11 勇者と魔王と、コンビニ弁当
魔王「いらっしゃいませー!」
勇者「ま…魔王!? なぜ俺の大学のすぐそばのコンビニに!?」
魔王「あー、ここホラ、休日の時給が良いんだわ」
勇者「へー、そうなのか。あ、しらたきとしらたきとしらたきな」
魔王「何、ダイエット? 減量??」
勇者「いや、今月仕送りが厳しくてさ。授業料払ったらw」
魔王「勇者が授業料とかwww」
勇者「なんだよー、仕方ないじゃん。払わないわけにいかないだろ?」
魔王「まあね。…まけないが」
勇者「なんだよー、オマケしろよー、オマケ」
魔王「勇者が魔王にそんなもん願うな」
勇者「いいじゃん、何でも言ってみるもんだよー? レポートの締め切り伸ばしてくれとか。俺は悟ったね。教授だって猛獣じゃない、ちゃんと血の通った人間だったんだ、って」
魔王「何があったwww」
勇者「サークルの活動も忙しいしさー」
魔王「いらっしゃいませー!」
勇者「…結構忙しいんだな、ここ」
魔王「まあな。ほら、早く行った行った」
勇者「へーへー、とっととメシ食って研究室に戻ります…。今日も泊まり込みだよー、ああ、もう」
魔王「温めますかー?」
勇者「魔王っていうのも大変なんだな」
*
魔王「あたためるものございますかー?」
冒険者「ではこのレザーアーマーを」
魔王「少々お待ちくださいませー」
……、チーン!
ほかほかのレザーアーマーがレンジから出てきた!
魔王「ありがとうございましたーー!」
*
???「どう、ちゃんと働いてる?」
魔王「だ、だ、だ、大魔王様っっ!? もちろんです! この店舗を第一歩にして大魔王様印のチェーンを全国、いや、北極からバルト海沿岸まで全世界…っ、いえ、アンドロメダ星雲から馬頭星雲まで、宇宙規模に展開する計画…ッ!! 順調です!!」
大魔王「(有機生命がいないのにどうやってコンビニを経営するつもりなのかしら…。やる気だし、まあ、いいか)」
大魔王「じゃあねー、がんばって」
魔王「(うぜえから見にくんなw)」
大魔王「……をい」
魔王「ありがとうございましたー! またお越しくださいませー!」
大魔王「……魔王君?」
魔王「なんでもないんですよ大魔王様? あなたが心を読めるのを忘れていただけで。」
大魔王「エスパーってね、辛いのよ。…ま、いいけど」
勇者「謝りませんよ誰が謝るものかーー!」
魔王「うわ、勇者…」
勇者「俺は、俺は魔王の味方だ! たとえ全世界を敵に回しても、君を守り抜く!!」
魔王「…。いや、無理だろう。大魔王様の魔力の前に貴様は消し飛ぶな」
勇者「何だよ空気食べろよ! ここは感動するシーンなの!!」
魔王「空気だけで生きてるヤツってたまにいるよな」
勇者「俺かーー! 俺のことかぁああ!!」
魔王「…いや、別にお前がそうとは言わん」
勇者「そうか良かったー! さあ、大魔王を倒すんだ魔王!」
魔王「犯罪を教唆すんな」
勇者「うわあ、魔王君っていつも冷静……。ちょっと引くわぁ」
魔王「よかろう、静かになる」
勇者「ガーーン! 俺はうるさかったらしい」
魔王「自分じゃ案外気づかないもんだ」
勇者「…あっ、シャーペン買いに来たんだった。購買部混んでて」
魔王「シャーペンな。芯もいる?」
勇者「おう。あと勇者の剣とミスリルメイル、青銅のうでわ ください」
魔王「5点で25890ゴールドになりますー」
大魔王「ワシ、帰るよ、惑星に」
魔王「(二度と来んな)」
大魔王「……昔は、パパ、パパって可愛いかった……、あの頃」
魔王 ←極大火炎魔法絶賛詠唱中
大魔王←極小氷結魔法詠唱中
勇者「他のお客様のご迷惑になりますので……」
*
勇者「どもー! 勇者です」
魔王「ちわーっす、魔王だ」
勇者「今日はふたりでラブホテルに来ています」
魔王「はぁっっ!? 今何つった貴様」
勇者「ふたりでカラオケに来ています?」
魔王「それも事実と異なる」
勇者「…ぼく、勇者。今、ともだちの魔王君の経営するコンビニで期限切れの弁当を食べているんだ」
魔王「よし。正しくなった」
勇者「正しいだけじゃつまらない! 人はエキサイティングでセンセーショナルな出来事に惹きつけられるんだ!!」
魔王「エキサイティングでセンセーショナル…?」
勇者「今日は魔王君と一緒にラブホテルに来ています♪」
魔王「いっそ お一人で行って『休憩』してこい」
勇者「それって何事!?」
魔王「昼寝。」
勇者「ああ、昼寝っていいよね。保育園だけじゃなく、学校や会社にも導入すべき。消費税増税より先に議会はこっちを議論すべきだね」
魔王「昼寝を、か」
勇者「生産性が上がって、失業率の改善なんてすぐだね」
魔王「個人の生産性が上がるなら、失業率は改善しないような…」
勇者「仕事! 仕事が必要だ! 怪獣に破壊されたビルディングを建て直すとか!」
魔王「一番、経済に良いのは、ピラミッド建設みたいな、無限大に労働力を投入できる事業があること、らしい」
勇者「そのカネはどっから出んだよ」
魔王「さあ…。植民地?」
勇者「…。」
あとがき
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次回予告
勇者「ばーか、ばーか、先生に言いつけてやるー!!」
今日も魔王くんに勝てなかった。
そんな勇者のたどり着いた結論。
勇者「…私には、仲間が必要だったんだ」
しかしブティックと化していたルイーズの酒場を前に、勇者は決意する。
勇者「これならーーイケる!」
次回、世界は震撼するーー。




