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二周目領主はもうだまされない!  作者: 雨傘ヒョウゴ


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12/16

12 うまい感じに言い訳したら、なんかすごくうまい感じになった


 さめざめとユフィは泣き続け、メイド長は床にくずおれ、解雇を言い渡さされた者たちは愕然とし、関係のない者は怯え……まさに食堂は阿鼻叫喚。そんなことは関係なく、私ひとり、にっこり笑顔。は~。すっきりしたわー! ちなみにルーはいつの間にか一人食事を満足そうに続けており、エヴァンは目を大きくしてただ立ち尽くしていた。


 しばらくすると騒ぎを聞きつけたグレイが駆けつけ、屋敷の兵士とともにメイド長や解雇された者たちを連れ出していく。よし、これにて一件落着。


(ちょっとやりすぎたかしら? と思わないでもないけど、先のことを考えると効率よく動ける人員にした方がいいからね。足を引っ張る人間は、今の私にはいらないわ)


 めざせ恐怖政治。必要なのは、私の指示に一糸乱れぬ動きで従う忠実な下僕である。


(ユフィも、優しい言葉をかけられても、この結果を見たら嘘だと気づいたでしょうし……一周目の私じゃあるまいし)


 あとは残った面々が、好き勝手に話を脚色して伝えてくれるだろう、と満足していたときである。


「……リッカ様、ありがとうございます!」


 ユフィは、まるで祈りのポーズのように両手を眼前に握りしめ、瞳をうるうるとさせて私を見つめる。


「……ん?」

「たしかに私は、メイド長のイーリに脅されていました。けれど私には病気の母がいて、どうしてもメイドの仕事を辞めることができず……。メイド長にしていただけるとのことでしたら、お給金も上がります! 母のために、もっといい薬を買うことができます! まさか、そこまでお調べいただいているとは……!」


 いやなんのことだかよくわからない。

 ご病気のお母様がいるからメイド長の脅しに従っていたとは、意外とシリアスな背景を背負っていたのね。


「ありがとうございます、リッカ様、ありがとうございます……!」


 悪女ぶったのに感謝されるとは、一体どういうことだろう。何か違うような……と思いつつ、崇められるのは悪い気分じゃない。

 まあいいか、と私はゆったりと食事の続きをすることにした。


「そんなにお礼ばかり言っていると、せっかく料理長が作ってくれた料理が冷めちゃうわよ。ユフィ、泣いてばかりいてはいけないわ。食事の続きをお願いできるかしら?」

「……はいっ! リッカ様!」



 ***



「リッカ様、お待ちください!」


 一波乱あった食事を終えて、ルーは自室に、そして私は屋敷を見て回ろうとしていたときだった。

 エヴァンに呼び止められて、すっかり彼の存在を忘れていたと思い出した。

 護衛といいつつ、王家からの監視役の彼は、いつも私が知らない間に側にいて、また気づいたら消えていた。私を守る気なんてどこにもないと途中で理解したので、こちらも気にしないようにしていた。ついついその癖を引きずっている。


「……エヴァン、いきなり大きな声を出さないでちょうだい」

「し、失礼しました。しかし……」

「なあに? 勝手に移動するなと護衛が説教でもする気かしら」

「そうではなく、なぜ、はっきりと……あのようなことを、否定しないのですか!」


 折良く、周囲には誰もいない。言葉を濁し、エヴァンは顔をしかめて話す。

 ああ、『愛人』扱いのことね。大変だわ。エヴァンに適当にごまかそうと思っていたのに、これも忘れていたわ。


 でも大丈夫、作戦を練っておいたもの。


「……ねぇ、エヴァン。屋敷の人たちが、私を前領主の愛人と勘違いしているのは、タニーマリア姉様の策略よ。タニーマリア姉様は私をファリス村に送り込んだ張本人。彼女以外の犯人はありえないわ」


 エヴァンはハッとして目を見開く。おっと、この反応は、やっぱりエヴァンもわかっていたのね。真面目なエヴァンだから、直接タニーマリアと繋がっているわけではないだろうけど。


「もちろん、不愉快な噂だわ。けれど噂が流れることで、逆に私たちにもメリットがあるのよ。例えば……隠れた人間性を見ることができる、なんてね」

「……まさか、やはりあなたはすべて事前に調べた上で……」


 そんなわけないでしょ。


 あなたまで騙されないでよ。と心の中で突っ込みながら、私は妖艶に微笑んだ。何も言わぬが花というやつである。これ以上話せばボロが出ちゃいそう。


「――――」


 エヴァンは何を言うこともなく、ごくりと小さく唾を呑み込む。

 反論がないならラッキー! これにて終了! と思っていた私だったのだが、ちょうどそのとき差し込んだ西日が、私の横顔をそれはもう美しく彩っているなんて知るわけがなく。


 呆然とする騎士の耳が、わずかに赤く染まっていることにも――夕日の色で埋もれていて、まったく気づかなかった。


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