ATM、ご利用できます
勇者「まおうー。なー、魔王城にあれはないの? ATM」
魔王「Anti Tank Missile(※)だろ? ばっちり配備してあるよ! いつ人間どもが攻めてきても安心!」
勇者「そっか! そりゃよかったな! 俺も安心して暴れられるってもんだ!」ニコッ
魔王「やめてよ~。ここだけの話、魔王城、突貫工事で建てたからね。ところどころ、脆いのよ。禁呪50連発くらいするとヒビとか入っちゃうんじゃないかな~って俺様、心配してるのよ。怖くて夜も眠れなくて。仕方ないから毎日昼寝してるよ。も~」
勇者「そっか~、そりゃ大変だなー…ところでさ、魔王、魔王城にアレはないの、もうひとつのATM」
魔王「ん? Asynchronous Transfer Mode(※) のほうだった? 悪い、悪い。勘違いしてたよ。うん、もちろん使ってるよ。データのやりとりって、戦局の把握には欠かせないからね~。とくに音声送るのにいいね、ATMはね! 勇者んとこも使ってみたら? 大規模なインフラにすれば、コストも抑えられるしさ」
勇者「うんうん。わかるわかるー。上位層との整合のためにデータリンク層に副層が設けられてて、ATM 適合層 (ATM Adaptation Layer: AAL) とかいわれるわけだな」
魔王「そうそう! わかってるね、勇者よ! ばっちりじゃん!」
勇者「…で、魔王。魔王城にアレは…」
魔王「…何。勇者。俺様のことバカにしてんの? ATMくらいあるよ! 魔王城には、世界中のありとあらゆるATMがあるッ!」ババーン!
深紅のカーテンが開くと、そこには、古今東西の、バリエーション豊富なATMが鎮座していた!
勇者「なんと!」
魔王「どーよ! どぉおおよッ!? これ集めるの大変だった! 雨の日も、風の日も、全軍総力を以って、お願いしに行った!」
魔王「賄賂も袖の下も献金もがんばった! 寄付もした!」
勇者「…お、おう」
魔王「いいね、ATMはね、見てると和むね。壮大な夢とロマンが詰まっている」
勇者「…いや、詰まってるの現金だろ。ちょっと金下ろしたいから貸して」
ATM シーン
勇者「…あれっ? あれ? おかしいな…! カードが入らない…!」
魔王「うん。電源も現金も入ってないよ。コレクションだから。見て楽しむの」
勇者「ATMなどただの飾りだというのかッ!? おのれ魔王…!!」
【脚注】
※ Anti Tank Missile … 対戦車ミサイル
※ Asynchronous Transfer Mode(アシンクロナス トランスファー モード、非同期転送モード、ATM)は、53バイトの固定長のデータであるセルを基本的な通信の単位とする、Virtual Circuit cell relay(仮想回線セルリレー)による通信プロトコルである。
※ ATM … 銀行や郵便局の現金自動預け払い機の通称(Automated Teller Machine:自動出納機の略称)。
【ウィキペディアより】
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