105 海獣リヴァイアサンさん
勇者「俺がこの間戦った海獣リヴァイアサンーーやつには、意外な弱点があった」
魔王「ーーほう? 我が生み出した海棲魔獣を、貴様がいかにして斃したのか、疑問に思ってはいたがーー」
勇者「うむ。その弱点を考えた俺は、やつに水泳レースを挑んだ」
魔王「ヒレとエラのやつある相手に、無謀だなお前」
勇者「俺は知り合いに頼み、最新鋭のクルーザーを用意。乗り込んだ」
魔王「泳いでねェ……」
勇者「僧侶が、合図の旗を振った。瞬間に亜光速で泳ぎ出す海獣リヴァイアサン。対し、エンジン・トラブルでスタートの遅れた漁船型クルーザーは劣勢だった」
魔王「なんでせっかくの最新型クルーザーを漁船風にしちゃったんだよ」
勇者「魚取れたら食べようかなって……。」
勇者「2馬身の差を空けて、ゴール目指して一散に泳ぐ魔獣リヴァイアサン。必死で追いつこうと、オールを操る俺」
魔王「さっきエンジンって……」
勇者「馬鹿野郎! 漢の勝負にエンジンなんか使うわけにいかねぇだろ! 壊れたしな!」
魔王「…。で? クルーザー型漁船を、手漕ぎで動かしたの?」
勇者「予め、早稲○大学カヤックチームの協力を仰いだ。漕ぐ漢たち。飛び散る汗。発散する水蒸気」
魔王「ふむふむ」
勇者「魔獣はすでに地球を一周し」
魔王「速すぎんだろ!?」
勇者「ゴールである、オンタリオ湖の真ん中へとーー」
魔王「…フン。やはり我が軍の勝ちではないか」
勇者「だがその時!!」
魔王「ビクゥゥ!!」
勇者「海獣リヴァイアサンは、突如として苦しみ出す!」
魔王「卑怯ではないか勇者よ! 勝てないと踏んで、リヴァイアサンの弁当に下剤を混ぜたのだな!」
勇者「(…弁当??)」
勇者「…ともかく。のたうち回る魔獣! オンタリオ湖は荒れに荒れ、観光客に水しぶきが!」
魔王「観光客かわいそう! せっかく遊びに来てるのに! 傘持ってた!? 合羽は!?」
勇者「大丈夫だ。屋根つきの船に乗っていたからな…」
魔王「ふぃー。どきどきしたよ。よかった、安心だね」
勇者「のたうち回る魔獣!」
魔王「あー、うむ。魔獣な。のたうち回ったのな。あー、痛そう痛そう」
勇者「ばっしゃあああん! 水しぶき」
魔王「観光客、大丈夫!?」
勇者「大丈夫だ。屋根つきの船に乗っていたからな…」
魔王「よ、よかったー。もう、あんまドキドキさせんなよ。観光客とか一般人だからね。魔獣と勇者の戦いに巻き込まれたらひとたまりもねーよ」
勇者「ばっしゃあああん!」
勇者「そして魔獣は……。」
魔王「ゴクリ」
勇者「血を吹いて倒れた……」
魔王「え?」
勇者「海棲生物であるリヴァイアサンはーー」
勇者「淡水に、適応できなかったのだ……。」
魔王「…。そうか。浸透圧によって…」
勇者「うむ。可哀想なことをした。だが、これも戦いだからな…」
魔王「次は、鮭型魔獣サーモマサンとか作ろうかな…」
勇者「淡水にも海水にも適応できるのか…」ゴクリ
魔王「マヨネーズともよく合う」
勇者「タマネギと合わせてマリネに」
魔王・勇者「じゅるり」
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