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二周目領主はもうだまされない!  作者: 雨傘ヒョウゴ


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17 びっくりするほど真顔で嘘をついている



 …………どうしてこんなことになったのだろう。

 私はルーとエヴァンと並び、私の目の前で土下座をしている騎士団員たちを見下ろす。


「生意気なことを言って、すみませんっしたァーーーーーッ!!!!」

「「「「したァーーーーーッ!!!!」」」」

「…………」


 騎士団長のワズを先導に、団員たちの野太い声が響き渡った。暑苦しいな……。

 ちなみに、ルーに気絶させられた副団長も、しばらくすると目を覚まして、今は団長の隣で深々と頭を下げている。それよりお医者さんに診てもらった方がいいのでは。ピンピンしているので大丈夫なのかな。


「ファリス村の騎士団として受け入れてもらったとき……本当に感謝したんです。この村のために生きようと誓ったくせに、平和を理由にして、いつの間にか馬鹿みたいにぐうたらと生きて……。領主様やご子息のおかげで、目が覚めました……ッ!」

「そ、そう……」


 まあ、目が覚めたならいいかな……?

 もとの予定とそれほど変わらないし、なんとかなりそうなら(?)よかった。

 そう思って、騎士団員たちを見回すと、唯一こちらに顔を上げて、きらきらと目を輝かせる男の子がいた。……ミアムだったかしら。女の子みたいな、可愛らしい少年の騎士だ。多分十二、三歳くらいだろうか。ルーよりもお兄さんね。


 ミアムの視線はあるところに一心に注がれている。まさにその瞳の輝きは眩しいばかりである。汚れを知らなそうなきらきらの瞳に、なぜか気まずい気持ちになってきた。まるで昔の自分を見ているようだ……。


「あ、あのっ。ルー様と、お呼びしても!?」

「……ん? まあ、好きに呼べ」

「はいっ! ありがとうございます! ルー様は領主様の御子息ならば、ルー様がそんなにお強いのは、領主様が育ててくださったからなのですね!?」


 残念ながら、私とルーはまだ出会って数日よ。一週間もたってないわ。

 ルーは表情すら変えずに軽く頷く。


「ああそうだ」


 びっくりするほどさらっと真顔で嘘をつくわね。こちらからお願いしといて反応に困るわ……。


「やっぱりそうなんですね! だったら……領主様はルー様をこんなに強くお育てになったということは、それと同じくらい、俺たちも強くしてくださるってことですよね!?」


 これに対しての返事を、ルーはしなかった。ちらっと私に視線を向ける。

 ルーに影響を受けてか、騎士団員たちは次々に私を見た。この場にいる人間たちの視線を体中で受け止め、私は口元をもにょもにょさせる。


「…………っ」


 腕を組んで、ちょっとだけ下を見た。ぶるっと体を震わせた後で、今度は力いっぱい拳を空に向かって突き出す。


「あ、あったり前でしょ! みんな! 私に、ついてきなさ~い!」

「「「「ワーッ!!!!」」」」


 野太い声が幾重にも重なった。

 これで、なんとかなる……のだろうか?

 いや、私はなんとかせねばいけないのだ。


 ――ファリス村に襲いくる最初の危機を退けるために。



 ***



「リッカ様、本日はどんなお召し物になさいますか?」

「うーん、そうねぇ……」


 そう問いかけるのは、晴れてメイド長となったユフィである。

 メイド長が直接領主の世話をするのはおかしなことだろうが、私はあんまり屋敷の人間たちを信用していない。ユフィも信じているわけじゃないが、関わる人間はなるべく少なくしたい。

 メイド長も、侍女の仕事もさせるとは、なんと過酷(ブラック)な職場だろうか。

 しかし、脅しに屈しやすいユフィを御すことは容易い。私の手腕を見せてくれるわとオホホと勇んで『侍女も兼任してほしい』と伝えると、ユフィはぱあっと花が咲いたように喜び、『喜んでお引き受けいたします……!』と笑顔で返答した。何か想像と違うような?


 まあ、さっさと話が終わるに越したことはないわよね。


 ユフィは私の薔薇色(ローズピンク)の髪を丹念に櫛でといていく。お肌の手入れも完璧だし、城にいた頃はほとんど放置されていたので、こんなにぴかぴかなのは人生初めてなのではないかしら。鏡に映る自分が輝いているわ。


 ――税金泥棒と呼ばれていた騎士団の性根をなんとか叩きのめしたあの日から、もう一週間がたっている。騎士団が心根を入れ替えたため、もうめちゃくちゃな請求は上がってこないことを侍従長のグレイに報告すると、彼は冷静な顔のまま、固まっていた。

 わかるわ。これでも死ぬ前は三年の時間を一緒にいた相手だもの。冷静沈着な表情のように見えて、あれは相当混乱していたはずよ。


『は? 何言ってんだこいつ?』と考えているのが目に見えたわ。


 そして私の報告通り、騎士団は変わった。私の指導で、と言いたいところだけど、残念ながら私ではなく、エヴァンの指導のもとで。

 この先の未来を知っていたとしても、私は武芸に関してはまったくの素人だ。

 さすがにどうしたらいいものか、と頭を悩ませていたら、いつの間にかエヴァンが指導してくれることになった。腐っても王国騎士団出身の男だから、ヘタれたファリス騎士団にご立腹なのかもしれない。


『……これが、必要なこととリッカ様がご判断されたのでしたら、俺は従います』


 とか、よくわからないことも言ってたけど。

 こっちとしては超絶ラッキーだわ。ビシバシしごいてちょうだい。


「……リッカ様?」

「ああ、ごめんなさい。今日すべきことを考えていて……」

「リッカ様はお忙しくいらっしゃいますから。私たち使用人たちは、リッカ様のお力になれるように全力を尽くします」

「まあ……」


 なるほどうまいわ。この間髪をいれずな返事は、私って慕われているのでは? と思わず勘違いしちゃいそうになるわね。心の手帳にメモらねば。となれば、私も騙されているふりをすべきだろう。騙されていなくとも、騙されているフリ。これ、詐欺の基本。


「ありがとう。あなたたちがいるから、私は憂いなくファリス村を守ることができるのよ」

「そ、そんな……! もったいないお言葉です……! 嬉しいです、嬉しいです……!」

「…………」


 そこまで大げさに反応されると、言った側も困るわね……。とりあえず反応に困ったら笑顔しかできないけど。


「今日は、そうね。動きやすい服装と髪型にしていただけるかしら」

「動きやすい……ですか?」

「そう。冒険も、ときには必要なのよ」


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