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「おい…めんどくせぇ!ちゃんと歩け!」

男は荒々しい声をあげジーラの髪を掴み無理やりどこかへ連れて行こうとしていた。


僕は空腹と痛みからか再び、あの幻聴…乾いた男女の声を耳にした。


「危険だ…」


「うん、後ろから殺そう…」


その時だ、僕の背より先程の男と別の男の声が聞こえた。

「何してんだ?」


その声と共に幻聴は消えた。


僕が振り返ると…。


二十代半ばくらいだろうか、だらし無くはだけたシャツに短パン姿の男がガムを噛みながら太々しい表情で立っていた。


はだけたシャツからはそのだらし無さとは正反対に引き締まった腹筋を覗かせていた。


「誰だ貴様!?平民がヒュブリス様に名乗りもせずに…」


男は頭を掻き欠伸しながら返事をした。

「俺か?俺はフォックス…で、何の集まりなんだ?その格好何かのコスプレだろ?」


男の1人が激昂して殴りかかった。

「貴様!!」


だらし無い男…フォックスは男の大振りなパンチを最も容易く2回躱し、顎先に肘を当てた。


「あぶねーだろ…」


カッ!


ドサッ…


「許さぬぞ!」

男が倒れるともう1人の男は腰に下げたレイピアを抜いた。


「いちいち大袈裟だな…ガキかよ、ペッ」

フォックスはめんどくさそうに口を開くとガムを吐き捨てた。


レイピアを手にした男はフォックスの喉元に向け容赦なく突き出した。


フォックスは先程同様に軽い身のこなしで避け再び掌を顎先に打ち据えた。


トッ!


ドサッ…


するとジーラの髪を掴んでいた男は手を離しフォックスを指差し、怒りを露わにした。

「ヘメラにも住めぬ下民が!俺はサソリのアンタレス次期党首!ヒュブリス様だぞ!!我がアンタレス家を愚弄するつもりか!?」


「アンタレ…なんとかは馬鹿にしてねーよ」

フォックスは悪気無くヒュブリスの怒りの火に油を注いだ。


ヒュブリスは怒りを抑えきれずに声を荒げた。

「弁えろ!惨めなエレボス民の分際でぇ!」


「おいおい、ガキの…それも女の髪を掴んで暴力振るうテメーの姿…それ以上惨めな事あるか?」

フォックスは怒り狂うヒュブリスを他所に指で何かを巻き取るような仕草をしながら口を開いた。


「おのれ!死を持って償え!!」

ヒュブリスがそう言ってレイピアを抜こうとした瞬間…。


「な、何だコレは…」

ヒュブリスは首に違和感を感じて手を止めた。


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