九時五時de勇者
『9時5時de勇者!』
魔王・魔王「「明るく元気で、やる気のある方、募集!」」
側近「暗く陰気で、やる気のない者は、どうすればよいのでしょうか」
勇者・魔王「「クビだ!」」
部下A「もっと多様性を認めましょうよ。根暗で陰険でもいいじゃないですか」
勇者「いいや、ダメだ! 勇者パーティに入るには、明るく元気で、やる気がないと」
魔王「魔王軍もね。明るく元気で、やる気のある奴と共に世界を滅ぼしたいよ、俺は」
側近「世界を滅ぼすのに、明るく元気なんですか…」
魔王「うむ。ポジティブにね、前向きに世界を滅ぼす」
部下A「なるほどー」
勇者「もちろん、ウチはね、まかない(ゴハン)も付いてる! 10分ごとに、5分の休憩もある!」
部下A「休みすぎじゃないですか?」
勇者「そうかなー。10分ごとにタバコと酒がないと、手が震えたり、イライラしたりって、皆、大変なんだよー」
側近「大丈夫なのですか、勇者パーティ」
勇者「え? うん。問題ないよ。この間、戦士は、酒の飲みすぎで肝臓悪くして入院したけど。武道家はねー、肺がんだって。何がいけなかったんだろうね?」首かしげ~
魔王「全く、見当がつかぬな。明るく元気で、やる気のある者ばかりの勇者パーティに、問題があるはずがない」
勇者「そうだ! あるはずがない」
側近「賢者と遊び人が、先週、過労で倒れたらしいですよ。入院して、点滴を受けているとか」
部下A「わー、勇者パーティって、ブラックですね~。」
勇者「俺だって、朝6時から、夜の十時まで働いてんだから、仲間にもがんばってもらわんと」
魔王「でもなぁ、さすがに働きすぎだよ。世界なんか放っといて、休みゃいいのに」
勇者「うん…。まあね、世界救っても、自分が倒れちゃ、ねぇ。」
魔王「そうそう」
部下A「魔王軍は、九時五時で、夜勤も残業もありませんよ。勇者さんも一緒に働きませんか?」
勇者「…いやさ、そういうの、感じ悪いじゃん? ライバル会社に乗り換える、みたいな…」
魔王「俺らは気にしないよ。な、側近?」
側近「ええ。明るく元気で、やる気があれば、何の問題もありません。すぐ、人事の者に言って入軍手続きの書類を用意させましょう」
勇者「…ほ、ほんと? そっかぁ、俺、もうこれから、5時で帰れるんだぁ…。やったー」バンザイ
②くびれはろまん
勇者「まおうー。くびれって、どう思う?」
魔王「あー、くびれな。くびれな。うん。あれはな、けしからんな」
勇者「えー、じゃあ、ないほうがいい?」
魔王「ば…っ! いつ俺様がそんなこといったよ!? くびれはな…。ロマンなんだ。わかるか」
勇者「わからん」
魔王「わからんか…。フッ。所詮、勇者もただの人間ということだな…。いいか、勇者よ。くびれはーーロマンだ」
勇者「それさっき聞いたよ」
魔王「何度でも、俺は言おう。いいか勇者よ、くびれはロマンだ。ロマンなのだ」
勇者「はぁ…」
魔王「いいか、勇者よ。わからんか? くびれがロマンだという根拠が…」
勇者「根拠あるの?」
魔王「無論。そこにくびれがある。つまりこれは、そこに脂肪が無いことを意味する」
勇者「脂肪はロマンじゃないの?」
魔王「…。」
勇者「な、なんで泣くんだ!? 俺、なんか悪いこと言った!? 魔王!? まおうー!」
魔王「…脂肪は…。ろまんじゃない」
勇者「…そ、そっか。うん。ロマンとはちょっと違うよね、脂肪は。うん。俺もそれ思ってた。やっぱね、脂身はロマン感ちょっと薄いよね」
魔王「うむ…。つまりな。くびれは、無いよりあったほうが良い。くびれは基本的人権だ。すべての人間は、くびれを有する権利がある」
勇者「おー…」
魔王「くびれ無くして、人間らしい暮らしは実現しえない」
勇者「そうなの?」
魔王「うむ。俺は見てきた。かつて何人もの人間がくびれを失い、そして人世の全てを台無しにしてゆくのを…」
勇者「ゴクリ」
魔王「つまりな、くびれはーー」
勇者「ああ。魔王。俺にももうわかった。くびれはーー」
魔王「ロマンなのだ」
Thanks for Reading !




