島流しの王子
本作は『2人の悪役令嬢、ちゃんと謝罪できるように教育してあげますわ』の後日譚となります。
前作を読んでいなくても楽しめる内容になっていますが、あわせてお読みいただくと、より深くお楽しみいただけます。
――豪華絢爛の謁見の間。
重厚な玉座に座る王。その威圧とともに、軍事国家特有の重苦しい空気が場を支配していた。
玉座の前では、近衛騎士団長が膝をついている。
「話せ」
低く、押し潰すような声。
「はっ。先ほど、諜報員より報告が入りました。アルトリア王国のレオナルド王子が国外追放――ダルク島に幽閉されたとのことです」
わずかなざわめきが広がる。
「……ほう」
王は顎に手を当て、興味なさげに呟いた。
「国外追放とはな。何をやらかしたのだ?」
一瞬の間。
「……まぁいい。放っておけ」
その一言で、この場の空気は再び静まり返る――はずだった。
「お父様、お待ちください」
静かに響く声。
その場の空気が、わずかに揺れる。
ゆっくりと前へ進み出たのは、ミレイア王女だった。
「レオナルド王子の件、ワタクシにお任せいただけませんか?」
その唇は穏やかに微笑んでいる。
だが、その奥にあるものは――誰の目にも明らかではなかった。
彼女は扇を口元へと添え、僅かに歪んだ笑みを隠す。
「ミレイア。またでしゃばるつもりか」
苛立ちを隠さぬ声が飛ぶ。
ディルク王子が、妹を睨みつけていた。
「あら、お兄様」
ミレイアは視線だけを向ける。
「貴方がいつまで経ってもアルトリアを落とせないものですから」
その言葉に、場の空気が凍りつく。
「……貴様」
ディルクは舌打ちし、鋭く睨み返す。
だが――ミレイアは微動だにしない。
その瞳には、既に“次の一手”が見えているかのような、冷たい光が宿っていた。
――ダルク島。
粗末な小屋の中。
レオは、軋むベッドに体を預け、ぼんやりと天井を見つめていた。
「……何故、こうなった」
乾いた声が、誰もいない室内に落ちる。
「俺は、間違っていない……」
握りしめた拳が、わずかに震える。
「何もかも……エレノアのせいだ」
吐き出すように呟く。
「必ず後悔させてやる……」
低く、押し殺した声。
「……そして、カグラ」
その名を口にした瞬間、顔が歪む。
「あの、人を食ったような態度……」
思い出すだけで、胸の奥がざわつく。
「今でも、気が狂いそうだ……!」
拳を叩きつける。
その衝撃が、小屋の中に虚しく響いた。
――その時だった。
外から、慌ただしい足音と怒号が飛び込んでくる。
「なんだ、あれ……?」
「……おい、見ろ!」
監視任務中の騎士たちが、海の方を指差していた。
水平線の向こう。
いくつもの影が、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。
「あの旗印……」
一人が、息を呑む。
「――ヴァルディア海軍の船団だ!」
ざわり、と空気が揺れた。
「こっちに向かってきているぞ!」
静まり返っていた島に、不穏な気配が満ちていく。
――嵐は、もう目前まで迫っていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回は、島流しにされた王子の“その後”を描いてみました。
本編では描ききれなかった裏側や、別視点の物語として楽しんでいただけていれば嬉しいです。
よろしければ評価や感想などいただけると、今後の励みになります。
また機会があれば、別のエピソードも書いてみたいと思いますので、その際はよろしくお願いいたします。
すみません。島の名前、海軍提督の名前が未設定のままでした。
修正しています。




