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プロローグ



 不思議な夢を見た。

 神様を名乗る綺麗な少年が現れて『異世界に移住するとしたら、どのような世界を希望されますか?』なんて聞いて来る。

 そんな夢だ。

 夢の中だからか、特に疑問にも思わず、私は彼の問いに答えた。


「え、と、そうですね。

 まずは……普通に空気があって、重力が同じで、気候もこちらとの差があまり無くて、文明を持った同じサイズの人間が生息しているというのは大前提ですよね?

 私、ライトノベルとか結構好きで、やっぱり異世界と聞いて憧れるのは亜人や竜、魔族や魔物、妖精や精霊がいて魔法があるようなファンタジーな世界です。

 流石にいい大人なので、魔王とか勇者とか王とか巫女とか神子なんて設定はいらないですけどね。

 だから、黒髪黒目が珍しかったり迫害されたり神聖視されたりする世界は嫌です。

 どうしてもそういう世界しかなければ、色素もろもろの人体改造をお願いします。

 改造と言えば、異世界に渡った後の私自身の魔法の才についてですが、これはそちらに全面的にお任せしたいと思います。

 その世界に魔法を使える人間が少ないのであれば、私も使えなくても問題はないです。

 むしろ、強すぎる能力を与えられる方が無用な軋轢が生じやすいと愚考しますので、その辺り是非ご考慮下さい。

 ただし、無力な一般人として生きることになるのであれば、確実に、戦争が無いかある程度収束している状態の世界であること望みます。

 力を持ったとしても、そうであるに越したことはないですけれど……。

 あ、これも大前提なのですが、善悪の感性が離れすぎていない世界でお願いします。

 日本ほど充実していなくても良いですが、ある程度の人権は主張したいですね。

 細かいところでは、男尊女卑が激し過ぎず、女性も外で働いたりズボンを着用したりすることが当たり前の世界だと過ごしやすいです。

 あぁ、そうだ。

 どんな世界だろうとちゃんと言葉や文字が分かる補正はないと困っちゃいますよ?

 転生して赤子からやりなおすというのならまだしも、大人の私が言葉を一から覚えようなんて無謀も良いところですからね。

 数え方も十進法でお願いします。

 後、これは結構大事なのですが、衛生面がきちんとしていると好ましいですね。

 特に疫病なんか広まってしまうような環境は遠慮したいです。

 それと、魔法でも技術でも良いから医療はある程度発達していると良いですね。

 それが法外な値段ではないことも重要です。

 ついでに、水が貴重すぎるような環境もあって欲しくありません。

 え~っと、これは男性に言うのは少々アレなのですが……生理の時に布をあてるだけとか、そういう簡易な処理しか出来ないのはキツイです。

 合わせて、下着類がこの世界のものと近いと助かります。

 最後に贅沢を言わせて貰うと、米や醤油や味噌などのソウルフード関連と、後は和でも洋でも甘味がある程度充実していると好ましいのですが、流石にこれは難しいでしょうか」


 長々と語る私に呆れるでもなく真剣に聞いてくれた美少年神様は、最後ににっこりと笑って『ご希望承りました。厳正なる審査の上、当選が確定致しましたら後日改めてご挨拶に伺わせていただきます。ご協力ありがとうございました』等と良く分からないことを言って消えた。


 これが単なる夢ではなかったのだと理解したのは、3日後。

 再び夢に現れた美少年神様は私に向かって恭しく頭を下げ、こう告げた。


「ご当選おめでとうございます。

 他に類を見ない程の細かな条件付けに感銘を受けました神一同、満場一致での異界渡りが可決される運びとなりました。

 なお、異世界へ赴くにあたりまして地球での貴方の存在は完全に消去されますので予めご了承下さい」





 こうして、大した説明もなく私は身ひとつで異世界に飛ばされた。

 問われたことに答えただけで、私に異世界トリップ願望などあるはずもなかったのに……。




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