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風が吹けば聖女が堕ちる  作者: 佐々垣
第二幕:内に省みて疚しからず
18/46

18:火に油を注ぐ


 ゴーレム騒ぎの後、シェパード領には近衛騎士団による強制討伐が行われたそうだ。討伐対象は、今後天然ゴーレムとなり得る可能性のある土の精霊。土の精霊は風の魔法でのみ殺すことが出来るため、赴いた近衛騎士団はシェパード領一帯の農地の土を風魔法で引っ掻き回し、その土地に宿っていた土の精霊をことごとく殺してしまったらしい。そのせいで、シェパード領は作物の育たない不毛の土地になってしまったのである。


『この前の北方遠征も、それが原因だったんだ。最近シェパード領の精霊たちが復活し始めたからって、大精霊が引っ越ししようと動いてた』


 というのは、実際に北方遠征とやらで雪の大精霊を鎮めたフロリアンの言葉である。

 土に限らず、特定の魔力を持った物質に精霊が宿るには、最低でも十年かかる。シェパード領での騒動からはおおよそ二十年経っていると聞いたし、そのくらいの年月が経てば、精霊が死滅した土地に再び芽生え意思疎通が出来るほどに成長していてもおかしくはなかった。

 恐らく今のシェパード領には、過去の恨みを宿したほやほやの精霊たちがいるはず。オルガはそう踏んで、カラスの姿でシェパード領まで向かった。広大で肥沃な土地に反して人っこ一人いない素っ裸の土地、その柔らかな土が生き物のように蠢いているのをオルガは認めた。

 翼をゆったりと閉じ、その膨らみの近くへと着地する。予想が的中したようで、その土の塊には土の精霊がいくつか宿っていた。オルガはぴょこぴょこと側に寄り、もうすぐモグラの形を成そうかと言ったところの精霊に話しかける。


「よう、オマエがここの精霊か。随分と貧相な体だな?」


『ぬ……カラスさんですか? ここは精霊が少ない土地なのです。ようやくみんなが戻ってきたですよ!』


「へえ。その様子じゃ、同胞が誰かに殺されたか? そうじゃなきゃ、こんなに少ないはずがない」


『分かりますですか。少し前に憎き人間に殺されたですよ。主人も、一緒に死んでしまったです……許せないです!』


 ぽこ、ぽこっと土塊が踊る。オルガは土埃を払いつつ数歩下がり、土の精霊の怒る様を眺めていた。やはり、これは使える。以前のウンディーネのように唆せば、一大事を引き起こせるかもしれない。

 アマデウスに恨みはないが、ご飯のためだ。踏み台にさせてもらう。

 オルガは仰々しくカラスの羽を広げ、まるで悪魔のように笑って告げた。


「そうかそうか。そんなに恨んでるなら、アタシに良い案がある」


『良い案、ですか?』


「そうだ。アタシの言う通りにすりゃあ、憎き主人の仇討ちが出来るぜ。教えてやろうか?」


『教えてくださいです!』


 自信満々に告げるオルガへ、小さな土の精霊たちがぽこぽこと駆け寄ってくる。

 上手く行った。オルガは勝利を確信してほくそ笑みながら、用意していた道標を指し示した。


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