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「ども、魔王です」「こんにちは、勇者です」  作者: 魔王@酒場
魔王様は玉座にて待つ。宅配便とかを。
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時間どろぼうと灰色の魔王様

2015年ーー、東京、上空。


濃い灰色の雲が渦巻き、女のものとも、男のものとも知れない声が不気味に響く。

謎の声『ーーフフッ、ときは満ちた。人間ども、我にーー、時間を捧げよ』


同時刻、魔界、魔王城ーー別名、エンターテインメント・パーク。

愛らしい子供の声は言う。


魔物A「ねーえー、魔王様ー。人生ゲームしましょうよ、人生ゲーム」

魔物B「あっ、ずりーぞお前! 魔王様は俺と戦闘訓練するんだよ!」

魔物C「…魔王様、ご本、読んで…、くれる約束」ギュ


側近「ふふ。魔王様は子供に好かれていますね」ニコニコ(…ククク。やはりあなたは王にふさわしくない…! 見ていなさい魔王。必ずやあなたを、玉座から引きずり下ろす…!)


でっかい泥巨人ゴーレムと、いかめしい顔の守護石像ガーゴイルと、半透明の亡霊レイスに囲まれた、黒マントの人物は、おもむろに豪奢な椅子から立ち上がり、告げた。


魔王「…側近。この椅子、ちょっと硬くね?」


悪魔の羽根を背中に備えた側近は、緊張した面持ちで応じる。

側近「当たり前です。あなたが毎日12時間、朝から晩まで座りっぱなしなんですから。ーーわたくしは、貴方様が痔を患うのではないかと、いつも冷や冷やしております。…どうぞ、魔王様、これをお使い下さい」


側近は、脇に用意していたもやし柄の紙袋から、何かを取り出す。

それを見た魔王の顔は、さっと喜びに輝いた。


魔王「ドーナツクッションだ! 床ずれ防止のクッションもある!」

側近「高かったのですよ。ドラッグストアで980え…、ゴールドもしました」


魔王「そりゃ悪いね! ツナマヨおにぎり10個分くらいじゃん!」

側近「最近のおにぎりは最低価格が108円くらいしますからね。9個と、こんぶおにぎり7.4%程度でしょうか。こんな高価なものを買って、魔王軍の財政が破綻するのではないかとわたくしは懸案しております」


勇者「よっ、来たよ。なんか東京が大変なことになってるんだけど、お前の仕業?」

魔王「…というと?」


勇者「突然現れた灰色のスーツのイケメンに、時間を奪われる事件が多発しているんだって。俺の前にはパツキンの外人さんが灰色のスーツで現れて、「ほったいもいじるな」って連呼してたな…」※What time is it now?


魔王「えー、それやばいやつじゃん。大丈夫だったの? 時間奪われなかった?」

勇者「ああ、もちのロンよ。成田空港に行きたいっていうから、一緒に行ってあげた」

側近「…だいぶ時間を奪われましたね」※けっこう遠い


勇者「俺の実家のお隣さんは、おばあちゃんが脳梗塞で半身付随になってな…。旦那さんは介護に追われている。息子さんは、介護のために会社を辞めたらしい…」


魔王「いいなそれ! 俺様も会社を辞めてみたい!」

側近「それにはまず就職しないとなりませんね」


魔王「人間どもの会社に潜り込むには、履歴書を用意して灰色のスーツで面接に行くのであったか?」

勇者「そうそう。面接で何訊かれても、笑顔で『はい! できます!』って言うんだよ。ネガティブな答えは厳禁な」


側近「…不安ですね。ちょっと練習してみましょうか、魔王様。『当社を志望した動機は?』」

魔王「遊ぶ金がほしくてついWebでエントリーシートを記入してしまった。今では後悔している」キリッ


側近「…なるほど。では、『入社したら何をしたいですか?』」

魔王「はいっ! まずはトイレに行きたいです! そしてトイレの個室にこもったまま、退社時間が訪れるのを待ちます! 皆さんの迷惑にならないよう、使用する個室は、一番奥のほうにしたいです!」ドヤァ


側近「ふむふむ。では、質問はありますか?」

魔王「給料日はいつでしょうか!」


側近「月末締め、翌月10日払いです。銀行が休みの日は、前日に支払われます」

魔王「わーい! 俺、頑張って働きます!」


側近「採否の連絡は、一週間後です。もし電話がない場合、不採用だと思って下さい」

魔王「はいっ! 本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました! もし働けることになったら、御社のお役に立てるよう、精一杯働きたいと思います!」


側近「…フゥ」やれやれ

勇者「やったな魔王! ばっちりじゃん! これで明日から正社員だな!」


灰色の男「こんにちは」

側近「! 何者…ッ」


灰色の男「あなた方の時間を奪いに伺いました。ーーふふ。『時間がない』『時間がない』…時間がない貴方のために我々は、時間を奪い、そして、有料で人々に提供しています」


勇者「時間…だって?」

灰色の男「ええ。誰だって時間が欲しい。違いますか? 誰しも、生きていられる時間は限られている。その中で何を成し、何を選ぶのかーー我々はね、そのお手伝いをしているんです」ニコ…ッ


灰色の男「見なさい。あの国の様子を」


邪神ふうの人物「時間だ…。時間が足りぬ…もっと我に時間を捧げよ…」

サラリーマン風の男「朝はもっと寝ていたい…。夜はもっと遊びたい…。時間だ…時間が欲しい」

OL風の女「化粧は通勤電車の中でするわ…。時間ないし。ああ、メールもチェックしないと…」


勇者「…忙しそうだな」

魔王「忙しそうだね」うんうん


勇者「というわけで、俺達は今、東京に来ています」

魔王「憧れの皇居ランやってくる!」

側近「あらゆるもやしを愛でて参ります」


灰色の人「…あ、あの、ですからですね。あなた達の時間を…わたしは頂きました」


勇者「マジでぇ? 時間奪われちまった! HAHAHA!」

魔王「やべー! 勇者それやべーって! お前の時間無くなってるよ!wwwww」

側近「もやしだ…もやしを愛でなくては…」


灰色の人「ですから、時間を返して欲しかったら、わたしに金銭を支払い…」


勇者「ラーメンうまー! 魔王にネギやるよ!」

魔王「ばーか。チャーシューよこせっつの!」

側近「ウフフフフフ」


灰色の人「ぽつーん」


灰色の人「しょうがねえ…連中の寿命、減らしとくか…」ハァ

Thanks for Reading !


深淵の淵より、邪神

『時間だ…。時間が足りぬ…。もっと我に時間を捧げよ…』コォオオオ


部下A「ってLINEが入ってたんですけど、邪神って、やっぱり忙しいんですか?」

魔王「ああ…、そりゃそーよ。これオフレコだけどさ、あの人も会社で偉い人やってるから…。あんまり休み取れないんだろーね…」

部下A「フーン…。」

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