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我々が生きる21世紀は世界は電子機器の発達、医療技術の発展により豊かな時代となった。


しかし、その反面で貧富の二極化が加速、更には少子化に温暖化、それに伴う穀物不足等、暗い状況にも直面していた。


それでも無慈悲に時は流れ世は22世紀、西暦2105年現在、21世紀とはまた違う世界を迎えていた。


地球は温暖化の一途を辿り、地は裂け樹木は干からび、海すら枯れ果てた。

そんな中で生き物が生きていけるはずもなく全て死滅した。

それでも人類は絶滅する事はなかった。


人類は日の上がる時間に行動する事を諦め、ドーム状の安全区域エデンを作り生きていた。


正確には変革を迎えたのは西暦2090年


昼夜が逆転しただけで人類は繁栄していた。


安全区域エデンは空調、照明装置に大量の電力を必要とする為、原子力による発電を人類は選択して来たが、日中注がれる度を越した熱量は金属を捻じ曲げアスファルトを砕くため発電所は安全に稼働出来ないと踏み、人類は容赦なく注がれる日光の膨大な熱量を逆手に取り大量のソーラーパネルを通じてエネルギーとして利用し、気温の下がる夜間に人々は活動した。


エネルギー源の太陽光発電に必須なソーラーパネルは5年の寿命全うする前に取り替える作業こそ必要なものの、人類は安全且つ無限に近いエネルギーを手にし、繁栄した。


しかし、同時に人々はエネルギーを利用する為の多額の税金を背負う事にもなり、エデンに土地を持つ者や、エデン外にソーラーパネルを所有する者には楽園であったが、謂わば貧困層には生活を脅かす重税であった。


税金を支払えない者達は夜間にソーラーパネルを交換し続ける労働による支払いを選ぶほか無かった。

交換業務を続けた彼らは過酷な業務に多くの者が命を落とした。


社会は彼らを消耗品…expendablesエクスペンダブルズとpeopleピープルをかけ


エクスプルと呼んだ。


そのエクスプルの犠牲の上では有ったがそれでも、充分なエネルギーと資源の再生技術までもを確立した人類は誰しもが衣食住において困らない楽園その名の通り『エデン』となった。


だが、長くは続かなかった。


人間の心までがその技術に比例して成長する事は決して無かったからだ。


この世界に置いての通貨である電力

「elエレ」

この「el」を生産する畑、即ちソーラーパネルの面積を奪い合い争い大きなテロが起こった。


人間の傲慢さ、強欲さ、怠惰さ、そして何より

「嫉妬」から争いが起きエネルギーを暴走させ大勢の人が死んだ。


…とのみ政府は発表したが、詳細までは庶民には伝えられていない。


それから、5年人類は自身たちの過ちを踏まえ

争いを避ける為に一つの答えを導き出した。


平和を維持する為貧困層でも夢を掴める場、競技を設けたのだった。


誰一人血を流さない決闘…『アヴァターラ』


『アヴァターラ』とはサンスクリット語


昨今ではよく耳にする「アバター」の語源で有り

神の化身を意味する。


その競技『アヴァターラ』は脳波を読み取る装置を頭部につける事で自身の分身なる者を通じて仮想空間の中で戦うという謂わばeスポーツのような物だ。


しかし、自身のイメージした者に簡単になれる訳ではない。


色や形、質量に熱量、様々な情報を細く持てば持つ程に強く反映し、逆にイメージが曖昧な物や保てない物は消える。


例えば、リンゴを想像してみて欲しい。



頭に浮かんだそのリンゴに色は有っただろうか?その色は本物の様にグラデーションが有っただろうか?大きさは何センチくらいか?


…細部までイメージ出来た人は少ないのではないだろうか?


幾度と見ている物にすら人の認識は曖昧だ。


その為大多数の人間が自分自身の外見、能力値とそう大差のないアバターを出現させる。


その中で一部のイメージ能力が高い者や強い信念を持つ者が勝ち上がるのがアヴァターラだ。


その『アヴァターラ』の登場から5年の歳月が流れた今2105年…


やはりエクスプル達の多くの犠牲は続いてはいたが、世界的に見ると紛争、内乱で亡くなっていた人の数に比べれば皆無に等しかった。


この物語はそんな戦争の無い平和な世界…


いや、犠牲の上に成り立つ虚像の平和を生きる者達が仮想空間という更なる虚像の中に未来を夢見て足掻く物語だ。


………



天井に消えかかった電灯が灯る薄暗い通路


先はハッキリとは見えない


左右の壁にはドアが複数存在した。


その通路をフラフラと歩く少年…


少年はボサボサの黒髪で歳の頃10歳といったところだろうか。


少年はふと一室のドアの前で立ち止まり左へと目を向けた。


ドアは鉄製で錆び付いていた。


徐に少年はそのドアを開け中へ入った。


ギギィ…ィ


開かれたドアから微かに差し込む光で少年の前に僅かに開く開戸のクローゼットが見える。


クローゼットには大量のメモが貼り付けられていた。


ガサガサッ…


その中から何か音がした。


少年は恐る恐るクローゼットの隙間を覗き込む…


中は暗くて何も見えない。


…奥から掠れた声が聞こえた。

「…らい…」


「たぃ…」


少年は掠れた声に恐怖しながらも声を出した。

「だ、誰か…いるの?」


少年がクローゼットの奥に声をかけるとその声にかすれた声の主は反応した。

「…返せぇ!!!!」


「……!!!」

少年は腰を抜かし声も出せず後ろに倒れた。


……………


……




ガシャ!!


少年は錆びたフェンスを自身で蹴った音で目を覚ました。


「ハァ!ハァ…夢…か」


少年は身体を起こし周囲を見渡すと廃墟のような街が目に飛び込んで来た。


周囲には電灯がいくつも有るが、どれも手入れされていないのか消え掛かっていた。


それでも、明るく見える事に違和感を感じた少年が空を見上げると空にも電灯が付いていた。


正確には高い所にドーム状の天井が存在した。


少年は不可解な現状を理解できず考え込んだ。


天井?今は夜なのかな?


僕はいつからここに?


そもそも僕は誰だろう?



次に僕は自身に目をやった。

大きなTシャツに短パン、あとは壊れた金属の首輪の様な物…


僕はとりあえず不可解な首輪を外し眺めた。


何か書いてある…※Tartaros Cerber…?

※タルタロスサーバー


そこから先はちぎれていて読めない。


服を捲り自身の胸元へと目線を移すと胸に十字の傷跡と身体中に有る火傷の跡…

僕にはそれすらも記憶になかった。


僕は唯一の手掛かりとなりそうな首輪をポケットへとしまった。


色々な事が頭を巡ったがそれよりも僕には差し迫った問題が有った。


それは…極度の飢えと乾き。


何か…何か食べる物は…。

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