15
フォックスは大きな有刺鉄線に囲まれた鉄塔へ向かって歩いている様だった。
「あの大きな建物がフォックスの家?」
お金持ちと決めつけた僕が思いを口にするとフォックスに呆れられた。
「バカかお前…あれはここら一帯に配電する変電所だ」
そう口にしたフォックスは更に変電所へと近づくと有刺鉄線近くの芝生を触ると徐に引き上げた。
すると、ハッチが開き隠された地下への階段が現れた。
「行くぞ」
フォックスはハッチの奥へと身体を進めた。
「はい!」
僕は慌ててハッチを手で抑えて中に進んだ。
階段の通路は頭上に並べられた電灯で明るかった。
「電気代すごそうですねー…」
僕はフォックスの背を追いながら話しかけた。
「いや、ここは電気代と家賃は無料だ、そういやボウズ名前は?」
フォックスは振り返ると得意げに話し、足を止めずに僕に名を聞いた。
まただ…僕は名前すらわからない。
「あの…実は自分の事全く覚えてないんです」
下を向き応える僕から目を背けるとフォックスは続けた。
「ふーん…じゃあ俺が付けてやろうか?」
え?なんで!?
「え?嫌です…」
僕は気がつくと恩人であり、尚且つ今後間借りさせてくれる相手に対して即答で返答していた。
「そうは言っても不便だろうが」
フォックスは通路の突き当たりに着くとドアの前に立ち鞄を膝で支えて束ねられた幾つもの鍵を取り出し僕へと応えた。
目前のドアは頑丈そうで無骨な金属のドアだった。
「まぁそうですけど…」
僕は束ねられた鍵を目で追いながら口を開いた。
フォックスは目当ての鍵を見つけたのか明るい表情を見せながら僕に頼んでも無い名前をつけた。
「んー、そうだな分かりやすく『ガキ』でどうだ」
「いや、絶対無いですよ!」
僕は先程よりも早く返事した。




