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剣を奪われた「剣聖」、「農夫魔導士」になる~農夫の知恵で国を救う~  作者: 赤木典子


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番外編1 祝賀会の夜―新しい息吹ー

本編に入れられなかった諸々です。

 ギデオンを倒した日の夜。レイとクリスティーヌとこの前と同じように万が一に備えて「音を送る魔道具」でレイを監視していたウルスラは魔導士たちの隠れ家を訪ねた。昼間、帰りがけにうれしそうな魔導士たちに念を押されていたのだった。


「夜、必ず来てくださいよ、祝勝会しますから」

「レイさん達いないんじゃ、しまらないですからね」

「絶対ですよ、お待ちしてますから」

 彼らは充実感でいっぱいだった。




 彼らと別れてから、レイがぽそりと言った。

「私はただ間引きをしただけなんですけどね。これからどう耕し、どんな作物を育てていくかが大事ですよね」


「そうかもしれないけど。今までは間引きすらできなかったのよ。上出来だわ」

 しみじみと空を見上げて深呼吸をしたクリスティーヌは言う。なんとなく開放感が漂う。


「確かにそうですね」

「それに、私は後処理を全部彼らに丸投げして畑の冬支度のために帰るわけですし」


 それは魔導士の側から申し出たことだったのだが、本当のことを言えばレイは少しだけ後ろめたかったのだ。




 祝勝会では、作戦の成功を祝って酒の肴と、どこから仕入れたのか酒もあり、皆嬉しそうにあちこちで乾杯していた。


 笑顔の彼らだったが、レイとクリスティーヌとウルスラが顔を見せると一気に盛り上がりを見せた。


「かんぱあああい」

「乾杯!!」

「かんぱーーい!!」


 彼らの長年の鬱憤は溜まりに溜まっていたらしい。もはやレイの想像する範疇を超えていたかもしれない。

「ああ、うまいなあ、この酒」

「そんな安酒がか?」

「いいんだよ。勝利の美酒ってもんに値段なんか関係あるか」



 特に彼らはレイには拝まんばかりの喜びようだった。

「レイさん、あなたは英雄だ」

「それを言うなら救世主じゃないか?」

「いやいや、私たちの希望だ」


 やっとの思いでレイはその話題の輪から抜け出した。そしてまた別の魔導士たちに捕まって会話をする。


「足音を立てないように魔力集積所マナ・サイロの周りを囲んでな。」

「ああ」

 その日の武勇伝を語るものもいる。


「一気に魔力集積所マナ・サイロに忍びこもうとしたわけよ」

「ところがさ。こっちを見てるのに、奴ら動かないんだよ。絶対わかってるのに見てない振りするんだ」


 魔導士たちが言うには、警備兵たちは見て見ぬふりをしたという。兵士の中にも相当不満が広がっていたらしい。




 魔導士たちの喜びようをしばらく見ていたレイは、感慨深げに言った。

「みんなほんとに苦しかったんですね」

「念願だったのよ。うまくいくかわからない状態でみんなよく耐えたわ。本当にありがとう、レイ」


 皆の歓迎が一段落したので、レイとクリスティーヌも部屋の端っこで酒と肴を味わっていた。急に集めたにしては酒の肴も充実していた。


「みんなに村の野菜を食べさせたいなあ」

「落ち着いてくれば村にも来てもらえるようになるわよ」

「そうですね。その時は自分たちで作った野菜でもてなしましょう」




クリスティーヌが追加の酒と肴を選んでいたら、若い魔導士に呼び止められた。

「クリスティーヌ様。カーティス殿の母上が」

 そこには、カーティスの母親が、お祝いのお酒を抱えて立っていた。若い魔導士に持ってきたお酒を渡すとカーティスの母はクリスティーヌに向き直った。


「あの子の仇を取ってくれてありがとうございます」

「あの時のことは申し訳なく思っています。許されるとは思っていませんが、カーティスの風魔法も取り戻しました」

 カーティスの母親は泣いていた。


「ありがとうございます。あなたが取り戻してくれてあの子も喜んでいると思いますよ。彼らが権力を振るっていることを本当に悔しがっていたので」


 仕方がなかったとはいえ、結果的に見捨てたようなことになってしまったカーティスのことはずっとクリスティーヌの中にくすぶっていた。


「このあとは遠くに行って農業をすると聞きました」

「はい、カーティスの教えてくれたこの魔法を新しい命を育てるために使いたいと思います」


「どうかお元気でお過ごしくださいね。本当はいつの日かあの子とあなたが並んでいる姿を見たかったですけど、......仕方ないですね」


カーティスの母は涙を拭くと力強く言った。


「誰よりも幸せに。あの子もきっとそれを望んでいます」

「お母様......」


 二人は、泣きながら笑い合った。これ以上の言葉は要らなかった。


 


 その頃ウルスラは、真剣勝負の最中だった。酒自慢のごつい魔導士たちを捕まえ、飲み比べを挑んでいたのだ。若い魔導士にしてみればウルスラのような伝説的な魔導士の誘いを断るわけには行かない。なるべく酒自慢の魔導士を5人ほど連れてきて、ウルスラと勝負していた。


 ウルスラは全然酔った様子もなく平然とぐいぐい飲んでいる。


「お前たち、まだまだ酔っぱらってる場合じゃないよ」

「勘弁してくださいよ、もう」

「まだまだだよ、次はどいつだい?」

「頑張りますから魔法教えてくださいよ」


 若い魔導士たちには下心があるようだった。

 ここにも若い息吹があった。



「寝たきゃ寝たっていいよ。私は勝手に飲むよ」

「......魔法を何とか......」

「そんなに頼まなくたって教えてやるよ。目が覚めたら覚悟するんだね」

「ひー、師匠お願いしますよ~」


 というと、昨日の夜からの激闘をくぐってきた魔導士たちは倒れるように寝てしまった。



 ウルスラの目の前にダウンしている魔導士は彼で3人目だった。


お酒はいろいろな人が差し入れてくれました。

ウルスラはお酒に強く、ほとんど酔いません。結局5人でかかってもウルスラには勝てませんでした。

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