2-21.ナギ村
R15の残酷描写が含まれる場合がありますのでご注意ください。
「よく見ててくださいね」
クリスティーヌは氷柱を作った。
「おーー」
村人からはため息のような歓声が起こる。パチパチと拍手をする人もいる。
「ここまでは魔導士の仕事ですから皆さんのお仕事はこの後になります」
暫くすると、土の中から黒い根の先端が飛び出してくる。
「お、なんか出てきた!」
「信じられない。この根っこ、操られてる」
レイたちにはおなじみになってしまった光景が村人には珍しく、その処理方法にいちいち驚いてくれる。
「いよいよね、この後の剣士の出番」
「よし、説明しよう」
「さてここで、この光り始めた点がこの植物の成長点です。ここを『魔力のない刃物』で切り落とすことになります」
レイが、やって見せる。
「おおーーー」
村の人々が歓声を上げる。
「ではちょっとやってみてください。この光っているところを鍬で」
村人を代表して村長がやってみる。
レイたちの剣技に比べると時間はかかるが、丁寧な作業で確実に成長点を狙っていく。
「わぁ。枯れていくぞ!」
「我々でもできる!」
「畑のこいつを伐採できるぞ!」
村人たちは大喜びをして大歓声をあげた。
「よかったわね。これで国中に広がった黒い根の伐採のめどが立ったわ」
「鍬には最初から魔力なんかこめられないからな」
喜びに沸く村の人々は口々に言う。
「いつもの薪割りの作業と全然変わらないぞ」
「これで、自分たちの村を自分たちで守れる。美しい畑に戻せる」
村人は代わる代わる鍬を振るって黒い根の成長点を切って喜びを爆発させる。
「国中に魔導士を派遣するには、少し順番を考えなければいけないけど、これで魔導士を派遣しさえすれば、後は農民自ら切り落とすことができると判明したわね」
レイは早速国王に使者を送り、実験成功を告げた。ティリア村には、ナギ村と並行してその周辺の地域を担当することになった魔導士が同行し、畑は農民が、その他の地域はマーガレットとその弟子たちが伐採に向かっている。アルテアの港湾騎士団も魔導士と組み、畑以外の場所、街道などの整備のために全国に散っていた。
この国の復興のためには、魔導士の活躍が必須だった。
「クリスティーヌ。こうなったら魔導士の評価は上がらざるをえないな」
「ええそうね。ありがたいわ。やっぱり魔導士と剣士揃わないとうまくいかないのよ」
「魔導士の育成はウルスラ先生が急いでくれてるからな。順番に派遣されていくことだろう」
「ウルスラ先生が引き受けてくれるんだもの、何も心配することないわ」
*
国中に蔓延る黒い根伐採の目途もついた。農民たちは意外にも「自分たちの手で伐採できる」と、喜んで作業に参加した。国中の黒い根をすべて伐採するのにはまだ時間がかかるだろうが、それも半年以内には片付くだろう。
「なんとか、畑を守り切れてよかった」
「そうね、一時はどうなることかと思ったわ」
「あとは、王城が直ったらお風呂に行かなくちゃ」
「あ!ナサニエル殿下が村に来たいと言っていたことを村長に相談するのを忘れてた」
「あ、大変!」
「村長も慌てるだろうな」
レイとクリスティーヌは笑った。
実験成功の報告を受けたサイラスはウルスラと、魔導士の派遣計画を練るとともに、過去に先祖が行った「根の民」虐待の歴史を公開した。
それは、驚きを持って迎え入れられたが、今後の教訓として貴族たちも心に刻むことになった。
サイラスやナサニエルのナギ村行きの件は、案の定村長は慌てふためき、大ごとになったが、非常勤剣士や非常勤魔導士もいることだし今後も静養やら研修やらいろいろな用途に使うために大きな宿泊施設を建設し、時には王族の別邸、時には騎士や魔導士の駐留場所として、また、村の備蓄庫としても地域の拠点になることに決まった。
レイは、いつものように夕飯に蒸し野菜をつまんでいた。
もうすぐ秋ナスが収穫できる。今回もレイとクリスティーヌが不在の間、レイの畑は村の人々が世話をしてくれていた。
「もうすぐナスが食べごろだな」
「そうね。お世話してもらってた分、皆さんに配りましょうね」
「ああ」
「このジャガイモ、おいしいな」
「ここの野菜はなんでも美味しいわよ」
遠くの空が明るい。きっと魔導士と農民が頑張っているに違いない。
「今が一番いい季節だな」
風が心地よかった。
レイはナギ村での静かな暮らしという宝物を手にすることができました。
第二部完走いたしました。少し休んで番外編を投稿できたらと思います。
ここまでおつきあいいただき、本当にありがとうございました。




