『再生』
それは、実に奇妙な感覚であった。
体の内に秘めた決意が、強く望んでいた夢が、瞬く間に消え失せていくのだ。
長い眠りから、覚めたというべきなのか。それとも、長い沈黙から解き放たれたと言うべきなのか。
己が積み重ねてきたものが音もなく崩れた。身に着けてきたものが、意味を無くしていく。
これが、喪失なのだろうか。これが、破壊なのだろうか。
体の一部が不意に軽くなる。気付けば、穴が開いていた。
時を歩み形造られ、完成されていた人の心に、穴が。
この軽さは、心の形である感情が、まるでパズルのピースのように、開いた穴から音もなく抜け落ちていったのだと解釈すると、妙に合点がいく気がした。
「…………ぁ」
声が掠れる。感情の発露すら、忘れてしまったからなのか。
言葉で言い表すことが出来なくなりつつある身体が、全てを物語っている。
深い眠りと沈黙は、たった一つの現実を切っ掛けに、なにもかもの終わりを告げた。
その眠りで得たものは、何もない。
その沈黙で得たものは、何もない。
故に、残ったものは、価値の見出だせぬ木偶ただ一つだった。
最初短編で出してしまいました。長編の間違いです。全五章です。よろしく!!!