表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二周目領主はもうだまされない!  作者: 雨傘ヒョウゴ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/19

18 ファリス村を襲う病

「よーし! 行くわよ、みんな! 付いてきてるわねー!?」

「「「ハイッ!!!」」」


 ざしざしと私は森の中を分け入る。その後ろには、騎士団からチョイスした数人を。自分も付いていくと聞かなかったので騎士団長のワズと、前回騎士団を訪れたときに一人でちょこまかと周囲を世話していたミアムは役に立つような気がしたので連れてきている。

 あとはエヴァンは当たり前のような顔をしているし、面白そうに感じたのか、ルーもいる。ファリス村のすぐ裏手とはいえ、魔物が出る可能性もあるので、危ないんだけどなあと渋い気持ちになったが、この間の立ち回りを思い出すと、むしろ一番足手まといなのは私かもしれない。


 私は髪の毛を一つに括り、ついでに今日はドレスではなく乗馬服を着て、ぴたっとしたズボンを穿いている。とはいえ、馬がいるわけではない。動きやすい服といえばこれくらいしかなかったのだ。私の服装を初めて見たとき、エヴァンの眉間の皺に、さらに一段深く皺が刻まれたのを目撃してしまった。令嬢らしくないと怒っているような気がするので全力で無視した。相変わらず、頭がカチンコチンな男め。

 それで、今現在私が何をしているかというと、薬のための材料探しだった。


 冬の終わりに領地を蝕む病――通称、黒喘病(こくぜんびょう)


 致死率が高く、感染方法も不明。ただし、人から人に感染する度に無毒化していき、ファリス村を越えて別の街にまで伝染した頃には、ただの風邪のような存在として扱われた。

 ファリス村は大打撃を与えられたにもかかわらず、王国は私たちの助けを求める声を無視した。私たちファリス村が一番苦しんでいるときは知らんぷりなのに、他の大きな街に風邪のような症状が出始めた頃、王都は重い腰を上げて黒喘病の薬を作った。


 主な材料はたったの三つ。運がいいことにも、そのうち一つはファリス村近辺の村に生息するというのは、一周目の際に私が調べたことだ。もちろん、知ったのは病が猛威を振るった後で、なんの意味もなかったけれど。


「あのう……俺たちもこの辺りの森についてはそこそこ知ってるんですが、領主様もご存じなんですか?」

「ええ、一応ね」

「領主様はついこの間就任されたばかりなのにですか? 本当にすごいですね」


 騎士団長のワズに伝えると、彼は何度も瞬きをして、大げさに驚く。

 この間は生意気な赤毛という印象だったけれど、すっかり酒が抜けたからか、明るく感じる。ワズはよく見ると二十代半ばくらいで、顔の目立つ部分に刀傷があるが、人の懐の中にするっと入り込めるような愛嬌を持っている。

 バルグではなくワズが騎士団長を勤めているのは、騎士団員たちは彼を支えたいと思っているのかも。見習わねばだわ。こういう観察も、悪女には必要よね。長所を吸い取って、演技派の女になるのよ。


「それで、領主様はどこを目指していらっしゃるんでしょうか」

「場所はファリス村のダンジョンの、さらに南よ。採取したいものがあるの。ワズもこの辺りのことはわかってるのね」

「はい。魔物が出る可能性がある場所ですから」

「なるほどね……」


 知っているといいつつ、私の最新の知識は、今から三年後のものである。大きく変化してはいないだろうが、いきなり魔物が出る可能性もあるし、まずはワズに先導してもらうことにした。


「働き手の多くは、この道を通ってダンジョンに向かうのね」

「その通りです。今日はダンジョン採掘は休息日なので、みんな畑の方に行っているでしょうが」


 ファリス村は、ダンジョンから出る鉱石を細々と他領に出荷し、生計を立てている。

 しかし出荷量もそれほど多くはないので、収入としては頼り切れるものではなく、食料は自給自足で賄わなければいけない。土壌もあまりよくないため植物が育ちにくく、冬になると食料が不足しがちだ。黒喘病でたくさんの住民たちが倒れたのも、食料がなく体力をつけることができなかったことも理由の一つだった。

 今から採取するものは、黒喘病の薬であると同時に食料不足にも対応できる、まさに夢の植物なのである。


「ダンジョンの視察には行かないのか」

「え? そうね。うん、どうせ通り道だし寄ってみましょうか」


 口を閉ざしたままじっと付いてきていたルーに提案され、私は思わず瞬いた。

 ルーは、ファリス村の至る所に出没しているらしい。ダンジョンにも興味がそそられたのだろうか。

 たどり着いたダンジョンの入り口は、まるでただの洞窟、という印象だった。入りやすいように周囲の蔦は切られ整備されているが、この辺りは草の成長が早く、手入れが大変らしい。他の場所だと植物が育ちづらいのに腹立たしい。ここで食べられる植物を植えてみたらどうかしら、とふと思ったけれど、変な影響を受けて、食べられないものができてしまいそうだとすぐに考え直した。


「……人気が無いと、なんだか寂しいわね」


 私が最後にダンジョンを見たのは、スタンピードで魔物が溢れる前のことだ。今は細々と鉱石を採掘できているが、それも今から二年後には鉱石すらも取れなくなる。災難続きのダンジョンともいえる。


(魔物なんて、このダンジョンにはほとんどいないのに。どうしてスタンピードが……)


 なんとなくダンジョンの外の土壁に手をついて、【鑑定】を使用する。

 その瞬間、私は出てきた結果に目を丸くした。


 頭の中に流れ込んだ文字を、何度も確認する。けれど、間違いない。私の様子のおかしさに、みんなが不思議そうな顔をしていたので、慌ててなんでもない顔を作る。

(薬を作るのに必要な三つ目の材料が、まさかこんなところにあっただなんて)

 魔物など出ることのない、鉱石のみが出現する穏やかなダンジョン。

 そのはずなのに、ダンジョンの【鑑定】には、はっきりと表示されていた。


【ファリスのダンジョン:レッドドラゴンの巣】


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ