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剣を奪われた「剣聖」、「農夫魔導士」になる~農夫の知恵で国を救う~  作者: 赤木典子


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2-10.お風呂の確約と港湾騎士団の地固め

R15の残酷描写が含まれる場合がありますのでご注意ください。

翌朝。王城が陥落したことは、まだ公になっていないようだった。


「おはようございます」

 昨晩たっぷり寝たことで体力、魔力ともに回復したクリスティーヌは、空腹だったので早めに朝食に現れた。

 そこには待ちきれないマーガレットの教え子たちがもう顔を揃えていた。


「楽しみすぎて、朝早く目が覚めちゃったよ」

「昨日の夕食美味しかったもんなぁ」

「朝はどんなごはんがでるのかな」


 クリスティーヌは、彼らに話かけてみた。

「あなたたち、すごい腕前だったわね。感心したわ」

「でも、真剣を使ってる師匠を見たのは初めてでびっくりしました」

「そうなんです! 初めて伝説の白銀の妖精を見られました」


 自分たちが褒められたことより、師匠の剣技を見れたことの方に興奮していた彼ら。

 クリスティーヌは、ほほえましい気持ちになったが、そういえばちゃんと訊いておかないといけないことがあるのを思い出した。


「そういえば。みんなはお風呂に入ったの?」

「入りましたよー!」

「蛇口をひねるとお湯が滝のようにでてくるんですよ!」

「水じゃなくてお湯がこーんな広いところにためてあって、その中に入ってあったまるんですよ!」

「それはもう、全部の疲れが落ちていくようでしたよ!」

 彼らの興奮は止まらない。


「まさか、卒業試験に来て離宮のお風呂に入れてもらえるなんて想像もしてなかったよなぁ」

「こんな贅沢、夢のようだな」


 彼らの話を聞いていたクリスティーヌは、たまらずため息をついた。


「うーーーん。みんなだけずるいわ。私もお風呂に入りたかったぁーーー!」


 マーガレットの教え子たちは一斉に笑った。

 にぎやかな朝食風景だったが、ちょうどレイとマーガレット、そして国王のサイラスが現れる。


「クリスティーヌ。すべてが終わった暁には王城にある『王家専用』の湯殿で、心行くまでお楽しみいただくことをお約束しますよ」

 サイラス国王が話に割り込んできて言う。


「え? ほんと? ね、レイ。聞いた?」

「ああ、聞いたぞ。楽しみにしておくといい」


「陛下、ありがとうございます。よぉし、まだ何があるのかわからないけど、頑張るわよお!」

 クリスティーヌのあまりの気合にその場にいた人々が笑った。


「さて、早速だがこの後の行動について相談したいので、大人たちはちょっと集まってくれ」


 レイが、その場の雰囲気を引き締めるように、みんなに話しかけた時。


 やつれ果て、半分泣きそうな顔でキースが朝食に現れた。

 彼はすぐにでも朝食に手を付けたい様子だったが、サイラスがいるのを見ると朝食とサイラスを交互に見比べていた。国王が立っているのに、先に食べていいものかどうか考えるだけの理性はまだ残っていたらしい。


 サイラスは言った。

「私はあちらで済ませてきましたから、大丈夫です。どうぞ遠慮せず」

「では、遠慮なく」

「いただきまぁす」

 一斉に食事がはじまる。


 港湾騎士団の騎士たちも団長の号令を待つばかりだった。

 キースは眼をギラギラとさせて叫んだ。



「ああああああああああ、おなかが空いたよぉぉぉぉぉいただきまああす」


 騎士団長のその情けない声は、部屋中に響き渡った。




           *





「さて、今後の動きについて話し合おう」

 急に現実に引き戻すようにレイが淡々と話す。


「その前に、陛下。あちらで済ませたとのことですが、ちゃんと召し上がったのですか?」

「それが、その......。あんまりのどを通らなかったというか」

「やっぱり」


 レイは予想通りとばかりに肩をすくめる。

「陛下。お気持ちはわかりますが、今陛下に倒れられるわけにはいきません。みんなのためにも、食べられるときはきちんと食べてください。いいですね? 」

 レイがサイラス国王を諭す。


「正論です。面目ない」

「ではスープだけでも」

サイラスの目の前に滋養のスープが運ばれてくる。ある意味病人食だ。

サイラスがスープを飲むのを待って、話は再開された。



 そしてサイラス国王から、現況が語られた。昨日の夜遅くに早馬がついたこと。アルテス港にかまけている間に王城が黒い根に包まれ、すでに乗っ取られたこと、その中心部に、行方不明だったナサニエル王兄がいるらしいこと、など衝撃の事実が淡々と明らかにされていった。


「まず、最初に言っておく。王城の危険は一段階上がると思っていてくれ。クリスティーヌと二人で、魔導士たちやウルスラ先生の力も借りつつ王城の様子を探ってくる」

 レイが説明し、その場の皆が頷く。


「その間、マーガレットはサイラス国王の護衛を兼ねて子供たちを連れて帰る」


「準備ができ次第マーガレットとサイラス国王は、王城北にある王家の狩猟小屋で待機」


「そしてナサニエル殿下を救出する」


「こういう段取りでいいでしょうか? サイラス国王」


 サイラス国王は深く頷いてマーガレットを見る。


「わかったわ。護衛たちと一緒に、北の狩猟小屋まで守り切るわ」


「それから陛下。一つお願いしたいことが」

「なにかな」


「港湾騎士団ですが。昨日は私も言葉が足りず、彼らを混乱させてしまいました。しかし彼ら騎士と魔導士の昨日の経験値はこれからこの港を守っていくのに絶対必要です。できれば騎士団長のこれからの方針を聞いてやってください」

「わかりました」




 クリスティーヌは後でこっそりレイに尋ねた。

「なんで、キースをかばうような発言をしたの?」

「ん? 考えてみれば、事情を詳しく説明しなかったこちらにも非はあった。突然訳分からない奴らが入ってきたら、誰だってああなるだろう」


「確かに。任務に忠実なら尚更よね」


「キースはちょっと家柄自慢で困ったところもあるが任務に忠実なところもあるし、実力もある。それに、頭の固い昨日の行いには、君がお灸を据えたんだろう?もういいかと思ったんだよ。敵になるのが目的じゃない」


「それもそうね。十分情けない一夜を過ごしたと思うわ」

「それに、この港はなんとしても守ってもらわないといけない。やっぱりキースが適任だと思うんだ」




 サイラス国王は出発前にキースを部屋に呼んで話をした。

「この度、大変な局面を乗り越えてくれてご苦労だった。これからもこの港を守ってくれ」

「陛下」

「この港を守るために何が必要か、これからもよく考えて対応してくれ。協力は惜しまん」

「御意」

「では行ってくる。後は頼んだ」


 キースは最敬礼で国王を見送った。



「さて、港湾騎士団の者たちに『魔力を込めずに切る方法』を練習させるとするか。奴ら文句を言うだろうなぁ。だが、必ずやらせる。もう二度と同じ過ちは繰り返さない!」



ナサニエル救出と王城の奪還に向けて動き出しました。

ナサニエルが敵に捕まっている状態では攻めるに攻められません。

まずはナサニエルをどうやって救出するべきでしょうか?

キースも立ち直りましたよ。お楽しみに!

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