫力を高めて、風邪ひきにくくなるらしいよ?」
魔王「ウッソ、マジ? 俺は、お通じがよくなって便秘に効くって聞いたけど!」
勇者「あとねあとね、美肌効果とかあるらしいぜ?」
魔王「ほんとかよ!? 腰痛と肩こりも解消するって!」
勇者「もちろんだよ! あとな、金運アップな」
魔王「仕事運は?」
勇者「あー、仕事運は、納豆食うといいみたい」
魔王「へぇ~! 勇者、詳しいな! じゃあさ、あれは! 冷えに効くのは?」
勇者「ミカンな。ミカンは万能だよ。1日3食、ミカンでもいいくらいだ」
魔王「マジか! じゃあ、ミカンにヨーグルトかけて!」
勇者「そうそう。んで、納豆な」
魔王「バナナとリンゴも入れようぜ。なんかヘルシーっぽい」
勇者「ほうれん草と大根も効きそうだな!」
魔王「いいね、いいね! 野菜や果物はね、ほら、アレが豊富だから!」
勇者「なー? あれな、たっぷり入ってるらしいよな?」
勇者・魔王「「ドコサヘキサエン酸」」
魔王「あれよー、受験にも効くって」
勇者「あー、知ってる! それ知ってるよ。なんかCMでやってた!」
魔王「そうそう、それな。じゃ、ミキサーにかけるか」
勇者「スイッチ、オーン♪」ぽちっ
ぎゅおおおおおおん
勇者「おー、すげーな。ドコサヘキサエン酸とDNAが、みるみる粉砕されてくわ」
魔王「これ気持ちイイよな。世界征服すんのにちょっと似てるわ」
勇者「へー、そうなの? 俺もいつか試したいと思ってんだけどね、世界征服。どうなのあれ。偏頭痛とか治る?」
魔王「えー? どうかな。俺、偏頭痛ないからね~。とりあえず、ひざは良くなったね。階段とかもう、ラクラクよ」
勇者「…ああ、お前んち、階段、すごいからな…。何、あれ。エスカレーターとかにしたら?」
魔王「だってさ~、予算ないんだよ。エスカレーターつけたら、いくらするって」
勇者「でもさ~、」
側近「ごほっ、ごほっ」
勇者「お。ほら、側近。おかゆできたよ」
魔王「うむ。今しがた、オーブンで焼き上がったところだ」
側近「…何故。おかゆをオーブンに…?」
勇者「バッカ野郎! 常識にとらわれるなッ!! おかゆは、鍋で作る…、そんな概念にとらわれているから、世界は良くならないままなんだ!」
魔王「うむ。ーー側近よ。健康によいものだけを、これでもかと詰め込んだ、かゆだ…。どうか、食べてくれ」
側近「魔王様…」じぃいん
側近「では。有り難く…」ぱくり
勇者・魔王「「どきどき」」
側近「ふむ」
側近「まろやかな酸味と甘味。塩味が利いていて…、これは、カツオだし? なかなかに、興味深い味ですね」
勇者「よかった! 側近の口に合うように工夫したんだ」
魔王「うむ。側近には、いつも世話になっているからな…」
側近「ぱくぱく」
側近「ばたり」
勇者「あれ…っ?」
魔王「側近? そっきーん?」
へんじがない。ただの(以下略)
②魔王の隣に、おでん
勇者「なー、魔王。魔王の隣に、おでんとか肉まん置くの、やめてくんない? あれ、会計前につい手が伸びて買っちゃうからさ~」
魔王「ばっか、勇者よ。それが狙いなのだろうが。我を討伐に来た冒険者どもに、日用品や、菓子、何かつまめるものを買っていただく! それで、我が魔王軍の財政は潤っているのだ」
勇者「…あ、そうなの。あれ、けっこう、みんな買っちゃうんだね。俺だけじゃないんだ…?」
魔王「うむ。我と戦うと、長期戦になるゆえ、腹が空くであろう? そこに、アツアツのおでんや肉まんがちらりと目に入る。よく冷えたビールや、おつまみ。コンパクトにまとまった、彩のよい弁当類。気軽につまめるサンドウィッチ。」
勇者「あ~、そうだよな、仕方ないよな。運動すると、誰でも腹へるよね。そこは、戦士系も魔術師系も変わらないか~」
魔王「だな」
勇者「そっか~。じゃあ、むしろあれ、積極的に食べてもいいのかな?」
魔王「うむ。フリードリンクや、サラダバーなどの設置も検討している。我と戦っている間に、隣で焼肉を焼いておき、食べ放題などといわれたら、心の動かぬ者はおるまい」
勇者「うん、うん! だね! あぁ、くっそ~、魔王、商売上手いなぁ~。魔王やめて、商人になったら?」
魔王「あ~、それはちょっと俺も思うな。各地を旅してね、美味い食材とか仕入れて」
勇者「そうそう。コダワリの品をね」
魔王「美味い蕎麦とか、自分で手打ちしてさ」
勇者「いいね、いいね」
魔王「世界、征服し終わったら、俺、旅に出ようかな?」
勇者「あ、ほんと? いいね、じゃ、それ、俺も付き合うわ」
魔王「お前、すでに旅してんじゃんwwww どんだけ旅好きなの」
勇者「いやぁ、だってさ。旅って、ハマるよ~。そりゃね、毎日同じベッドで寝たいと思うこともあるけど」
魔王「あ~、俺、いつもの安眠マクラがないと、眠れないかも」
勇者「そのうち、慣れるよ。色んなマクラもいいもんだ」
魔王「そっかな? 慣れかね、ああいうのも」
勇者「だね」
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