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そう言った男の腕には無数のタトゥーが入っていた。
「そうだよ、早く帰った方がいい」
「あ〜、なんなら家まで俺らが用心棒してあげようか?」
僕は藁にも縋る気持ちで声をひりだした。
「僕…何にもわからないんです!助けて貰えますか!?」
男の1人はヘラヘラと笑いながら答えた。
「へへ、いいよ?」
もう1人の男は僕を気味悪がっていた。
「おい、ソイツは金になんねーって…それに何か気持ちわりーよ?」
「いや…それでもゼロでは無いだろ?」
「オイ…いくら持ってる?」
僕は自身の持ち得る唯一の硬貨を出した。
「コレしか…」
男は哀れそうに僕を見て口を開いた。
「なるほど、餌だな…いい朝を…」
僕は言っている意味がわからなかったが一応お礼を言った。
「あ、ありがと…」
男達は顔を見合わせた後小さく笑いながら一言残した。
「ハハッ…皮肉もわかんねんだな」
その2人の男が去ってから暫くして僕の周りから何やら唸り声が聞こえた。
人では無い…野犬の声だ。
僕はいつの間にやら喉を鳴らす野犬4、5匹に囲まれていた。
奪い合う残飯の無い中、彼らの獲物はどうやら僕の様だった。
僕は唯一面識を持っていた、オジサンの中華料理店のドアを叩き助けを求めた。
ドンドン!
「助けて下さい!野犬に追われています!」
店の中からテレビかラジオの音と水の流れる音は聞こえたが、返事は無く、野犬の喉を鳴らす音だけが近づいて来た。




